「みんなでお金を出し合ってリゾート投資」――その甘い話に潜む現実

沖縄・リゾート地での貸別荘クラウドファンディングや共同出資の落とし穴
「自分では買えないなら、みんなで投資しよう!」という誘惑
ここ数年、「リゾート不動産にみんなで投資して貸別荘にしよう」という話をよく耳にするようになりました。
中でも特に多いのが沖縄や奄美、小豆島などのリゾート地での貸別荘・グランピング・ヴィラなどの投資型事業。
「1人で数千万は無理でも、10人でやれば可能!」
「クラウドファンディングで少額から参加できる!」
「民泊収入で毎月配当がもらえる!」
そんなうたい文句でSNSやYouTubeを通じて人を集める事業者も増えています。
しかしこの「みんなでやるリゾート投資」には、多くの素人が知らない重大なリスクと難しさが潜んでいます。
沖縄などのリゾート地は「融資が下りにくい」
まず前提として、沖縄などのリゾート地は金融機関からの融資が非常に通りにくいエリアです。理由は明快です。
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観光業頼みで景気が不安定
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台風や自然災害リスクが高い
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賃貸需要が少なく、出口戦略が難しい
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本土から遠く、管理・維持にコストがかかる
そのため、地方銀行や信用金庫ですら「リゾート地のセカンドハウスには消極的」で、自己資金での購入を求められるケースが多々あります。
それゆえ、「みんなでお金を出し合えば買える」という発想になるのですが、ここに大きな落とし穴があるのです。
共同出資・クラウドファンディングのリアルな難しさ
1人ではできないことを複数人でやる。それ自体は悪いことではありません。
しかし、不動産という長期かつ管理が必要な資産を複数人で持つとなると、問題は一気に複雑化します。
■ お金を出した「だけ」では意思決定ができない
クラファン形式では、事業者(運営会社)が所有・運営し、出資者は実質的に口を出せないケースが大半です。
たとえ物件の実績が悪くても、「収支報告に疑問がある」「管理状態が悪い」と思っても、あなたにはそれを改善する権利がありません。
■ 共同出資者同士の足並みが揃わない
10人で物件を所有したとしましょう。
売却したい人、保有を続けたい人、もっと設備投資したい人…。
方向性が割れれば、身動きが取れなくなるのが共同所有の怖さです。
遺産相続と同じで、「全員の同意がないと売却できない」「代表者がトラブルを起こした」などのパターンも多く見られます。
最悪のケース:「本体が倒産したら、物件ごと差し押さえ」
クラウドファンディング型や任意組合型(匿名組合含む)でのリゾート投資には、実は重大なリスクが存在します。
それは、「出資者ではなく、事業者本体が物件を所有している」ケースが多いという点です。
つまり、
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あなたは所有者ではなく、事業者への出資者に過ぎない
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事業者が倒産すれば、物件は差し押さえ対象になる
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出資金は、配当どころか1円も戻ってこない可能性もある
これは実際にあった話ですが、某クラウドファンディング型リゾート事業では、数十人の出資者がいたにも関わらず、運営会社が倒産して物件は競売に。出資者には1円も戻らなかったという事例があります。
「透明性のない収支報告」と「操作されやすい数字」
運営会社が提出する月次レポート。そこに書かれた収益や稼働率を、あなたは信用できますか?
実際には:
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清掃費や光熱費が割高に計上されている
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稼働率は予約ベースではなく希望ベースで報告される
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管理人の人件費や広告費が不透明
このように、数字はいくらでも操作できてしまうのです。
あなたが現地を見に行っても、権限も口出す権利もありません。
脱退できない、売れない、終わらない地獄
共同所有やクラファン型にありがちな地獄は「抜けたくても抜けられない」という問題です。
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自分だけ抜けたい → 売却相手がいない
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他の人が反対して売却ができない
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売れても価格がつかず損失確定
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配当はゼロでも、固定資産税は請求される
つまり、不労所得を夢見て参加したのに、出口がなくて「負債資産」を抱え続けることになるのです。
本当にやるなら、こうしたほうがいい
それでも「どうしてもリゾート地で貸別荘をやってみたい」という方は、次のような方法をおすすめします。
● 自分で視察・許可・計画を立てて、100%所有で始める
→ 面倒でも「自分の責任でやる」ことが、リスク管理の基本
● どうしても共同出資するなら「5人以内」「明文化した契約」「出口戦略の合意」
→ 曖昧なままスタートすると、必ず後で揉めます
● クラウドファンディングは「少額・損してもいい前提」で投資する
→ 宝くじのような感覚で。生活資金を注ぎ込むのはNG
まとめ:「みんなで買えば怖くない」は幻想
民泊や貸別荘、リゾート不動産の世界は、確かに夢があります。
でもその夢には、「人とお金と制度」が複雑に絡み合うリアルな事業の厳しさがあります。
クラウドファンディングや共同出資という形で夢を分け合うのは、
リスクも分け合うことになるのです。
一度始めてしまえば、後戻りは困難。
物件が競売にかけられて初めて、「自分はオーナーではなかった」と気づくような投資は、絶対に避けるべきです。
不動産は、所有して初めてコントロールできる。
所有していないなら、リスクは「運命共同体」として背負わされるだけ。
人任せのリゾート投資には、どうか慎重すぎるほど慎重になってください。