Columnsコラム

民泊・貸別荘で頻発する“駐車トラブル”——狭い道・運転不慣れ・敷地外契約の必要性

目次

    観光地や別荘地における「民泊」や「貸別荘」の利用が増える中で、見落とされがちだが非常に深刻な問題がある。それが**“駐車トラブル”**だ。単なる停め方の問題にとどまらず、道路の構造や運転スキルの違いによって、近隣トラブルや事故を引き起こす事例が増えている。

    狭い道が招く“切り返し問題”

    観光地に点在する貸別荘や古民家型民泊の多くは、山間部や傾斜地、昔ながらの住宅街の奥にある。これらの地域には、軽自動車1台分しか通れないような細道が存在し、そこを通って目的地にたどり着くことになる。

    問題なのは、車での進入は可能であっても、敷地内でうまく切り返せない場合や、前向き駐車で停めてしまい、出るときに脱出不能になるようなケースが後を絶たないことだ。

    特に、以下のようなトラブルが報告されている:

    • 敷地から出ようとして、隣家の私有地に無断で乗り入れて切り返しをしてしまう

    • 道幅が狭く、転回スペースがないため通行不能になり、地元住民の車が足止めされる

    • 車を停めたあと、出ようとした際に石垣や側溝に脱輪してしまう

    「運転不慣れ」×「レンタカー」のリスク

    さらに近年増えているのが、普段車を運転しない人が、旅行先でレンタカーを借りてくるケースだ。特に都市部在住の若年層や訪日観光客にその傾向が強く、以下のような特徴がある。

    • 車両感覚に不慣れで、車幅・車高・切り返しに苦戦する

    • ナビ通りに進んでしまい、想定外の狭い道や私道に入り込む

    • 運転者が土地勘ゼロで、「駐車できたけど出られない」状況に陥る

    このような背景から、現地に到着してから想定していなかった苦労やトラブルが発生しやすいのだ。

    トラブル防止のカギは「敷地外駐車契約」も含めた備え

    こうした状況を踏まえると、施設運営者に求められるのは「停められるか」ではなく、**「安全に出入りできるか」**という視点での対応だ。そのための現実的な対策として、以下のような取り組みが急務である。

    1. 別途、敷地外駐車スペースの契約

    施設の敷地内に駐車できる台数が限られる場合や、出入りが難しい構造の場合には、徒歩数分の範囲で契約駐車場を確保することが有効だ。

    駐車料金は宿泊費に含めるか、利用者にオプションとして提示することで調整できる。

    2. アクセスルートと駐車方法の詳細な事前案内

    どの道を通るべきか、どこが私有地か、どちら側から入ると安全かなど地図・写真・動画などを用いて案内するとトラブルを大幅に減らせる。

    3. 運転スキルへの配慮を呼びかける

    チェックイン前の案内に、

    運転に不安がある方は小型車を推奨

    現地の道幅に注意

    到着前に必ずご確認ください


    といった注意喚起を盛り込むことも重要だ。

    “自由な宿泊”の裏側にある責任

    民泊や貸別荘は、ホテルとは違う「自由な旅の形」を楽しめる一方で、そこには利用者自身の判断や配慮が強く求められる。運営者もまた、自由度の高さが「自己責任」にすり替わらないよう、最低限の安全設計とトラブル対策を講じる必要がある。

    駐車に関するトラブルは、たった一度の苦情で運営許可の継続が難しくなる場合すらある。特に地域コミュニティとの共存が求められる日本において、近隣への影響を想定した備えこそが、民泊運営の未来を守る鍵になるのではないだろうか。