Columnsコラム

日本人ゲストはなぜ「歓迎されない」と言われるのか?

目次

    ──レビュー文化に潜む“松竹梅”の落とし穴

    ■ 「日本人は星4をつける=褒めている」

    でも、それは世界では“失礼”だった?

    日本人ゲストのレビューを見て、こう思ったことはありませんか?

    「とても快適でした!また泊まりたいです」→ 星4

    「特に不満はありませんでした」→ 星3

    「少し寒かったけど、それ以外は完璧」→ 星4

    多くの日本人はこのようなレビューを残します。

    彼ら自身に悪気はなく、むしろ「高評価」のつもりで星4や星3をつけている。

    でも、民泊やホテルの現場で、ホスト側が感じるのは**「あれ?なんで星5じゃないの?」という疑問と困惑です

    特に海外のホストからは、“日本人は評価が厳しい”**という声が出始めています。

    ■ 「松竹梅」の文化がレビューにも影響している

    日本には古くから“松竹梅”の文化があります。

    • 梅(最低限)

    • 竹(標準)

    • 松(最高)

    この3段階評価は、学校の成績、飲食店のメニュー、企業の評価制度など、私たちの生活に深く根づいています。

    そのため、日本人は無意識に「最高評価は簡単には出さない」傾向があります。

    「全部完璧だったわけじゃないから、星4」

    「また来たいけど、ちょっとだけ惜しかったから星3」

    という判断が、ごく自然に下されます。

    しかし、この“日本的な評価基準”は、世界のレビュー文化とは大きく異なるのです

    ■ 海外のレビュー文化:「星5=普通に満足、星4以下=問題あり」

    AirbnbやBooking.com、Googleレビューなど、世界のOTAでは基本的にこう解釈されます:

    • ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ →「とても良かった・特に問題なし」= 合格ライン

    • ⭐️⭐️⭐️⭐️ →「何かしら不満があった」= 要改善

    • ⭐️⭐️⭐️以下 →「問題があった・不満足」= 不合格

    つまり、“星5が満点で当然”という前提で運用されているレビュー文化なのです。

    これに対し、日本人の感覚は真逆。

    「星5は特別なときしか出さない」

    「普通に良かったから星3〜4」

    「完璧なものなんてない」

    この文化ギャップこそが、ホスト側が“日本人は厳しい”と感じる原因となっています。

    ■ 現場で実際に起きていること──「また泊まりたい」レビューで評価が下がる理不尽

    私が代行運営している複数の民泊では、実際にこんなことがありました。

    ■ ケース1:

    日本人ゲスト「すべて快適で、また絶対来ます!ホストも親切でした」

    → 星4

    → Airbnbのスーパーホスト評価が下がる原因に

    ■ ケース2:

    外国人ゲスト「チェックイン少し面倒でした。でも清潔でした」

    → 星5

    → ホスト満足度が上がる

    同じようにゲストは満足していても、レビューの星の付け方の文化差で評価は天地の差。

    運営する側からすると、「やるせなさ」すら感じます。

    ■ 「日本人は細かい」「クレーム気質」と誤解される構造

    加えて、レビュー文面と星のバランスにもズレがあります。

    • 丁寧で長文なレビュー → 内容は褒めているのに星は3

    • 感情を抑えた言葉遣い → 星1に近いと誤解される

    海外のゲストは、もっと感情的かつ単純に「よかった!また来る!」→ 星5、といったシンプルな構造です。

    この違いから、民泊ホストや運営者の間では

    「日本人はレビューが細かくて厳しい」

    「評価が低くつけられがちで、リスクが高い」

    という“偏見”が生まれ、予約の段階で敬遠されるケースも見られるようになりました。

    ■ 解決策はあるのか?

    現時点で明確な解決策はありませんが、クレームの回避ではなく「共感」と「感情共有」に注力

    → 星の数より「次も選んでもらえる関係」を目指す運営に切り替える

    ■ 結論:悪意ではなく文化の違い。でも、その影響は現実

    日本人ゲストが嫌われているわけではありません。

    ただ、“松竹梅文化”が世界のレビュー基準とズレているだけです。

    このギャップを理解せずに運営すると、

    • OTAのスーパーホスト資格を失う

    • 評価点が下がって掲載順位が落ちる

    • 結果的に稼働率が落ちる

    という“非常にリアルで痛い損失”に繋がります。

    【最後に】

    もしあなたが民泊や貸別荘のホスト・運営者なら、

    「日本人ゲストは厳しい」ではなく、

    「レビュー文化が違うだけ」と受け止め、

    **文化の違いにどう寄り添うか?**という視点を持つことが求められています。

    レビューは点数ではなく、**“信頼の見える化”**です。

    その信頼をどう積み上げるか──そこに、民泊運営の真の価値があります。