Googleフォームで宿泊者名簿?──それ、旅館業法違反だけでなく「中国人には届かない」重大リスクです

■ はじめに:名簿管理を「Googleフォーム」で済ませていませんか?
民泊・簡易宿所・特区民泊の運営者の中には、
「宿泊者名簿?Googleフォームでいいよね、無料だし」
という認識で運用しているケースが少なくありません。
確かに、Googleフォームは便利で手軽なツールです。しかし、これはあくまで**「個人向けのアンケート収集ツール」**であって、
宿泊業における公的帳簿の要件や、法的・国際的な信頼性を担保する設計にはなっていません。
今回はその中でも特に深刻な問題――
「中国からアクセスできない」ことを知っていますか?
について詳しく解説します。
■ 中国人ゲストには「Googleフォームは届かない」
中国では、国家のインターネット規制「グレートファイアウォール」によって、多くの海外サービスへのアクセスが制限されています。Google関連サービス(Gmail、YouTube、Google Drive、Googleフォームなど)も一切アクセス不可です。
つまり:
-
中国本土から旅行してくるゲストは、Googleフォームのリンクを開けません
-
入力画面までたどり着かず、名簿記入が不可能になります
-
情報収集が滞り、法的な宿泊者名簿が不備のままとなる可能性が高まります
これは単なる「不便」ではありません。
外国人のパスポート確認・国籍記録は旅館業法上の義務です。
それが中国人旅行者(インバウンドの大きな市場)のみ正しく取得できていない状況は、明確なリスク管理の欠陥と判断される恐れがあります。
■ Googleフォーム利用に潜む法的・運営上のリスク(再掲+補強)
① セキュリティが不十分で、個人情報保護法・旅館業法に抵触
スプレッドシートの改ざん、第三者アクセス、記録の欠落などが想定されます。
② 旅館業法の「帳簿としての要件」を満たさない
ログの保存性・真正性・日付署名などが不十分。紙の帳簿または認証されたシステムが必要。
③ 外国人対応の面で完全に破綻する可能性がある(中国人を中心に)
-
Googleへのアクセスブロック
-
パスポートアップロード不可
-
管理者が「未記入のまま宿泊させる」リスクを抱える
■ 実際に起きている問題と指導事例(例)
-
中国人ゲストが宿泊前にGoogleフォームに記入できず、現地で紙対応→不備が残る
-
立ち入り調査で「外国人名簿の記録が一部欠けている」として是正勧告
-
Googleフォームで収集した名簿のセキュリティが甘く、外部に情報漏洩
これらは「知らなかった」「便利だから」で済まされない問題です。
■ 正しい対応とは?国際対応も含めた名簿収集の最適解
以下のいずれかの手段で対応すれば、法的・運用的にも信頼性が高くなります:
◎ 民泊PMS(予約管理・宿泊者情報収集機能付き)
AirHost, Beds24など:
-
マルチ言語対応(英語・中国語可)
-
政府提出用の名簿PDF出力機能あり
-
パスポートアップロード、入退室時間記録など一元管理
◎ 自社システムの開発
-
セキュリティの整ったサーバーに名簿を保管
-
中国内からもアクセス可能なドメイン・インフラに対応
■ 結論:「便利だから」では済まされない時代に
Googleフォームは日常的な情報収集には便利なツールです。
しかし、宿泊者名簿のような「法的義務」と「インバウンド対応」が求められる場面では、決してふさわしい手段ではありません。
特に中国人旅行者を迎える予定のある施設では、
「最初からGoogleフォームでは届かない」という現実を理解することが重要です。
✅ 最後に:あなたの施設、宿泊者名簿は本当に大丈夫ですか?
こんな兆候があるなら、見直しを検討しましょう:
-
Googleフォームを使って宿泊者情報を集めている
-
外国人ゲストに記入を求めても返信率が悪い
-
パスポートの確認記録が手元にない
-
入退室の時間記録をしていない
-
データ保存方法が不明確
名簿管理の不備=営業停止のリスクです。
「楽をしていたつもりが、営業できなくなった」なんて本末転倒を避けるためにも、
今こそ、正しい運用体制を見直しましょう。