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まだ存在する“違法民泊”──ルール無視が招く信用の崩壊

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    民泊新法(住宅宿泊事業法)が2018年に施行されて以降、日本全国の民泊施設は一定のルールのもとで運営されるようになりました。合法的な営業には、自治体への届出や消防設備の整備、近隣住民への周知など、いくつかの条件が設けられています。

    しかしながら、2025年の今でも、制度を無視した“違法民泊”が水面下で運営されているという事実があります。特に観光需要の高い都市部や、外国人観光客が集中するエリアでは、依然としてグレーな施設や、完全に無許可の民泊が確認されています。

    なぜ今でも違法民泊が存在するのか?

    理由は単純で、「儲かるから」です。

    許可を取らずに、設備投資や運営ルールの遵守を省略することで、短期間で収益を上げようとする業者が一部に存在しています。

    中には、インフルエンサーやSNS広告を使って巧妙に集客し、「おしゃれな宿」として若者や外国人観光客をターゲットにしている例も見られます。

    違法民泊がもたらす深刻な影響

    違法民泊が地域や観光業全体に与える悪影響は計り知れません。

    • 安全面の問題

       消防設備が未整備、避難経路の確保がされていないなど、非常時に対応できない危険性があります。

    • 近隣住民とのトラブル

       ゴミ出しのルール違反、大声での騒音、出入りの多さによる不安感など、地域との軋轢が生まれます。

    • 価格競争の悪化

       合法的に運営している施設は設備投資や法令遵守コストがある分、適正価格での提供を行っています。違法民泊が“安さ”で顧客を奪う構造は、公正な競争を壊してしまいます。

    • 旅行者の信頼失墜

       違法施設でトラブルが発生すれば、「民泊=危険」「日本の宿泊業は信用できない」との印象を海外に広めてしまい、長期的な観光の信頼性を損なう恐れも。

    法律は“形だけ”ではない。摘発と罰則の現実

    2020年代以降、自治体や観光庁の監視も強化されており、違法民泊の摘発例も増えています。無許可営業が発覚した場合、下記のような厳しい処分が科されます。

    • 6か月以下の懲役または100万円以下の罰金(住宅宿泊事業法違反)

    • 違反事業者名の公表(営業停止措置)

    • Airbnbなどプラットフォーム側での強制掲載停止

    特に“組織的な運営会社”が違法営業をしていた場合、その企業の信頼は一気に失われ、業界からの撤退を余儀なくされることもあります。

    利用者にもリスクがあることを知っておくべき

    旅行者自身も、「安くて便利そうだから」と安易に無許可の民泊を選ぶと、以下のようなトラブルに巻き込まれる可能性があります:

    • 宿泊直前の突然のキャンセル

    • 連絡がつかず、チェックインできない

    • トラブル時に補償が一切受けられない

    「泊まる側」も違法民泊に加担してしまう危険があることを、もっと広く認識していくべきです。

    正しい民泊運営こそが、未来の観光を支える

    民泊は、個人や地域の魅力を活かした素晴らしい宿泊スタイルです。しかし、違法な運営がある限り、その信頼性は常に疑われます。

    運営者一人ひとりがルールを守り、地域と共存しながら安全な滞在環境を提供すること。それが、観光立国・日本の価値を守る最大の責任なのです。