Columnsコラム

民泊運営代行の「二次委託地獄」――責任の空洞化とサービス崩壊の現実

目次

    「運営代行」のはずが、実態は“丸投げ”構造

    民泊ビジネスの盛り上がりと共に、「民泊運営代行会社」という業態が急速に広がってきました。物件オーナーに代わり、ゲスト対応・清掃・予約管理・価格調整・レビュー返信などを一括して請け負うサービスは、確かに一定の需要を得ています。

    しかし、ここ数年で急増しているのが、その運営代行会社がさらに別の運営代行会社に業務を二次委託するケースです。一見、業務分担の合理化のように見えますが、その裏には極めて深刻な問題が潜んでいます。

    本コラムでは、二次委託による民泊運営の劣化と、責任の所在が曖昧になる危険性、さらにはオーナーとゲスト双方にとっての重大なリスクを掘り下げます。

    デメリット①:責任の所在が不明瞭になる「責任空洞化」

    最も根本的な問題は、責任の所在が極めて曖昧になることです。

    オーナーが契約するのは一次委託先の運営代行会社ですが、実際の業務を担っているのはその先の二次委託先。清掃不備、レビューへの対応の遅れなど、何か問題が発生したときに、「誰が悪いのか」が分からなくなります。

    一次委託先は「実務は外部に任せている」と言い訳し、二次委託先は「契約先は我々ではない」と責任を逃れる――**まさに“責任のたらい回し”**の構図です。

    結果として、泣きを見るのは常にオーナーです。

    デメリット②:業務品質の低下、チェックイントラブルの頻発

    二次委託先の多くは、コストを抑えるためにさらに下請けを使っている場合すらあります。メール業務は最も典型的で、マージンを多重に取られた末端の業者は、月に数万円での“やっつけ仕事”を強いられています。

    その結果、

    • 間違った回答をする

    • 翻訳機を使用したメールをする

    • チェックインの連絡ミス

    などの基本的な業務すら満足にできないケースが頻発。これがゲストの低評価レビューへ直結し、オーナーの物件の稼働率低下を招くのです。

    特にAirbnbではレビューが命。その信用が損なわれれば、収益構造が一気に崩壊します。

    デメリット③:情報の断絶、オーナーとのコミュニケーション不全

    オーナーが一次委託先に連絡しても、「今確認します」と言ったきり返答が遅い。なぜなら、その先の委託先とオーナーが直接つながっていないからです。

    現場の状況、ゲストのフィードバック、備品の破損報告など、本来オーナーが迅速に把握すべき情報が、「情報伝言ゲーム」の中で消失していきます。

    これにより、資産価値の毀損や、ゲストクレームの悪化を放置してしまうリスクが高まります

    デメリット④:マージン構造による「中抜き地獄」

    一次委託先が20%、さらに二次委託先が10%、という構造は、実質的にオーナーから搾取するモデルです。

    オーナーが得る報酬は、

    • 実務を行わない中間業者のマージンで削られ、

    • サービスの質は低下し、

    • ゲスト満足度も下がる、

    という三重苦の構造。中抜きの果てに残るのは、オーナーにとって“投資失敗”となる民泊物件です。

    デメリット⑤:違法性のリスクも?――無許可業者・無資格者の存在

    民泊には、旅館業法・住宅宿泊事業法に基づいた適正な運営が求められます。しかし、二次委託先が必ずしもこれらの法令に精通しているとは限りません。

    無許可で営業する業者や、外国人労働者を不法就労させている清掃業者が混じっているケースも散見され、法的リスクをオーナー自身が背負う可能性すらあるのです

    実際に、二次委託先の不備によって民泊が営業停止処分を受けたケースも報告されています。

    結論:委託の透明性と“一本化された責任”がない限り、民泊は崩壊する

    民泊運営は、本来はホスピタリティと責任ある管理の上に成り立つビジネスです。

    しかし現在の「二次委託構造」は、それを根本から破壊しています。

    安易な委託、責任の不透明化、業務の外注依存――こうした構造を放置すれば、民泊業界全体の信用を損ない、規制強化や業界衰退へとつながるでしょう。

    オーナーに求められるのは、「価格」や「見かけの実績」ではなく、

    • 誰が業務を行うのか

    • どこまでを誰が責任を負うのか

    • 業務の透明性と報告体制

    を明確にし、**“一気通貫で責任を持てる運営代行会社”**を見極める目を持つことです。

    安さに飛びついた先に待っているのは、「全責任を押し付けられる、名ばかりオーナー」の姿かもしれません。