Columnsコラム

「モームリ、民泊やめたい」──それでも“やめられない”民泊運営の重さと覚悟

目次

    ■ 「空室活用で副収入」──甘いイメージの裏にある現実

    最近ではSNSやYouTubeで「空き部屋で副収入!」「月10万円の不労所得!」といった、民泊ビジネスの“キラキラ系成功ストーリー”が数多く発信されています。

    確かに、うまく回せばそれなりの収益も出る。

    しかし、現実の民泊運営は想像以上にハードで、気軽な副業などでは到底ないというのが、多くの運営者が口をそろえて言う真実です。

    そして多くのホストが一定期間運営したのちに、こうつぶやきます。

    「モームリ。やめたい…」

    でも、そのときになってようやく気づくのです。

    民泊って、やめるのもめちゃくちゃ大変だということに」


    ■ 民泊が“やめられない”3つの理由

    ① 【未来の予約】が数ヶ月先まで入っている

    民泊は基本的にOTA(AirbnbやBooking.comなど)を通じて中長期的に予約が入り続けます

    「もう限界だから明日からやめよう」と思っても、既に半年後、1年後の予約が確定している場合もあるのです。

    キャンセルするには、

    • ゲストに謝罪連絡

    • キャンセル料の負担

    • OTAからのペナルティ(評価低下・掲載停止)

    が発生します。悪質なキャンセルと判断されれば、ホストアカウントが強制停止されるリスクもあります。

    ② 登録・許認可の関係で「一時停止」すら難しい

    民泊を始めるには、以下のいずれかの許可・届け出が必要です:

    • 旅館業(簡易宿所)許可

    • 住宅宿泊事業(いわゆる民泊新法)

    • 特区民泊

    これらはいずれも、定期的な営業報告・宿泊者名簿の保管・緊急時の対応義務を伴います。

    「やっぱやめます」と届け出を出すだけでは済まず、

    • 自治体との手続き

    • 現在の予約終了の確認

    • 法人登記や管理委託契約の精算

    • ホストアカウントの停止処理

    など、意外と“やめるための事務処理”に膨大な手間と時間がかかるのです。

    ③ 周辺住民や管理会社への説明責任

    集合住宅の場合、「管理組合との取り決め」「近隣トラブル対応」が絡みます。

    「やめたいから放置」は、ご近所トラブル→苦情→行政指導に発展しかねません。

    また、運営代行会社と契約している場合は、最低契約期間・解約金の発生もあり得ます。

    「収益が落ちたから、解約」は通用しない場合が多く、精神的にも金銭的にも引き止め要素になります。

    ■ 「民泊やめたい」と思う主な原因

    以下のような理由で疲弊していくホストは非常に多いです:

    • 清掃や備品補充の手間に疲れた

    • トラブル(騒音・ゴミ出し・鍵紛失)対応に追われる

    • ゲストからの理不尽なクレーム

    • 近隣住民や管理組合からの圧力

    • 利益が出ない(赤字続き)

    • AirbnbやBooking.comの仕様変更に振り回される

    • 稼働が下がっても、家賃やローンの支払いが固定費として残る

    こうした消耗とストレスの積み重ねが、やめたい気持ちにつながっていきます。

    ■ 始める前に知っておくべき「覚悟のリスト」

    民泊を始める前に、本当に理解しておくべき現実があります。

    最低でも半年先までの運営責任を背負うことになる

    やめるにも手続きと調整が必要で、簡単には逃げられない

    副業ではなく、“宿泊業”としての義務と覚悟が求められる

    収益が出るようになるまで半年~1年かかることもある

    トラブル対応はほぼ24時間体制(鍵、騒音、電気、Wi-Fi…)

    悪質ゲストに泣き寝入りするケースも少なくない

    これらを**「自分の責任として受け止める覚悟」がなければ、民泊運営は非常にしんどい選択肢**です。

    ■ 「気軽に始められるけど、気軽にはやめられない」のが民泊

    民泊というビジネスモデルは、たしかに低資本で始めやすく、魅力的に見えるかもしれません。

    でもその分、“出口”が非常に狭く、逃げ場がないのです。

    副業のつもりが、本業以上に疲弊してしまったホストは決して少なくありません。

    ■ 終わりに:それでも始めるなら、覚悟を持って「準備と設計」を

    民泊をやめるのが難しい最大の理由は、最初から“やめるとき”のことを想定していないからです。

    だからこそ、これから民泊を始めようと思っている人には強く伝えたい:

    ● いつでも撤退できるよう、契約・運営・資金を設計しておくこと

    ● 未来の予約が命綱にも首輪にもなりうること

    ● 「もう無理」と思った時に備えて、代行や引継ぎの選択肢を持つこと

    民泊は「空き部屋活用」ではなく、立派な宿泊事業です。

    始めるときにこそ、“やめる時のリスク”を理解し、覚悟を持つ必要があります。