民泊可能と言っていたのにできない?急増する悪質不動産会社

―急増する「民泊詐欺まがい」の物件と、不動産業界のグレーな現実―
ここ数年、「民泊で副収入を得たい」「空き物件を貸別荘として活用したい」と考える個人が増える一方で、それを利用した悪質な不動産業者の存在も目立ってきました。
「この物件、民泊にぴったりですよ」
「旅館業申請もすぐに通ります」
「民泊運用で月30万円の収入も可能です」
そんな言葉を信じて、実際に物件を購入・賃貸したものの、いざ始めようとしたら用途地域でNGだった/建築基準を満たしていなかった/近隣からクレームが殺到したという事例が全国で多発しています。
本コラムでは、そうした**“民泊ビジネスを夢見た人たちの失敗談”と、“知識のないまま物件を勧める不動産業者”の実態**を紹介しながら、これから民泊を始めようとする人への注意喚起を行います。
実録:用途地域で民泊が禁止されていた
「民泊できると聞いて、古家付きの土地を買ったんです。古民家をリノベして宿にする夢があって。でも、いざ旅館業の申請を出そうとしたら“用途地域が第一種低層住居専用地域なので宿泊業は不可”って言われて…。完全に騙されました。」
これは、関東圏に住む40代女性の体験談です。案内してきた不動産業者は「民泊OK」とだけ説明し、地域の条例や旅館業法についての説明は一切しなかったそうです。
実はこのように、「用途地域」によって旅館業(民泊を含む)が認められていないエリアは多く存在します。第一種低層住居専用地域、第二種住居地域、工業地域など、それぞれの地域で可能な用途が異なり、その確認は購入者・賃借人自身がすべき最重要ポイントです。
平米数や設備基準を満たさないまま売られる“民泊可物件”
別のケースでは、「民泊運用に最適」と紹介されたマンションの一室を購入した男性。内装はきれいにリフォームされていたものの、旅館業の申請をしようとしたところ、
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洗面所がない
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換気設備が基準を満たしていない
といった理由で、申請が却下。
「そもそも、その物件の構造上、旅館業の条件を満たせるような改修は不可能だったんです。業者は“あとは役所に申請するだけです”って言ってましたけど、それが真っ赤なウソだった…。」
民泊・旅館業には、各都道府県が定める最低限の“構造要件”が存在します。面積、採光、通風、衛生設備、避難経路など、細かい基準が複数あり、素人が「いけると思った」だけではまず通りません。
不動産業者に悪意があるとは限らない。しかし…
もちろん、すべての業者が“詐欺的”というわけではありません。多くの場合、業者自身も民泊や旅館業の法制度に詳しくないというのが実態です。
つまり、
✔️「法律的には無理」な物件を
✔️「できるかもしれません」と曖昧に表現して
✔️「運用は買主の責任で」と逃げ道をつくる
というパターンが非常に多く、グレーな販売が横行しているのです。
民泊や旅館業は、「住宅を人に貸すだけ」という簡単なものではありません。建築法・旅館業法・消防法・都市計画法・近隣との協定・自治体条例など、複数の法律が交差する非常に複雑な分野です。
免許制でも資格制でもない「民泊コンサル」の闇
さらに拍車をかけるのが、“民泊コンサル”を名乗る業者の乱立です。
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開業サポート30万円!
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月額10万円で運営代行!
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旅館業取得代行OK!
このような言葉に惹かれて契約したものの、開業に至らなかった/申請に失敗した/途中で連絡が取れなくなったなどのトラブルも後を絶ちません。
「資格がいらない」この領域では、無知なままアドバイスをする人たちが堂々と商売しているという実態があります。まさに、知識のない人間が、さらに知識のない人に売っている構図です。
買う側・借りる側こそ“最低限の知識”を持つべき
結局のところ、どんなに良心的な業者と出会ったとしても、最終的に責任を負うのは買主・借主本人です。
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そのエリアは旅館業許可が取れる用途地域か?
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面積・構造は要件を満たしているか?
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消防法上の届出は必要か?
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周辺住民の理解は得られそうか?
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特区民泊や簡易宿所、住宅宿泊事業法のどれに該当するか?
このような項目を、自ら調べ、自治体や保健所、消防署に確認する手間を惜しまないこと。それが、安易な「民泊できる詐欺」から自分を守る唯一の方法です。
まとめ:夢は、現実を知ってから追いかけよう
民泊や貸別荘には、魅力も可能性もたくさんあります。しかしその一方で、「知識のない人が損をする世界」でもあるということは、もっと広く知られるべきです。
「できる」と言われたことをうのみにしない。
「おいしい話」の裏側を、必ず自分で確認する。
「買う前」「借りる前」に、役所に何度でも足を運ぶ。
その慎重さが、あなたの夢を守り、「民泊ビジネスが地獄だった」という未来を防いでくれるのです。