Columnsコラム

民泊可能なマンション・戸建ては今が“売り時”?

目次

    ―2026年問題と撤退ドミノ、民泊バブルの出口戦略とは―

    「民泊運用で毎月30万円の副収入!」「空き家をリノベして貸別荘に!」「インバウンド需要で不動産価値が上昇!」

    ――そんな夢のあるフレーズに惹かれて、数年前から民泊や貸別荘物件に投資したオーナーたちは今、静かに“出口”を探し始めています

    背景にあるのは、2026年以降の需要減少の予測と、高額賃貸で運用していた民泊プレイヤーたちの撤退の加速、そして**「お金をかけずに何となく運営していた」タイプのオーナーたちの失速**。

    不動産市場にはまだ表立って現れていないものの、水面下で民泊可能物件の売却相談・査定依頼・仲介の動きが急増しているという話も、業界ではもはや常識となりつつあります。

    では本当に、「今が売り時」なのか?

    このコラムでは、民泊市場の動向、撤退リスク、そして売却タイミングとしての“今”の意味を、多角的に分析していきます。

    インバウンド復活、しかし“期待通りではない”現実

    2023年以降、日本には再びインバウンド観光客が戻ってきました。東京・大阪・京都などの都市部、軽井沢・那須・箱根などの観光地は、連日外国人でにぎわっています。

    ただし、すべての民泊・貸別荘に均等に恩恵があったわけではありません

    宿泊者が選ぶ基準はますますシビアになっており、以下のような明確な「選別」が進行中です:

    • 清潔感と内装の質

    • 立地と交通利便性

    • レビューの数と評価

    • インスタ映えなどSNS価値

    • 言語対応やサポート体制

    この結果、「DIYで適当に始めた」貸別荘や、設備投資を抑えていた簡易民泊は、予約数が激減しているのです。

    高家賃で物件を借りて民泊運営していた層の撤退

    近年多かったのが、「物件を自分で買わずに、高めの家賃で借りて民泊として転貸運営する」というスタイルです。いわゆる**民泊転貸業者(サブリース型オーナー)**です。

    このモデルは初期費用が少なくて済む反面、以下のようなリスクを抱えていました:

    • 月々の家賃固定費が高く、閑散期の赤字が大きい

    • 許可条件が厳しく、運用停止リスクが高い

    • オーナー側からの契約解除で突然撤退の可能性

    2025年後半から2026年にかけて、こうした高家賃型の運営スキームが崩壊するタイミングが来ると、多くの不動産関係者が警鐘を鳴らしています。

    すでに都心部や人気観光地では、「民泊可物件として賃貸していたが、入居者が撤退し、空室が長期化」というケースが増加。これにより、物件オーナー自身も“次の手”として売却を考え始めているというのが実情です。

    売却希望の増加と「水面下取引」の実態

    一見、まだ表面化していないように見える民泊物件の売却ラッシュ。

    しかし実際には、水面下での売却相談・相対取引が活発化しています

    不動産業者や民泊コンサルの間では以下のような会話が増えています:

    • 「以前運用してた物件、もう稼げなくなったから手放したい」

    • 「数年前の価格より少し安くてもいいから早めに売りたい」

    • 「インバウンド向けじゃない立地の民泊物件が売れ残ってる」

    こうした物件は、ポータルサイトには載らず、業者同士の紹介・SNSグループ・クローズドチャネルでやり取りされています。

    つまり、市場には見えていないところで「民泊物件の出口戦略」が進行中なのです。

    2026年問題:訪日需要の天井と地域民泊の“飽和”

    2026年に向けて懸念されているのは、「訪日需要の一巡」と「地域民泊の飽和・価値低下」です。

    • 為替差益(円安)によるバブル的な旅行熱の一巡

    • 観光地周辺に大量に建てられた同質化された宿泊施設

    • 地元住民や自治体の反対による法規制強化の可能性

    これらによって、民泊市場に「二極化」が起き、弱い施設は淘汰されるステージに突入するという予測が現実味を帯びてきています。

    では“今”が売り時なのか?

    答えは、ある条件に該当する物件であれば、今がベストの売却タイミングになり得るです。

    売り時に該当する物件:

    • 運営が伸び悩んでいる民泊専用物件(予約減・稼働低下)

    • 高家賃での転貸が終了したばかりの空室物件

    • 立地や設備的に将来的な競争力に不安がある物件

    • 自治体の規制変更リスクがあるエリアの物件

    こういった物件は、「まだ民泊バブルの名残があるうち」に売却したほうが高値がつく可能性があります。数年後には「売っても赤字」という状況も十分にあり得ます。

    一方、以下のような条件に当てはまる物件は、まだ保有する価値があります:

    保有すべき物件:

    • 安定した実績と高評価を維持している施設

    • 立地・周辺環境・交通アクセスに優れる都市型物件

    • 自主管理による高利益体制を築いている

    • 再利用(居住用・別荘・長期賃貸)としても活用可能

    まとめ:民泊市場は成熟期に。今こそ「出口戦略」を考えるタイミング

    民泊というビジネスは、2016年〜2019年の“成長期”、2020〜2022年の“停滞期”を経て、2023年以降は“選別と成熟のフェーズ”に入っています。

    民泊に夢を見た人たちが撤退を始め、運営の体力・知識・投資力のある者だけが生き残る構図へとシフトしている今、

    あなたが持っている物件が「伸びるか」「損切りすべきか」を見極める必要があります。

    今こそ、出口戦略を考えるタイミングです

    売るなら、早いほうが良い。

    保有するなら、戦略を見直すべき。

    そして何より、“次の一手”を考えるべき時代が来ています。