民泊は副業でできるのか?──理想と現実のギャップに向き合う

近年、副業や投資の一環として「民泊」を始める人が増えています。
「空き部屋や空き家を有効活用して収入を得たい」
「ホテルより安く、ユニークな宿泊体験を求める旅行者のニーズに応えたい」
そんな前向きな動機からスタートする人が多い一方で、副業のイメージだけで民泊を始めてしまうと、想像以上にしんどく、心が折れてしまうという声も少なくありません。
今回は、民泊を副業にすることの現実と、後から「辞めたい」と思っても簡単に委託・撤退できない落とし穴について、深く掘り下げていきます。
副業感覚で始めやすいけれど、実態は“接客業 × 不動産管理 × クレーム処理”
「民泊は初期費用も少なく始められる」と言われがちですが、実際には 運営に手間がかかり、時間的にも精神的にも“片手間”では済まされない業務が多く存在します。
たとえば:
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清掃・補充・ゴミ出し
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ゲストとのメッセージ対応(しかも24時間体制で)
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予約管理・料金設定
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トラブル(鍵の紛失、騒音、無断宿泊など)への対応
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レビューへの返信
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行政への届け出や報告義務
これらは、会社勤めの副業としては非常に重たい業務負荷です。さらに、トラブルが夜中に発生したり、海外ゲストとのやり取りで言語や文化の違いによる誤解が生じたりと、想像以上のストレス要因があります。
辞めたくなった時、もっと困る──運営代行が受けてくれない現実
疲れ切って「もう無理。代行に任せたい」と思ったときに、意外な落とし穴があります。
運営代行会社が、素人が準備・運営していた民泊施設の引き受けを嫌がるという現実です。
理由は以下のようなものです:
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内装・設備・動線が「宿泊施設基準」になっていない
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近隣とのトラブル履歴がある(苦情や通報歴)
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レビューが荒れており、ブランドリスクが高い
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清掃オペレーションが非効率な物件設計
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消耗品のストックや管理システムが未整備
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法規制や保健所・消防の指摘対応が不十分
つまり、“素人設計の民泊”は、運営代行にとってリスク物件になりやすいのです。
結果として、「引き継げません」「初期整備に数十万円かかります」などと断られたり、高額な改修費や月額費用を求められることになります。
安易な参入は、結局コストと時間の浪費に
副業としての「気軽さ」だけで民泊を始めてしまうと、
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利益は出ない(むしろ赤字)
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本業に支障が出る
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精神的にも疲弊する
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辞めるにもお金がかかる
という“負のループ”に陥る可能性があります。
特に地方エリアや競争の激しい都市部では、価格競争や稼働率の維持も厳しく、運営スキルと時間を継続的に投下しない限り、収益化は難しいと感じるオーナーが多くいます。
では、どうすればよかったのか?
これから民泊を始めようと考えている人に対して、あえて伝えたいのは次の3点です:
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最初から「副業ではなく事業」として設計すること
(最低限、3年後まで運営する前提で準備) -
プロによる設計・初期導入を検討すること
(清掃動線、設備導入、オペレーションまで含めて) -
「辞めたくなったとき」の出口戦略も想定しておくこと
(転用・売却・長期賃貸化など)
結論:民泊は副業には向かない。やるなら“本気”で
民泊は、確かにやり方次第では利益が出るビジネスです。しかし、副業感覚で「空いた時間に」運営することは極めて難しいのが現実です。
「時間も、心も、お金も想像以上に使う副業だった」
と後悔する前に、本気で向き合えるか、出口戦略はあるかを今一度見直すことをおすすめします。