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民泊・貸別荘を個人で運営する難しさ──清掃業務の委託が「思ったより難しい」本当の理由

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    コロナ禍を経て、地方や郊外の貸別荘・民泊市場が活況を呈し、多くの個人オーナーが「空き家活用」や「セカンドハウスを貸して収益化」という選択を取り始めています。しかし、実際に運営を始めてから多くのオーナーが直面するのが、清掃業務の外注の難しさです。

    「1件だけでも清掃依頼すればやってくれるだろう」「清掃業者に任せれば問題ないだろう」と思っていた方こそ、現実とのギャップに苦しむことになります。

    清掃会社は「1件だけ」の依頼を断ることが増えている

    ここ数年、民泊・貸別荘業界は急拡大しました。それに伴い、清掃会社も多忙を極めています。そんな中で個人オーナーが「たった1件の物件」の清掃を依頼しても、採算が合わないため断られるケースが増えてきました

    清掃会社にとっても、人員を確保し、移動し、物品を持参し、報告を行うという作業は決して軽くありません。複数物件を一括で管理しているプロの運営会社の案件と比べ、1件の単発清掃はコスト効率が悪く、手間ばかりがかかるのです。また、繁忙期や連休などで清掃人員が足りない時期は、物件数が多い優良顧客が優先され、単発の物件は後回し、あるいは対応不可になることも。

    清掃費用が高騰するのは「物件数が少ないから」

    実際、清掃業者から見れば「1物件」だけの運営は非常に効率が悪く、清掃費用が高く設定されがちです。たとえば、複数の物件を持つ法人オーナーには1回8,000円〜10,000円で提供している清掃も、個人オーナー向けには1万2,000円以上の見積もりになるケースも珍しくありません。

    スプレッドシート、LINE、Googleカレンダー…清掃スケジュールの非効率な共有

    さらに大きな障害となるのが、「清掃スケジュールの共有方法」です。プロの運営会社は一元管理システムを使って、予約と連動して自動で清掃指示が送られるようにしています。

    一方、個人オーナーの場合、Googleカレンダー、スプレッドシート、LINEでの連絡など、非効率で人的ミスが起こりやすい運用が多く、清掃会社にとって確認コスト・連絡ミスのリスクが高いという大きなストレスになります。

    「清掃と関係のないやり取り」が工数を増やす

    さらに、個人オーナーには「こだわりが強い方」が多く、清掃業務とは直接関係のない備品の配置やインテリアの微調整の指示が入ることも少なくありません。

    これが積もると、清掃業務にかかる作業時間が読めなくなり、他の業務のスケジュールにも影響を与えるため、清掃会社としては敬遠せざるを得ないのです。

    プロの清掃会社はすでに満員、空いているのは「慣れていない会社」

    現場で感じるのは、「ちゃんとした清掃会社ほど、プロの運営会社とタッグを組んでおり、新規を受けていない」現実です。逆に、個人オーナーでも受けてくれる清掃会社は、経験が浅く、体制も整っていないことが多い

    • 予約の締切が1日前、当日予約不可、変更は2日前までなど柔軟性がない

    • スタッフが少なく、繁忙期に対応しきれない

    • 報告体制が整っておらず、クレーム対応が甘い

    など、清掃品質にも不安が残ります。

    結論:「清掃業務を外注すれば安心」は通用しない時代に

    清掃業務の外注は、個人で民泊・貸別荘を始めるうえで最も大きなハードルの1つです。これを甘く見積もっていると、運営に入ってから「清掃が回らない」「急なキャンセル」「クレーム処理に時間を取られる」など、致命的な運用トラブルにつながります。

    また、清掃業者の人件費・材料費・リネンサプライ費用は年々高騰傾向にあり、今後も下がることは期待できません。政治情勢や国際的な物流事情、最低賃金の上昇などを考えれば、むしろ上がることを前提に経営を考えるべきです。

    アドバイス:素人運営ではなく「プロとの連携」を視野に

    もし今後、民泊や貸別荘を検討されている方がいるなら、「清掃をどう回すか」から逆算して運営体制を考えることを強くおすすめします。手間や時間を惜しまず、しっかりとしたパートナーと連携すること。これこそが、民泊・貸別荘運営における成功への第一歩です。