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ターゲットを誤るな:方向性の違うインフルエンサーが民泊にもたらす“逆効果”

目次

    民泊のプロモーションにおいて、インフルエンサーの活用は大きな可能性を秘めています。実際にその滞在体験を発信してもらうことで、「リアルな魅力」がSNS上に広がり、予約増や話題性につながることもあります。

    しかし、それはあくまで「適切なインフルエンサーを選んだ場合」の話です。インフルエンサーの世界にも多様なジャンルや発信スタイルが存在し、施設のコンセプトと合わないインフルエンサーを起用した場合、かえって逆効果になってしまうことがあります。

    このコラムでは、その“方向性のミスマッチ”によって起こり得るデメリットに焦点を当てます。

    ターゲット層に届かない“空振り投稿”

    例えば、静かな自然の中でのリトリート滞在を売りにしている民泊に、派手なファッション系インフルエンサーを呼んだ場合、フォロワー層とのミスマッチが発生します。そのインフルエンサーのファンが求めているのは「都会的なトレンド」や「洗練されたライフスタイル」であり、民泊の本来の魅力である“素朴な体験”には関心がない可能性が高いのです。

    結果として、稿のエンゲージメントが低く、PR効果が期待できないまま終わることになります。

    施設のブランドイメージを崩すリスク

    インフルエンサーが投稿する写真や動画、キャプションは、その人の“世界観”が強く反映されます。もしその世界観が民泊のブランドと乖離していれば、「本来の魅力が誤って伝わる」もしくは「まったく違う印象を与えてしまう」といった結果になりかねません。

    例:家族連れ向けの温かみある古民家民泊を、露出度の高いファッションで演出された投稿が拡散された場合、子連れや年配層の利用をためらわせる可能性があります。

    既存の顧客層が離れてしまう恐れ

    インフルエンサーの影響力は、時にポジティブにもネガティブにも働きます。仮に“今までの雰囲気と違う印象”を持たれると、リピーターや施設のファンが離れてしまうことも。これまで「落ち着ける場所」として認知されていた民泊が、突如として「派手なSNS映え狙いの若者向け」と見なされるようになれば、今までの顧客層から違和感を持たれるのは避けられません。

    レビューや口コミに悪影響が出る可能性

    方向性の違うインフルエンサーの投稿を見て宿泊したゲストが、「想像していた雰囲気と違った」「写真映えだけで中身が薄い」と感じてしまうと、不満をレビューに反映する可能性が高まります。

    こうした“ギャップによる不満”は、実際の施設には非がなくても、投稿内容によって期待値がズレてしまった結果です。長期的に見ると、こうしたネガティブなレビューの蓄積は施設全体の評価を下げる要因になります。

    費用対効果の悪化

    方向性が合わないインフルエンサーに支払うプロモーション費用は、単なる“無駄”になるだけでなく、誤ったPRによって施設の価値自体を下げてしまうこともあります。たとえば、1回の投稿に数十万円を投じても、予約が1件も入らなければ完全な赤字。さらに、その投稿が施設に合わないイメージを拡散した場合、損失は金額以上のものになります。

    インフルエンサー選定のカギは「価値観の一致」

    インフルエンサーを民泊のPRに活用する際に最も大切なのは、「フォロワー数」ではなく「相性」です。施設の理念、雰囲気、滞在体験の方向性と、インフルエンサーの発信内容・価値観が一致してこそ、自然な形で魅力が伝わり、効果的な宣伝になります。

    インフルエンサー選びを「広告主の立場」から見直すことで、単なる話題作りではなく、本質的な集客とブランディングにつながるプロモーションが実現できるはずです。

    結論:インフルエンサー活用は“戦略的に”が鉄則

    インフルエンサーは強力な宣伝ツールになり得ますが、正しく選定し、適切な戦略と連携を図らなければ、かえって逆効果になることもあります。民泊の魅力を「誠実に」「継続的に」伝えていくためには、単発のバズよりも、中長期的なブランディング視点が重要です。

    宣伝に迷ったら、まずは自社の価値を正確に把握し、伝えたい相手にしっかり届く方法を検討することが、遠回りのようで最も確実な道かもしれません。