【共同所有】友人と貸別荘を始めるのは危険。夢の共有が地獄になるまで

「仲のいい友人たちと、自然の中に別荘を買って、貸別荘として運用してみない?」
聞こえは最高です。楽しそう、素敵、人生が豊かになりそう……。そう思ってしまうのも無理はありません。ですが、この話には想像以上にリスクが潜んでいます。
私は民泊・貸別荘業界に10年以上携わり、複数のプロジェクトに関わってきました。インテリア設計、OTA掲載、価格設定、レビュー管理、収益改善まで実務で行ってきた中で、「友人と始めた別荘貸し」で揉めて破綻するケースを何度も見てきました。
この記事では、その理由を実体験や業界の現実とともにお伝えします。
理想:「みんなで買えばコストも抑えられるし、貸し出して収益も得られる」
最初は本当に楽しいんです。
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別荘の場所探しや内見を一緒に行く
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インテリアのテーマを考え合う
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「誰がいつ使う?」とワクワクしながらスケジュールを立てる
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Airbnbに載せた瞬間、「予約入った!」と喜び合う
まさに夢のライフスタイルのスタート。…のように見えます。
でも、ここからが問題の始まりです。
現実①:対応の「差」がストレスになる
貸別荘を運営するということは、毎日のように問い合わせ対応、予約管理、清掃手配、備品補充、価格調整などの業務が発生します。
そして、誰かがそれを「多くやる」状況になります。
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誰か1人がトラブル対応を夜中にしている
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誰か1人がレビューの返信を全部している
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誰か1人が清掃業者との連絡を毎回やっている
他の人たちは、「ありがとう」「助かる〜」で終わりがち。
最初はよくても、この差が徐々に不満になります。
「結局、私ばっかりやってない?」
「え、また私が対応するの…?」
そう思うようになったら終わりです。気づかないうちに友情はじわじわとすり減っていきます。
現実②:お金の管理が“面倒”から“火種”へ
貸別荘で最もトラブルが起きるのがお金の話。
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収益が出たとき、どう分配するか
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経費を誰が立て替えるのか
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追加の修繕費や備品購入を「出す・出さない」で揉める
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赤字の時に誰がどれだけ補填するのか
最初にルールを決めたとしても、運用が進む中で例外がどんどん出てきます。
「最初に払った金額が違うのに、収益は均等なのはおかしくない?」
「この掃除業者、高すぎない?なんで勝手に決めたの?」
「自分は使ってない月でも経費を払うのは納得いかない」
たとえ親友でも、お金の話が絡んだ途端、遠慮はなくなります。
むしろ親しいからこそ、言いたいことを言ってしまい、取り返しがつかなくなることが多いです。
たとえ数千円レベルでも、「自分は損している」「相手の行動が不公平」と感じた瞬間から、人は冷たくなります。
私が見た中では、たった6,000円の消耗品代を巡って、グループLINEが炎上し、それ以降運営が止まったケースもありました。
現実③:責任の所在が曖昧なまま進む
友人と共同運営する場合、「法人化せず、名義は誰か1人」といったケースが多く、法的・契約的な責任の所在がグレーになりがちです。
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建物の名義人がトラブルの責任を全て負わされる
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法律や条例違反が発覚した際、全員に責任の意識がない
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税務申告や固定資産税の処理を誰かが丸かぶり
そして、「名義が自分じゃない」側の人間が、徐々に当事者意識を失い、だんだん距離を置くようになります。すると、全ての負担が一部の人に集中。結果、崩壊です。
現実④:別荘を「自由に使える」日は来ない
「空いてる日は自分たちで使おうよ!」という話もよくあります。
ですが、いざ貸別荘として動き出すと、以下のようなことが起きます:
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繁忙期は「貸して稼ぎたい」人と「使いたい」人で衝突
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予約を優先するため、自由に使えなくなる
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「あの人、家族で3泊も使ったよね?」と陰口や不満
つまり、自分たちのために買ったはずの別荘が、自分のものではなくなるんです。
これはかなりストレスですし、「なんのために買ったんだっけ?」とモチベーションが消えていきます。
貸別荘運営は、ビジネス。友情でやるものではない
最も大きな問題は、「ビジネスなのに、友情で始めてしまうこと」です。
貸別荘の運営は、単なる趣味ではなく、完全に事業です。
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プライシング(価格設定)の最適化
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清掃品質とゲスト満足度の管理
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リピーター施策やレビュー改善
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競合物件との差別化
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地域条例・法律への対応(用途変更、民泊申請など)
これらを感情ベースでやると、必ず破綻します。
ビジネスとしての意識が揃っていない状態で始めると、
**「なんでそんなに細かいの?」 vs 「なんでこんなに適当なの?」**と衝突するのがオチです。
結論:友情を守りたいなら「一緒に貸別荘をやらないこと」
ここまで読んでいただければ分かる通り、友人同士で貸別荘を運営することは、ハイリスクです。
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仕事の分担に偏りが生まれる
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金銭感覚や責任感の差でストレスが蓄積する
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人間関係がビジネスに巻き込まれて壊れていく
貸別荘が楽しいのは、うまく回っている間だけ。
そして、それがうまく回る確率は、個人・素人のグループでは非常に低いのが現実です。
もしどうしても始めたいのであれば:
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名義・契約・責任分担をすべて文書で明確化する
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運営はプロに完全委託する(管理代行)
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金銭も「法人化して配当」など冷静な仕組みを作る
これくらいの準備と覚悟が必要です。
私が10年民泊事業に関わって出した答えはシンプルです。
「別荘は1人で買うか、買わないか」。
友情は別荘より、はるかに貴重です。