和歌山県白浜で“旅館業許可の貸別荘”に再び警告

―保健所が求める「緊急駆けつけ体制」の本当の意味とは―
近年、和歌山県白浜町は貸別荘・一棟貸しタイプの宿泊施設が急増し、観光地としての魅力と相まって民泊・旅館業の運営エリアとして注目を集めてきました。
とりわけ「旅館業法(簡易宿所)」を取得して合法的に運営しているオーナーにとっては、「堂々と営業できる」という安心感があったはずです。
しかし今、そうした許可取得済の貸別荘オーナーに対し、和歌山県の保健所から“緊急時の駆けつけ対応体制”の確認・指導が相次いでいるのをご存じでしょうか?
「許可を取ったのに、なぜ今さら?」
「何をどう再確認されているのか?」
「外部委託じゃダメなのか?」
本コラムでは、白浜町の旅館業界で起きているこの“再確認ラッシュ”の背景と、貸別荘運営者が今、何を見直すべきなのかを掘り下げていきます。
「駆けつけ対応」が突如フォーカスされ始めた理由
近年の貸別荘・民泊市場では、以下のような運営者が急増しています:
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首都圏や都市部に住みながら、白浜で貸別荘を運営するオーナー
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実家の空き家を活用して遠隔地から管理する相続オーナー
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日本語が十分に話せない外国籍の個人オーナーが国内物件を民泊化
このような形態の運営者は、日常的に現地にいるわけではなく、緊急トラブルに即時対応できない可能性が高いと行政側も警戒しているのです。
実際に、以下のようなトラブルが発生しています:
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夜間に鍵が壊れ、ゲストが室内に入れず、2時間以上外で待たされた
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近隣からの騒音苦情で警察が介入するも、オーナーと連絡が取れず現地対応ゼロ
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ゴミ放置の苦情が相次ぐが、外国籍オーナーが地域ルールを理解しておらず、改善されない
こうした事例が重なった結果、保健所は今、「実質的に対応可能な体制があるのか?」」という点を形式だけではなく**「実務レベル」で再確認する流れになっているのです。
多くの貸別荘オーナーは、保健所の申請時に「緊急対応を○○業者に委託しています」と申告しています。
しかし問題は、「本当にその業者が適格な体制で動けるのか?」「契約内容に現場対応が含まれているか?」という実効性。
たとえば次のような指摘が出ています:
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清掃委託会社に“ついでに”駆けつけを頼んでいたが、対応できるのは平日日中のみ
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民泊運営代行業者に任せていたが、現地スタッフ不在で電話対応のみ
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実際には家主が大阪などの遠方在住で、緊急時には数時間かかる
保健所はこれに対し、「契約書の有無」「実際の対応実績」などの提出を求めるケースが増えており、“形だけの体制”では不適合と判断されるリスクが高まっているのです。
「近隣トラブル=営業停止リスク」に直結する現実
旅館業法を取得したからといって、何をしてもよいわけではありません。
むしろ、近隣住民からの苦情が繰り返されると、保健所が“営業停止”を検討するケースもあり得るのが現実です。
白浜町のような観光地では、住宅地と貸別荘の境界があいまいなケースも多く、以下のような事例が報告されています:
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BBQの騒音で深夜に近隣住民が警察を呼ぶ
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ゴミ出しのルール違反で地域との関係が悪化
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泊まっている外国人ゲストが迷子・急病でトラブルに
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建物の鍵が開かず、近所の住民に助けを求めてくる
こうした際に、現地に誰も対応者がいない=“無責任運営”とみなされるリスクが非常に高まります。
今すぐ見直すべき3つのポイント
貸別荘オーナーとして、いま保健所からの再確認ラッシュを前にして、以下の点を見直すことが急務です。
①本当に“駆けつけ”できるのかを再確認
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担当者が白浜近隣に常駐しているか?
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緊急時、何分以内に現場対応できるか?
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担当者の連絡先・対応範囲・契約状況を明確にする
② 実際の“駆けつけ実績”を記録しておく
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トラブル発生時の対応記録(日付・対応者・内容)を保存
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保健所の立ち入り検査時に提示できる資料を準備
③ 近隣住民との関係構築
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挨拶や連絡先共有を行っているか?
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苦情が出た際の再発防止策を明示できるか?
「貸別荘バブル」が崩れたとき、生き残るのは“地に足のついた運営者”
貸別荘や一棟貸し民泊のブームは、インバウンドの回復とともに一気に盛り上がりました。しかし、2026年以降には「撤退ドミノ」の予測もあり、今後は「実直な運営」をしている施設しか生き残れないフェーズに突入します。
形式上の許可や、見せかけの業務委託ではなく、
“ちゃんと現場に駆けつけられる体制がある”という一点こそが、これからの信頼の証です。
白浜という土地柄、自治体や住民の目も年々厳しくなっており、「騒がれる前に動く」ことが今後の鍵になるでしょう。
結論:緊急駆けつけ体制は「書類上」ではなく「現場対応力」で評価される時代へ
保健所が問うのは、「紙の上での体制」ではなく、「本当に対応できるか?」という一点です。
これをないがしろにすれば、許可を持っていても行政指導、最悪の場合は営業停止となる可能性もあります。
貸別荘ビジネスを持続可能な形で育てていくためにも、今このタイミングで「駆けつけ体制」の棚卸しと強化をしておくことが、将来の信頼と収益を守る一歩となるのです。