“脱OTA”の落とし穴――民泊運営における自己集客のリスクとは

「OTAに依存せず、自社サイトで直接集客していく」
民泊業界で近年よく耳にする“脱OTA”というキーワード。中間手数料の削減やブランディング強化を狙って、自社予約サイトやSNSマーケティングに力を入れるオーナーが増えています。
確かに理想的に聞こえる“脱OTA”ですが、現実はそう甘くありません。特に、準備や戦略が不十分なままOTA依存から離脱してしまうと、かえって収益を大きく落としてしまうケースもあるのです。
本コラムでは、民泊運営における脱OTAの主なデメリットを解説します。
集客力の大幅な低下
最大のリスクは「集客力の損失」です。AirbnbやBooking.comといったOTAは、数千万人単位のユーザーを抱える巨大プラットフォームであり、その集客力は圧倒的です。
脱OTA後に独自サイトのみで運営を始めても、検索流入や認知度が極端に低いため、予約数が大きく減少する可能性があります。
特に外国人旅行者は、信頼性や利便性の観点からOTAを好む傾向が強く、独自サイトでは訴求力に限界があります。
信頼性・安心感の低下
OTAを通じた予約では、レビューや評価、保証制度などが整備されており、ゲストにとって安心感があります。独自サイトでは、それらの“信用の仕組み”を一から構築する必要があり、短期的には不安視されがちです。
「レビューが見られない」「決済が不安」「キャンセルポリシーが不透明」など、ユーザーにとってハードルが高くなる点も注意が必要です。
マーケティングと運用コストの増加
脱OTAを実現するには、集客・予約・ゲスト対応・決済・SEO対策など、あらゆる業務を自前で運用する必要があります。これは非常に手間とコストがかかる作業です。
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自社サイト構築・維持の費用
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Google広告やSNS広告などの集客コスト
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チャット対応やCRMの運用体制
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多言語対応や為替対応の整備
これらの体制が整っていないと、「OTAの手数料10〜15%」どころか、それ以上の費用がかかってしまうこともあります。
リピーター戦略が機能するまでに時間がかかる
脱OTAの最大の魅力として「リピーター囲い込み」が挙げられますが、これは短期的にはほとんど機能しません。信頼やブランド力がない状態では、リピーターは生まれづらく、口コミで広がるにも時間がかかります。
OTAでは、ユーザーの「初回利用ハードル」が低いため、最初の接点を作るには有効なチャネルです。それを無くすことで、長期的な顧客基盤の構築にも支障が出る恐れがあります。
価格競争から脱却できないリスク
「OTAを使わなければ価格競争に巻き込まれない」と考える方もいますが、実際には自社予約においても価格の安さは強力な判断基準になります。
ブランド力のない施設にとっては、OTA外でも結局「値段でしか選ばれない」という現実に直面することになります。
まとめ:脱OTAは“目的”ではなく“手段”
脱OTAは決して悪い戦略ではありません。むしろ、適切なタイミングとリソースが揃えば、ブランディングや収益性を高める有効な手段になり得ます。
しかし重要なのは、「OTAを使わない」ことが目的化してしまわないこと。
OTAはあくまで“集客の窓口”であり、脱OTAの前にまずは「OTAを最大限に活用しながら、自社導線を育てる」という段階を踏むことが、長期的には成功への近道です。