【SNS集客が全盛でも】結局、ゲストはOTAで予約する──Instagram予約が若者に敬遠される理由と民泊運営のリスク

SNS経由の「直接予約」がブーム? その実態とは
ここ数年、貸別荘・民泊業界では「SNS経由の直接予約」に注目が集まっています。
Instagramで写真やリール動画を見たゲストが「泊まってみたい!」と興味を持ち、そのままDM(ダイレクトメッセージ)で問い合わせ→予約、という流れです。
一見、これは理想的な流れに見えるかもしれません。
-
OTA(AirbnbやBooking.comなど)に手数料を取られない
-
柔軟な価格設定ができる
-
リピーターに繋がるチャンスがある
ところが――
実際にSNS経由で予約を獲得できている民泊施設はごく一部であり、多くのゲストは「直接予約」に不安を感じているのが現実です。
実態:9割以上は今でもOTA経由で予約している
私たちが関わる複数の民泊施設(関西・九州・沖縄)では、現状全体の90〜95%がOTAからの予約です。
Instagramでの集客は「きっかけ」にはなるものの、予約ボタンやDMでのやり取りを避け、結局はAirbnbやBooking.com経由で申し込むゲストが圧倒的に多いのです。
その理由は明白です。
ゲスト側の「SNS予約」に対する不安
1. 詐欺や偽アカウントのリスク
過去に「DM予約で振り込んだが、実際に宿泊できなかった」というトラブルがSNS上で報告されています。
特に若いゲストほど、詐欺アカウントの存在を警戒しており、
「見た目が良くても、公式サイトがない施設は怖い」
「OTAなら万一キャンセルや問題が起きても保証がある」
といった声が多数。
2. 支払いが不透明
クレジットカードを使いたい、領収書が欲しい、宿泊証明が必要など、OTAなら当たり前の手続きが、SNS経由だと面倒または対応できないケースも。
特に外国人ゲストからは「支払いが曖昧=信用できない」という印象を持たれることが多く、ビジネス利用や家族旅行では完全に敬遠されます。
3. キャンセル・変更の手続きが不安
OTAではボタン一つでキャンセルや日程変更が可能ですが、SNS経由だとメッセージのやり取りが必要です。
これが「めんどくさい」「責任の所在がわかりにくい」と感じられる要因に。
実体験:SNS予約でトラブルになった事例
▼ ケース①「振込先が個人名で不安になった」
Instagramで予約したいとDMをくれた若い女性グループ。
予約確定のやり取りまで進んだものの、「振込先が会社名でなく、個人名だったのでやっぱりAirbnbから予約し直します」と返答。
その後、OTA経由で予約し直し。つまり、SNSからの予約は不成立でした。
▼ ケース②「返金トラブルになりかけた」
直接予約で申し込んだゲストが直前でキャンセル。規約では返金不可のはずでしたが、
「やり取りに履歴が残っていない」「説明が十分でなかった」と言われ、SNS上で晒されそうになったケースも。
OTAであれば明確なポリシーがあり、感情的な問題に発展しにくいのですが、SNS予約はトラブルがダイレクトにオーナーに跳ね返ります。
Instagramは“予約を取る場”ではなく“興味を持たせる場”
Instagramやリール、TikTokは非常に強力なツールですが、それはあくまで**「視覚的に興味を持たせるきっかけ」**です。
SNSで感動し、検索で裏付けを取り、OTAで安全に予約する――これが現代のゲストの流れです。
特に若者はSNSに慣れているからこそ、
-
「本当に予約して大丈夫か?」
-
「公式アカウント?なりすましじゃない?」
-
「この施設、運営会社名や連絡先はどこにも載ってない…」
という不安を、即座に読み取ります。
注意点:SNS経由予約をやるなら「安全設計」が必須
もしそれでもSNSからの予約導線を作るなら、以下のような対策が最低限必要です。
✅ 法人名・事業者名を明記
→ 誰が運営しているのかを明確にすることで安心感を与える
✅ 決済は予約システムを活用(Squareなど)
→ 振込ではなくカード決済の安全性を確保
✅ 規約とキャンセルポリシーを事前に明文化
→ PDFや予約サイトのリンクで送れるようにしておく
✅ 予約は「DM」ではなく「外部フォーム」へ誘導
→ LINE公式アカウントやGoogleフォームでも、最低限の記録が残る形が必要
結論:SNSは“信頼形成の導線”まで。予約はやっぱりOTAで。
-
SNSからの予約は手数料がかからず魅力的に思えるが、実際のゲストはOTA経由を選ぶ傾向が強い
-
特に若者は「怪しい」「詐欺かも」と慎重になっており、DM予約は避ける傾向
-
Instagramはあくまで“興味を引く場”。予約は信頼のあるプラットフォームで完結させるのが今の常識
-
トラブルを避け、信頼を獲得するためには、安全性・透明性のある予約導線が必要
予約の手数料を惜しんで、信頼を失っては元も子もありません。
SNSの力を最大限に活かすには、「見せる場所」と「予約する場所」をきっちり分けることが、これからの民泊・貸別荘経営には求められています。