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特区民泊運営実態調査票が届いたら読むべき。抜き打ち検査が強化される理由

目次

    2025年、大阪市からついに 「特区民泊運営実態調査票」 が届いた。

    公式ページにも大きく掲載され、全国ニュースでも取り上げられた今回の全数調査。

    大阪市内の特区民泊 約7,000施設すべて に、一斉に送られたという。

    この調査票、ただのアンケートと思ってはいけない。

    結論から言うと──

    これは“抜き打ち検査強化”のスタートサインである。

    個人オーナー、ワンオペ運営、小規模管理の民泊ほど、

    今後もっと厳しい目を向けられることになる。

    「え…うち大丈夫か?」

    「名簿、ちゃんと保存してないけど…」

    「ゴミ契約なんて出せるの?」

    そう思った人は、その“不安”、正しい。

    今回は なぜ抜き打ち検査が強化されるのか、そして

    調査票が届いた瞬間に何を確認すべきなのか を徹底解説する。

    なぜ大阪市は「全数調査」という前代未聞の動きに出たのか?

    理由はシンプルで深刻だ。

    ✔ 苦情件数が増え続けている

    (騒音・ゴミ・無断使用・住民トラブル)

    ✔ 一部の民泊が“ほぼ放置状態”

    (24時間対応なし、清掃不十分、名簿未取得)

    ✔ トラブルの9割が「小規模・無管理」施設で起きている

    つまり、

    “悪くない民泊”が迷惑民泊に巻き込まれている

    という構造が長年続いていた。

    そこで大阪市は2024年、

    「迷惑民泊対策チーム(専従班)」

    を設置し、違反施設を徹底的に洗い出す方針を公表。

    今回の 運営実態調査票 は、

    その第一段階にすぎない。

    調査票は“抜き打ち検査の前の事前スクリーニング”

    行政は今回こう言っている。

    「回答が不十分な施設は重点監視対象とする」

    これはつまり、

    調査票の回答内容 = 抜き打ち検査の優先順位

    ということだ。

    特に以下に当てはまる施設は、

    非常に危険度が高い。

    ▼ 危険度A

    • 宿泊者名簿の保存なし

    • パスポートが不鮮明(反射・ブレ等)

    • 氏名・住所・職業の未記入

    • ゴミの収集契約が無い

    • 清掃業者の証跡が無い

    • 緊急連絡先が「オーナーの携帯のみ」

    これらは行政が最も疑う運営項目

    調査票の内容と現場の運営に差があれば、

    すぐさま実地での確認が入る。

    抜き打ち検査が強化される理由①:名簿不備が多すぎる

    民泊最大の問題点は 宿泊者名簿の不備

    行政の立場からすれば、名簿が不備なのは

    「誰が泊まったか把握していない=管理できていない」

    という一番危険な状態。

    以下のような状態は全部アウト:

    • パスポートの顔写真が反射で見えない

    • 影で顔が半分隠れている

    • 旅券番号が切れている

    • オンラインフォームが未入力のままチェックイン

    • 氏名欄が漢字で潰れて見えない

    • 印刷が薄く読めない

    • “写メ”が粗すぎて文字が潰れている

    名簿不備=即違反と判断されうるほど重い。

    だから行政は “現場実態を確認しに来る” のだ。

    抜き打ち検査が強化される理由②:ゴミ問題が住民苦情の7割

    大阪市が最も怒っているのが“ゴミ”。

    • 民泊ゴミを一般ゴミに混ぜる

    • ゴミ置き場を勝手に使う

    • 可燃・不燃をゲストが分けずに捨てる

    • 収集契約がない

    • ゴミが袋の外にあふれている

    住民トラブルの大半がこれ。

    検査で最初に確認されるのが

    「ゴミ契約書+保管状況の写真」 である。

    “ゴミ契約が出せない=無管理施設”

    と行政は判断する。

    抜き打ち検査が強化される理由③:虚偽申請・放置運営がバレやすい

    調査票では、届出情報と現況の一致も求められる。

    • 定員を超えるベッド数

    • 無断改装

    • 設備の追加・撤去

    • 写真や間取りが違う

    • 住所・連絡先が現状と異なる

    行政は「届出通りの運営」ができているか、

    ここを最も厳しく見る。

    少しでも違和感があれば、

    抜き打ち検査で“実際の部屋”を確認しに来る。

    調査票を出した後こそ、危険なフェーズに入る

    多くのオーナーが勘違いしているのは

    「調査票を提出したら終わり」

    という点。

    実際は逆だ。

    調査票提出後こそ、

    行政は 回答内容と実際の運営が一致しているか照合するフェーズ に入る。

    つまり、

    • 名簿の質

    • ゴミ管理

    • 清掃品質

    • トラブル対応

    • 深夜の連絡体制

    すべて 現場で直接チェックされる可能性がある

    特に小規模・ワンオペの民泊は、

    “紙面は整っているが実態が伴わない”ケースが多く、

    ここで引っかかりやすい。

    今、小規模民泊がやるべき“最低限の対策”とは?

    行政に突かれやすいポイントは明確だ。

    ✔ 宿泊者名簿

    → 全員分を鮮明に。反射・ブレなし。

    → オンラインチェックインは未入力防止。

    → 全データをフォルダ分けして保存。

    ✔ ゴミ契約

    → 契約書をPDF化。

    → ゴミ置場の写真を撮る。

    → ゲスト用ゴミルールを作り直す。

    ✔ 清掃

    → 清掃完了写真を毎回撮影。

    → チェックリスト導入。

    ✔ 緊急連絡体制

    → 夜間も返答できる仕組みを作る。

    これを今日からやるだけで、

    リスクは“半分以下”になる。

    結論:今回の調査票は「淘汰のプロローグ」

    この調査票が届いたということは、

    大阪市が本気で

    「民泊の質を底上げし、不良施設を排除する」

    という意思を持ち始めた証拠だ。

    これは“終わり”ではなく、

    抜き打ち検査・立入調査が常態化する新時代の始まり

    体制が弱い民泊から順番に淘汰されていく。

    逆に、

    体制を整えた民泊は今後もっと評価され、選ばれる。

    調査票を見て不安になった人は、

    その不安は完全に正しい。

    そしてその不安こそが、

    改善のスタートラインになる。