民泊清掃の最前線が崩れ始めている:清掃会社を疲弊させる“姑オーナー”と撤退の現実

かつては民泊運営の「裏方」として静かに支えられてきた清掃会社。しかし今、民泊清掃業界にはかつてないほどの疲弊と撤退の波が押し寄せている。
その背景には、過剰な要求・値下げ交渉・非協力的な態度を繰り返す“困ったオーナー”の存在がある。そしてそれが、結果的に民泊全体のクオリティ低下を引き起こすという、見逃せない悪循環に繋がりつつある。
清掃会社の「見えない最前線」
民泊において、ゲストが最も敏感に反応するのが「清潔さ」だ。レビューやクレームの多くも、清掃不備に関するものであり、清掃は宿泊体験の根幹を支えている。
しかしこの「清掃」という仕事は、次のような特徴がある:
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ゲストのチェックアウトとチェックインの間に限られた時間で完了させる必要がある
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ゴミ処理・ベッドメイキング・消耗品補充・設備チェックなど、多岐にわたる作業
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夏場や繁忙期には1日4〜5件を巡回清掃する過酷な現場も少なくない
そんな現場を支えているのが、少数精鋭の清掃スタッフたちである。
ところが、彼らを支えるべきオーナー側の一部に、現場の実情を理解しない“問題オーナー”が増加している。
清掃会社が頭を抱える「困ったオーナー」ランキング
以下は、清掃会社の声を元にした“嫌われるオーナー行動”ランキングの一例だ:
第1位:文句しか言わない、姑タイプのオーナー
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少しのホコリや配置の違いを指摘
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クレームは即LINE、しかし感謝や労いの言葉は一切なし
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定期的に現場に現れては写真を撮ってダメ出し
「まるで清掃スタッフ全員が粗探しの対象になっているような雰囲気で、士気が下がります」
第2位:一方的な値下げ交渉を繰り返すオーナー
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人件費高騰の中でも「他社はもっと安い」とプレッシャーをかける
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契約後も「あと300円下げて」と何度も言ってくる
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時間指定・遠方物件でも料金据え置き要求
「1回の清掃に2時間かけて、交通費込みで3,000円以下。もうビジネスとして成り立ちません」
第3位:無理難題を丸投げするオーナー
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深夜の駆け込みチェックイン対応を清掃会社に求める
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備品の買い出しや郵送トラブルの対応まで要求
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トイレットペーパー1ロールの補充忘れを“重大な瑕疵”としてクレーム
清掃会社の現実:人手不足と撤退ラッシュ
清掃会社にとって最大の課題は人材の確保と定着である。清掃という仕事は体力的に過酷で、かつ報酬水準も決して高くはない。
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人手不足で断らざるを得ない案件が増加
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事業者の中には赤字覚悟で“義務感”だけで続けているケースも
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特に2024年以降、小規模清掃業者の撤退が相次いでいる
これはつまり、「よい清掃会社に頼める物件」と「誰にも相手にされない物件」が二極化していることを意味している。
清掃は“外注”ではなく“パートナーシップ”
ここで改めて認識したいのは、清掃業務は「下請け」ではなく、宿泊業の成功を共に支えるパートナーであるということだ。
質の高い清掃スタッフは、次のような役割を担っている:
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ゲストの忘れ物や破損の初期発見者
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不審者・不審物の察知によるセキュリティ維持
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清掃記録と写真で、万が一のトラブル時の証拠保全
つまり、彼らは単なる清掃員ではなく、運営リスクを減らす“目と耳”でもある。
オーナー側に求められる意識改革
清掃会社との良好な関係構築は、長期的に見てオーナーにも多くのメリットをもたらす。以下のような意識改革が必要だ。
■ 清掃スタッフへの“敬意”を持つ
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不満だけでなく、良かった点にも触れる
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適切な報酬と感謝の言葉は、品質向上の投資と考える
■ 要望は具体的かつ建設的に
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「ちゃんとして」は通じない。写真付きで共有し、改善策を一緒に考える姿勢が重要
■ 支払いは適正に
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価格交渉は一度まで。以降は信頼関係の維持を優先
結語:民泊の未来を守るために、清掃現場への敬意を
民泊運営はチームワークだ。その中で、清掃スタッフは“最前線のプロフェッショナル”として、日々目に見えない努力を続けている。
その労力を過小評価し、不当な扱いを続ければ、いずれ**「清掃会社に断られる物件」**となり、運営そのものが成り立たなくなる。
今こそ、オーナーが変わるときだ。清掃を「外注作業」と見るのではなく、「パートナー」として信頼し、支え合う意識が、民泊の品質と持続性を高める第一歩となる。