Columnsコラム

経営管理ビザの厳格化で民泊終了?特区民泊の受付停止で外国人オーナー撤退加速

目次

    経営管理ビザショック、始まる。

    特区民泊の終焉と、外国人オーナーたちの静かな撤退劇。

    2025年秋、日本の民泊業界に激震が走った。

    「経営管理ビザの審査基準が厳格化」――この一文を軽く見る人は多いが、

    現場ではすでに**外国人経営者たちの“撤退ラッシュ”**が始まっている。

    そして同じタイミングで、特区民泊の新規受付が2026年5月で完全停止

    「物件を買って民泊をすれば経営管理ビザが取れる」――

    そんな“甘い神話”は、静かに崩れ落ちようとしている。

    「経営管理ビザ」と民泊の危うい関係

    ここ数年、特に大阪・東京・京都など都市部では、

    中国・台湾・香港・シンガポール系の投資家がこぞって会社を設立し、民泊事業を運営する形でビザを取得していた。

    名目は「宿泊事業の経営」。

    しかし実態はというと――

    ・清掃も受付もすべて代行会社任せ

    ・運営実績はAirbnb上のデータのみ

    ・オフィスはバーチャル、スタッフはゼロ

    つまり、“経営”ではなく“所有”や“投資”に近い形が多かったのだ。

    入管も最初のうちは黙認していた。

    しかし2024年以降、こうした「不動産目的ビザ」「ペーパーカンパニー民泊」が急増し、

    **“管理の名を借りた在留スキーム”**として問題視されるようになった。

    2025年10月、「経営管理ビザ」は投資家には取れなくなる

    2025年10月からの改正は、これまでの“グレーゾーン運営”に完全な終止符を打つものだ。

    主な変更点は次の通り。

    ● 資本金要件が実質3,000万円へ引き上げ

    これまでの基準(500万円以上)では「簡単に設立できる法人」が乱立していた。

    今後は3,000万円以上の実質的な事業投下資金を求められる。

    事務所・人件費・設備投資も「経営実態」として確認され、

    単なる“Airbnb運営会社”では到底通らない。

    ● 「雇用」や「営業活動」の実態確認が義務化

    入管はこれから、

    ・スタッフを雇っているか

    ・営業活動をしているか

    ・日本国内で事業の中心があるか

    を徹底的にチェックする。

    いわば経営していない経営者はビザを失う時代に入るのだ。

    ● 更新審査も“継続経営”が前提に

    これまで更新時は“書類上の存続”で通ることも多かったが、

    2025年以降は、売上・従業員・事務所の現実的稼働がない会社は更新拒否。

    事業が実態を伴わない限り、ビザは延長されない。

    そこに追い打ちをかける「特区民泊」新規受付停止

    そして、もう一つの大波が2026年5月にやってくる。

    大阪市など、限られたエリアで認められていた「特区民泊」が、新規受付停止となる。

    特区民泊とは、国家戦略特区における特別ルールで、

    旅館業法の許可を得ずに180日を超えて運営できる仕組み。

    一般の住宅宿泊事業よりも自由度が高く、外国人オーナーにとってはビザ取得と相性が良かった

    しかし――

    消防設備・構造基準・近隣説明など、法令上の要件を満たすのは容易ではない。

    「今のうちに取っておこう」という駆け込み申請が殺到しているが、

    消防工事や設備設置の遅れから、実際に許可まで辿りつける物件はごく一部に留まるとみられている。

    つまり、「買っても許可が下りない」「そもそも申請が間に合わない」状態だ。

    物件が売れない。買っても運営できない。

    不動産市場では、すでに異変が起きている。

    ・民泊用途で買った物件が売れない

    ・「経営管理ビザ取得可能」として売り出された物件が価値を失う

    ・新規参入者が融資を受けにくくなる

    これまで「民泊運営会社を作れば、投資物件でビザが取れる」として成立していたモデルが、

    制度的に崩壊しているのだ。

    特区民泊の受付停止で出口(運営)が閉ざされ、

    経営管理ビザの厳格化で入口(事業滞在)も閉ざされる。

    このダブルパンチで、

    “民泊スキームで日本に会社を置く”という流れは急速に縮小していく見込みだ。

    今後、残るのは「体制の整った運営会社」と連携する人だけ

    2026年以降、民泊業界は“個人戦”では生き残れないフェーズに入る。

    経営管理ビザの厳格化だけでなく、民泊運営そのものにもさらなる制度上の制限が上乗せされることは、ほぼ確定的だ。

    消防法・旅館業法・特区条例のいずれも改正方向にあり、

    「一人で数件を管理する」ようなスキームは行政リスクが高すぎる時代になる。

    今後、生き残るのは――

    100件以上の運営件数があり、大阪を拠点にスタッフを潤沢に抱えている

    多言語対応や24時間トラブル対応のスタッフ体制が整っており

    消防・保健所・旅館業申請にも精通した法令遵守型の運営会社

    といった「プロの運営会社」と連携しているオーナーだけだ。

    逆に、

    「少人数の代行」「知人に任せる」「名義だけの会社」

    といった緩い運営体制では、今後の法改正を乗り越えるのはほぼ不可能に近い。

    民泊は、もはや“副業”ではなく、法令・体制・現場力の三拍子が揃った経営領域になりつつある。

    もしあなたがオーナーとして残りたいなら、

    「誰に運営を委託するか」が今後の生存を分ける最大のポイントになるだろう。

    まとめ:「民泊=簡単にできる時代」は終わった

    2025年10月の経営管理ビザ厳格化と、2026年5月の特区民泊受付停止。

    この二つの波は、民泊市場を一気に淘汰フェーズへと導く。

    ・“経営しているフリ”では通用しない

    ・“投資目的”では入管が動かない

    ・“駆け込み許可”も消防法で足止めされる

    民泊は今、**「儲かるビジネス」から「続ける覚悟が必要な事業」**に変わろうとしている。

    「経営管理ビザで民泊をやれば大丈夫」――

    その一文に、未来の保証はもうない。

    2025年、日本の民泊は“資格ビジネス”から“本物の経営”へと進化を迫られている