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「追及心」が宿を守る──民泊・貸別荘運営に必要な本当の力

目次

    民泊や貸別荘の運営というと、「空いている部屋を貸すだけ」「清掃業者に任せておけば大丈夫」といった、どこか“手軽な副業”という印象を持たれることがあります。確かに、プラットフォームの整備や代行業者の普及により、物件の運用自体は昔よりも遥かにスムーズになりました。

    しかし、実際に現場で向き合ってみると、トラブル対応、備品の補充、ゲストとのやり取り、各種書類対応、レビュー管理など、“見えない仕事”が山のように存在します。そしてそれらに対して、どこまで丁寧に、責任を持って取り組むかが、宿の信頼性や収益性を大きく左右するのです。

    その鍵となるのが、「追及心」です。

    不当なレビューを書かれたとき、どうするか?

    レビューは、今や予約の判断材料の大半を占めると言っても過言ではありません。宿泊者は、設備の写真よりも「実際に泊まった人の体験談」を信じる傾向があります。

    ところが、レビューの中には、事実と異なるもの、誤解に基づくもの、さらには感情的なクレームも少なくありません。

    例:

    • 予約時にペット不可と明記していたのに「犬が泊まれなかった」と★1評価

    • チェックイン前にエアコンがついていなかったことへの苦情

    • ゲスト側の都合による遅延に対し「対応が冷たかった」と書かれる

    こうしたレビューを放置しておくと、他のゲストが「この宿は対応が悪いのかも」「清掃が行き届いていないのかも」と誤解し、予約率がじわじわと下がっていきます。

    ここで大切なのは、レビューの削除を依頼する“正当な戦い方”を知っているかということです。

    AirbnbやBooking.comなどのプラットフォームでは、誤情報やポリシー違反に基づくレビューの削除依頼が可能です。ただしそのためには、該当箇所の証明、やり取りの履歴、掲載ルールとの照合など、根拠を揃えたロジカルな申し立てが求められます。

    この作業は簡単ではありません。英語での申請が必要な場合もありますし、返答まで数日〜1週間かかることもあります。それでも、「レビューは宿の命」と心得て、一つ一つの不当レビューにきちんと対応していくことが、信頼の積み重ねになるのです。

     

    カスタマサポートの「理不尽」にも負けない姿勢を

    近年、民泊プラットフォームではゲスト保護の姿勢がより強くなってきているという現実があります。これは、安全性やゲスト体験の向上という面では歓迎すべき流れですが、一方で、ホスト側にとっては理不尽に感じられる判断が下されるケースも増えています。

    たとえば、実際に報告されているケースの一部をご紹介します。

    • チェックイン直後、「部屋にホコリが1つあった」という理由でゲストがクレームを入れ、即時全額返金+予約キャンセル

    • 共用部(建物全体の廊下やエレベーターなど)が「暗い」との理由で、ホストには非がないにもかかわらず施設自体に問題ありと見なされた

    • エレベーターのドアが早く閉まるという、建物の仕様上のことが問題視され、ホスト責任とされた

    このような場合、驚くことにカスタマサポートから一方的にキャンセル処理がされてしまうこともあり得ます。

    しかも、サポート担当者の多くはゲストと同じ言語圏(たとえば英語圏のゲストに対しては英語圏の担当者)で対応することが多く、意識的・無意識的にゲスト寄りの判断がなされやすいという指摘もあります。

    ● 英語での「抗議力」が命綱になることも

    こうした状況に直面したとき、泣き寝入りをしてしまう運営者も少なくありません。

    しかし、実際には証拠を揃え、英語で冷静かつ論理的に抗議を重ねることで、判断が覆る例もあります

    とある事例では:

    • ゲストによる不当な苦情に対し、清掃チェックリストや写真、予約時の説明文などを英語で提示し

    • エスカレーション(上級サポート担当者への引き上げ)を申請し

    • 数日かけて粘り強く交渉した結果、全額返金の判断が取り消され、ホストにキャンセル補填が支払われた

    というケースも報告されています。

    これは決して特別な例ではなく、「正しく伝える力」と「諦めない姿勢」があれば守れる権利があるという証です。

    このように、「理不尽さ」にどう向き合うかも、今の民泊運営では重要な要素となっています。

    運営者は感情的にならず、常に**“証拠を残し”“冷静に反論し”“言語の壁を超える”**という行動力が求められているのです。

     

    備品が壊れたら、すぐに直すのが“当たり前”ではない現実

    ゲストに椅子を壊された、テーブルランプを割られた……。

    民泊は、多くの人が日々利用する「実用空間」であるため、どんなに気をつけていても故障や破損は起こります。

    Airbnbには「ホスト損害保証制度」がありますが、申請のハードルは決して低くありません。必要書類は以下のようなものです。

    • 破損箇所の詳細な写真(複数角度から)

    • 領収書または見積書

    • 被害に遭った日と宿泊者の対応記録

    • 清掃会社・スタッフの報告メモ

    これらを揃えて、オンラインフォームに提出し、数日間の審査を経てやっと補償がされます。

    申請の途中で“曖昧な点”があると差し戻され、再提出が必要になることもあります。

    つまり、「壊れた → 保証がある → すぐ補填」ではなく、「壊れた → すぐ証拠を残す → 書類を整える → 提出 → 審査に備える」というステップが必要なのです。

    面倒だと感じて諦めてしまえば、備品は壊れたまま。宿の印象はじわじわと悪くなり、クレームや低評価の原因になってしまいます。

     

    「面倒なことを放置する宿」が失っていくもの

    これらの対応を怠った運営者の末路は、実はシンプルです。

    レビューは下がり、予約は減り、結果として「価格を下げるしかない宿」になります。

    価格を下げれば、客層も変わり、よりトラブルが起きやすくなり、さらに負のスパイラルに陥ります。

    「安さ」でしか選ばれない宿になるか、

    「丁寧な対応」で信頼を勝ち取る宿になるか。

    その分かれ道は、“地味で見えにくい仕事”に向き合えるかどうかにかかっているのです。

    追及心のある運営者は、信頼と収益を手にする

    地味な努力を積み重ねること。

    トラブルがあったら真っ先に動き、証拠を揃え、正しく主張すること。

    備品が壊れたらすぐに修理し、二度と同じことが起きないように仕組みを整えること

    どんなレビューにも目を通し、返信を丁寧に書くこと。

    これらの積み重ねが、ゲストの信頼を呼び、予約数を伸ばし、収益の安定につながっていきます。

    最後に:民泊は「簡単」じゃない。でも「誇れる仕事」です。

    「ただ貸すだけで稼げる」という幻想に振り回されるのではなく、

    「貸した先で人の時間を預かっている」という責任と向き合うこと。

    それができる運営者は、競争が激しい市場の中でも生き残っていきますし、他にはない「心地よい宿」をつくることができます。

    追及心。それは、民泊・貸別荘運営の“見えない資産”です。