パンダがいなくても白浜に来る理由がある。今、注目される「貸別荘」という選択

〜観光の象徴を失っても輝く宿がある〜
和歌山県白浜町の観光の象徴であったパンダたちが、長年過ごしたアドベンチャーワールドを離れ、中国へと帰還しました。この出来事は、観光業界にとって小さくない衝撃でした。長らく「白浜といえばパンダ」と言われるほど、地域の観光資源として親しまれ、国内外からの集客を担っていた存在。それが突然、町から姿を消したのです。
当然ながら、観光客数にも宿泊予約にも一定の影響が出ています。特に子ども連れの家族層や、アジア圏の観光客にとって、パンダのいない白浜は「以前より魅力が薄れた」と感じる人もいるようです。
実際、2024年下半期から2025年にかけて、一部の貸別荘運営者の中には「前年比で予約数が落ち込んだ」と話す声もあります。
しかし、すべての施設が影響を受けているわけではありません。
予約を獲得し続けている貸別荘が白浜にはある
パンダの不在という逆風の中でも、着実に予約を伸ばしている貸別荘があります。それらの施設には、いくつかの共通点があります。
1. 「泊まること」自体が旅の目的になっている
これまで「観光地に行くついでに泊まる場所」として選ばれていた宿泊施設は、観光資源の減少と共に選ばれにくくなっています。一方で、今注目されているのは、宿に滞在することそのものが“旅の目的”になるような貸別荘です。
たとえば、海の見えるプール付きの一棟貸し、サウナのある温泉付きのヴィラ、北欧スタイルの家具に囲まれたハイセンスな内装など。そうした宿では、「ここに泊まりたいから白浜に行く」という動機が生まれ、パンダの有無とは関係なく集客ができているのです。
2. プライベート重視の旅行スタイルとマッチしている
コロナ以降の新しい旅行スタイルとして、「プライベートな空間でゆっくりと過ごす」ことに価値を見出す人が増えました。その流れに合致するのが、貸別荘という選択肢です。家族や友人とだけで過ごす時間、誰にも邪魔されない空間が、今の時代に求められているのです。
こうしたニーズに応える貸別荘は、パンダを目的としない観光客——たとえばカップル、ワーケーション利用者、小規模グループなどから支持されており、安定した予約を獲得しています。
3. 「体験価値」を提供している施設は強い
予約が安定している施設の多くは、宿泊に「+αの体験」を加えています。
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夕日が見える絶好のロケーション
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海まで徒歩数分のロケーション
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室内にプロジェクターや大画面テレビ完備
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露天風呂や天然温泉が貸し切りで入れる
ただ寝るだけの空間ではなく、「泊まって何かを楽しめる」貸別荘は、宿泊単価がやや高くても選ばれています。
立地ミスをカバーする「体験型宿泊」の力
白浜の貸別荘は多くが郊外や山側にも点在しており、立地だけで比較されるとアドベンチャーワールドからの距離がネックになることもあります。特にパンダ目的の観光客が減った今、立地的に不利な物件ほど打撃を受けやすい傾向にあります。
しかし、そのマイナスを逆手に取り、「静かな環境」「自然に囲まれた隠れ家」「騒音ゼロで過ごせる空間」など、都市では得られない体験を前面に打ち出すことで、逆に魅力とする施設も増えています。
白浜の観光の未来は「宿の力」にかかっている
観光の“顔”としてのパンダがいなくなった今、白浜観光の中心は「施設の魅力」「体験の価値」「滞在の質」へと移行しています。
貸別荘という宿泊スタイルは、その変化に最も柔軟に対応できる形態です。一棟ごとにコンセプトを変え、顧客層を明確にし、PRも自ら行える自由度の高さが、今の白浜に合っているのです。
まとめ:パンダがいなくても、“また泊まりたい宿”は作れる
白浜=パンダというイメージは長年のものでした。しかし、時代が変わる中で、観光の在り方も変わっています。白浜には、まだまだ知られていない魅力がたくさんあります。そしてそれを最も活かせるのが、貸別荘という自由な宿泊スタイルです。
予約が減ったと嘆く前に、今の旅行者が本当に求めているものに目を向け、宿の魅力を再定義すること。パンダがいなくなった今こそ、宿そのものが観光の主役になるチャンスです。
白浜の観光が次に進むべき道は、貸別荘のような“人の記憶に残る滞在”の提案にあるのではないでしょうか。