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「宿泊業は給料が安い」は本当か?——フロント止まりで終わるか、レベマ・OTAで高給を掴むか

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    「ホテルや旅館で働いてみたいけど、給料が低いから続けられない」
    「宿泊業ってハードな割に報われないイメージがある」

    そんな声をよく耳にする。たしかに、宿泊業界は全体的に給与水準が高いとは言えない。求人サイトを見れば、月給20万円前後、年収300万円未満の正社員募集も珍しくない。業務内容を見ると、シフト制・深夜勤務あり・接客業務中心と、肉体的にも精神的にも負担が大きい。

    だが、私自身がこの業界に10年以上携わってきた経験からはっきり言えることがある。

    「宿泊業界=給料が安い」というのは、“キャリアが止まった人”にだけ当てはまる話だ

    逆に、ある段階を越えた人たちは、一般的な業種よりはるかに高い年収を得ているのも事実なのだ。

    低賃金イメージの背景──経験が浅い人が多いから

    宿泊業界は、フロントや清掃、客室管理などが中心業務。これらの業務は、「すぐにできそう」「誰でもできそう」というイメージが強く、実際に早期退職や同業種内での転職を繰り返す人が多いのが現状です。

    そうなると、転職を繰り返しているうちに年齢に伴った経験者としてのスキルがつかず、業界全体の「給与水準が低い」というイメージに拍車がかかります。

    他のホテルに転職しても、「フロントしかできないなら新人と同じ」とみなされるケースが多い。

    また、フロント業務を「これで十分」と満足してしまう人も多く、スキルアップやマルチタスク化に積極的でない場合も少なくありません。

    「満足してしまう」人の多さがキャリア停滞を招く

    フロント業務は接客の最前線であり、お客様からの「ありがとう」が直接もらえるやりがいのある仕事だ。これがある意味で“落とし穴”になることがある。

    • 接客が楽しいから深く考えずに毎日をこなしてしまう

    • 経営数値や業務改善への興味が湧かない

    • 「現場主義」を理由に、管理業務を避けてしまう

    結果として、「フロントの経験はあるけど、それ以上はわからない人材」になってしまい、給料も役職もほとんど上がらない。数年後、業界に幻滅して辞めてしまうケースも少なくない。

    高給取りのスタッフは「下積み期間」を経て多機能化している

    一方で、長年同じ職場や民泊運営代行会社などで経験を積み重ねたスタッフは、

    • 予約管理やOTAチャネルの最適化

    • 価格調整や売上予測を行うレベニューマネジメント

    • ゲスト対応からトラブル対応、清掃や点検の指示まで幅広い業務

    といった「マルチな業務をこなすプロ」へと成長しています。

    私自身の経験でも、最初はフロントや清掃対応の単純作業が中心でも、3年ほど現場に根を張り続けるうちに、業務の幅が大きく広がりました。結果として給与も上がり、他社の未経験者と比べて格段に価値の高い人材になれた実感があります。

    このレイヤーに到達した人たちは、一気に年収レンジが上がる。都心の中規模ホテルや、複数施設を運営するチェーンで、年収600万〜1000万円以上で転職していくケースも珍しくない。

    民泊運営代行は「下積み期間」が必要だが「多彩なキャリア」も拓ける職場

    特に民泊運営代行では、最初の1〜2年はルーティン業務や単純なゲスト対応、清掃管理が中心です。いわゆる「下積み期間」と呼べる期間があります。

    しかし、長く在籍すればするほど、ひとつの施設の枠を超えて複数施設の運営管理、売上分析、マーケティング企画、ITツール導入の推進など、多様な業務を任されるようになります

    この多機能化は、民泊特有の「小回りが利く運営体制」があるからこそ。ホテルなど大規模施設ではなかなかできない、個人の裁量と成長機会が豊富にあるのです。

    転職を考えるなら「長く続けることでキャリアアップできる職場」を選ぼう

    「すぐに辞めてしまうスタッフが多いから給与が低い」と感じているなら、ぜひこの点を見直してほしい。

    • 自分が成長できる環境か?

    • 複数業務を経験しスキルを広げられるか?

    • 数年後にどんなポジションに就けるか?

    こうした視点で職場を選べば、民泊運営代行は決して“ただの下積み”ではなく、「転職したい」と思えるほど魅力的なキャリアの土台になることがわかるはずです。

    結論:「宿泊業=給料が安い」は“進まなかった人”の視点にすぎない

    業界として「給与が低い」と言われるのは、それだけ現場で止まってしまう人が多いことの裏返しだ。だが、本当に業界の中核を支えるレベルまで進んでいる人材は、専門職として高く評価され、待遇も全く異なる

    今後は、現場経験を足がかりにして、数値管理・マーケティング・テクノロジーの活用へと進んでいける人材が、もっとも価値を持つようになる。

    “接客のプロ”で終わるか、“経営を動かす側”に進むかで、年収は2倍以上違ってくる。

    宿泊業界で働き続けるなら、ぜひそのことを早めに知っておいてほしい。

    まとめ

    • 宿泊業界の給与が低い背景には、浅い経験で転職を繰り返す人が多いことがある。

    • フロントだけで満足するのではなく、OTA運用やレベニューマネジメントなどスキルを積み上げる人は高給取りが増えている。

    • 民泊運営代行は最初の下積み期間があるが、長く続ければマルチタスクがこなせる運営のプロに成長できる。

    • これから転職を考えるなら、長期的にキャリアアップできる職場選びが重要。