「想定より稼げない」民泊・貸別荘投資の落とし穴

数字だけで判断して購入すると起こりやすい失敗と、その回避策とは
最近、民泊や貸別荘の物件を購入されたオーナー様から、よくこういった声を聞きます。
「過去の実績を見て買ったのに、実際は思っていたような売上が出ない」
「聞いていた収益シミュレーションと全然違う」
「この物件、以前の運営会社がうまくやってただけなのでは?」
これは実は、珍しい話ではありません。むしろ、ここ1〜2年でこうした“数字だけを見て買った”投資家・オーナーによるトラブルが急増しています。
表面利回りと実質利回りの違いを理解していますか?
多くの販売資料には「年間売上〇〇万円」「稼働率90%以上」といった表面的な収益情報(=グロス数字)が記載されています。しかし、そこからOTA手数料(10〜20%)・水道光熱費・清掃費・リネン代・消耗品費用といった運営に必要な支出を差し引くと、**手元に残る実質の収益(ネット)**は大きく目減りします。
この「グロス利回り」と「ネット利回り(実質利回り)」の差をしっかり理解せずに物件を購入してしまうと、「想定より儲からない」「赤字になる月がある」といった事態に直面することになります。
売上実績が「以前の運営会社の腕前」によるものであるケースも多い
物件の過去実績を見て購入を決めたとしても、その数字は以前の運営者のノウハウ・レビュー実績・ゲスト対応力・リピーター獲得能力によって支えられていた場合があります。
実際に、私が以前相談を受けたあるオーナー様のケースでは、購入当初に想定していた年間売上は1,000万円。しかし運営を切り替えた後の初年度は700万円に届かず、稼働率も60%前後に下がってしまいました。
要因としては:
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内装や設備が前運営者の頃より劣化していた(が、写真はリノベ当初のものを掲載)
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清掃会社・リネン会社の変更でクオリティが下がりレビュー評価が悪化
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周辺競合が増えていたのに価格調整ができていなかった
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電話対応や苦情対応のスピード感が前よりも遅くなった
といった、見えにくいけれど運営に大きく影響する部分の質の低下が原因でした。
表に出てこない支出、見えにくいリスク
また、物件購入時には一見省かれていることの多い費用があります。
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家具・家電の経年劣化による買い替えコスト
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リネンやタオルの補充・補修費
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急な修繕費(トイレのつまり、エアコン故障など)
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近隣とのトラブル対応にかかる時間とストレス
これらは、表面的な収益計算では考慮されていないことがほとんどです。
民泊用不動産は「知っている人に相談」が最も安全な第一歩
新築や築浅のワンルームと違い、民泊・貸別荘用の物件は個体差が大きく、不動産と運営ノウハウの両方に精通した人でないと判断が難しい領域です。
経験のある専門家であれば:
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そのエリアの相場稼働率
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過去レビュー評価の変化
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実際の支出構造(清掃費が高いか、OTA依存度が高いか)
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将来的な規制リスク(条例改正など)
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「やめておいた方がいい物件」の特徴
といった情報を把握していますし、**その物件で本当に今後も収益が出るのか?**を冷静に判断したうえで、「あえて買わない」という選択肢を提示してくれることもあります。
また、物件購入前にしっかりとした**実収益シミュレーション(ネット収益ベース)**を作成してもらえると、買ってから後悔するリスクも大きく減ります。
知っている人に聞けば安心?でも無料相談には限界がある
「知り合いに民泊をやっている人がいるから相談してみよう」と考える方もいます。
確かに、運営者に直接聞くことは大きなヒントになります。
ですが、民泊は時間も手間もかかる業務。初対面の方や、物件を売る立場でない第三者が、無料で丁寧にすべて教えてくれるとは限りません。
運営経験があっても、物件の規模や立地、ターゲット層によって答えも変わってきます。
まとめ:数字よりも「中身」と「人」を見るべき時代へ
民泊・貸別荘投資は、数字上の利回りだけで判断してはいけない時代に入っています。
大切なのは、「誰がどう運営してきたか」「その運営は今後も再現できるか」そして「実際の支出と将来的なリスクを織り込んだネット収益はどうか?」というリアルな視点です。
物件選びは、「信頼できる人に相談する」ことから始めるのが、最も堅実な第一歩かもしれません。