民泊をやめたい人必見|閉業届・賃貸契約解除・撤退にかかるコストと注意点まとめ

はじめに:民泊を「やめたい」と考えるオーナーが増加中
「もう民泊を続けるのがしんどい」「撤退を検討している」
そんな声が、2025年半ばから急激に増えている。
背景には、特区民泊の新規受付停止、住宅宿泊事業法(民泊新法)への上乗せ条例、
そして罰則・夜間対応・苦情窓口の強化など、制度面の厳格化がある。
加えて、清掃費・光熱費・代行費などの運営コスト上昇、外国人ゲスト対応の負担、地域からの苦情――
「以前のように簡単には回らなくなった」と感じる個人オーナーも多い。
しかし、民泊は**「始める」より「やめる」方がはるかに大変**。
行政手続き・賃貸契約・撤去・税務処理など、段階的に行う必要がある。
この記事では、これから民泊をやめたいと考えている方に向けて、
閉業の流れ・コスト・注意点を専門的にわかりやすくまとめる。
民泊をやめるときの基本ステップ
まずは、自分がどの制度で運営していたかを確認することが出発点だ。
民泊には大きく分けて以下の3形態がある。
(1)住宅宿泊事業法(民泊新法)の場合
営業をやめる場合は、自治体に**「住宅宿泊事業廃止届出書」**を提出する必要がある。
提出先は、登録を行った自治体の観光課や保健所。
廃止届を出さないまま放置すると、定期報告の未提出扱いになり、行政指導や過料の対象になることもある。
提出書類の例:
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住宅宿泊事業廃止届出書
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登録番号・施設住所・廃止日を記載した書面
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本人確認書類(個人)または登記事項証明書(法人)
(2)特区民泊(国家戦略特区)の場合
特区民泊の場合は、**「特定認定の取消届(廃止届)」**を自治体に提出する。
住宅宿泊事業法とは異なり、定期報告の義務はない。
ただし、**宿泊者名簿や本人確認書類の保存(3年間)**は継続義務として残る。
廃止後も記録を一定期間保管しておくことが望ましい。
また、用途変更届や施設の再利用計画を求める自治体もあるため、事前に担当課へ確認を。
(3)旅館業法(簡易宿所等)の場合
旅館業許可を持っている場合は、**保健所へ「営業廃止届」**を提出し、
許可証の返納を行う。
消防署や建築課への報告を併せて求められる場合もあるため、窓口で確認しておこう。
2. 撤退にかかる主なコスト
民泊をやめるとき、意外に見落とされがちなのが「撤退コスト」だ。
行政手続きだけでなく、設備撤去・原状回復・契約解除費用など、
トータルで数十万円規模になるケースも少なくない。
(1)賃貸借契約の解約費用
賃貸物件で民泊を行っていた場合、
**解約予告期間(通常3〜6か月)**があるため、
撤退を決めてもすぐに家賃負担がなくなるわけではない。
さらに、原状回復工事費用(壁紙、床、照明、家具撤去など)が発生。
1室あたり20万〜50万円程度かかることもある。
トラブル防止のため、退去前に必ず見積もり・立ち会い確認を行おう。
(2)家具・家電・備品の処分費用
家具やリネン類の撤去・廃棄は、一般ゴミでは処理できない場合が多い。
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不用品回収業者:1部屋あたり3〜10万円前後
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買取・リユース利用:実質0〜2万円で済むことも
できるだけ早めに売却や譲渡を検討するのがコスト削減のコツだ。
(3)代行会社・清掃会社との契約解除費
管理代行会社・清掃会社とは、
最低契約期間や解約手数料が設定されていることがある。
一方的なキャンセルはトラブルのもと。
契約書を確認し、既存予約も存在するので3か月以上前に書面で通知するのが基本。
既存予約の宿泊完了を目途に解約になる流れが一般的でしょう。
(4)行政書士・専門家への手続き依頼費
自分で手続きが難しい場合、行政書士に廃止届の提出を依頼できる。
費用は1件あたり 1〜3万円前後 が相場。
誤った届出で再提出になるリスクを防げるため、時間を節約したい人にはおすすめ。
(5)税務・保険関連
民泊事業を個人事業として届け出ていた場合は、
税務署へ「個人事業の廃業届出書」を提出する必要がある。
また、火災保険や民泊保険なども忘れずに解約・変更手続きを行おう。
放置すると翌年度も保険料が自動引き落としされることがある。
3. 民泊を「やめる」ときの注意点
(1)廃止届を出さずに放置しない
営業を停止しても、住宅宿泊事業法では届出が有効なまま残る。
報告義務を果たしていないと行政指導の対象になることもある。
「やめる」と決めたら、まず自治体へ正式に廃止届を提出しよう。
(2)賃貸オーナーとの関係を丁寧に終える
民泊を理由に貸主との関係が悪化している場合、
最後にトラブルになるケースが多い。
修繕・クリーニング費用の分担を明確にし、口頭ではなく書面で交わすことが重要。
(3)宿泊サイト(OTA)の掲載を停止する
AirbnbやBooking.comなどの掲載ページは、閉業前に停止手続きを行う。
ゲストからの新規予約を受け付けたままになっていると、キャンセル対応が必要になり、ペナルティの対象にもなりうる。
OTAに「施設閉業のため掲載停止」と申請すれば、問題ない。運営会社へ委託してるは、運営側で対応してくれるでしょう。
4. 閉業スケジュールの目安(例)
項目 | 推奨タイミング | 内容 |
---|---|---|
廃止・撤退の決定 | 0か月 | 閉業時期・方針を決定 |
賃貸契約の解約通知 | 1〜2か月前 | 貸主・不動産会社へ書面通知 |
清掃・代行会社の解約 | 1か月前 | 契約書の条項に従い書面提出 |
家具・備品処分 | 1〜2週間前 | 売却・リユース・回収手配 |
行政への廃止届提出 | 閉業日当日〜10日以内 | 届出・証明書類提出 |
税務・保険整理 | 閉業後 | 廃業届・保険解約手続き |
5. 撤退も経営判断の一つ
「民泊をやめる」ことは、決して失敗ではない。
むしろ、制度の変化を冷静に見極めてリスクを最小限に抑える経営判断だ。
市場の成熟とともに、個人オーナーが生き残るには
法令遵守・リスク管理・撤退戦略が不可欠になっている。
「やめ方」を正しく知ることは、「次の挑戦」を始めるための第一歩。
閉業の手続きをきちんと終えることで、信用と実績を守ることができる。
💡まとめ
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廃止届の提出を忘れない
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契約解除・撤去費用を事前に見積もる
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書面・記録を残してトラブルを防ぐ
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税務・保険の整理まで含めて完了させる
民泊の終わらせ方を正しく理解すれば、
あなたの次のステージへの移行はきっとスムーズになる。