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【民泊コラム】“1棟民泊”を甘く見てはいけない――管理会社なし・運営代行なしで始めた人が陥る「地獄」

目次

    「1棟借りて民泊をすれば儲かる」はもう幻想かもしれない

    近年、インバウンド需要の高まりと共に、「1棟まるごと民泊に転用しよう」と考えるオーナーや事業者が増えています。

    区分民泊よりも収益規模が大きく、建物の運用も柔軟にできる――確かに魅力はあります。

    しかし、実際にやってみてから「こんなはずじゃなかった」と頭を抱える事業者が後を絶ちません。

    特に多いのが、**「建物の管理会社が不在のまま始めてしまったケース」や、「代行会社を使わず、自分たちだけで運営しようとしたケース」**です。

    これらのパターンに共通するのが、

    **「トラブルが起きた瞬間に、逃げ場がなくなる」**という構造的な問題です。

    【前提】1棟民泊は「運営の自由度が高い」=「管理責任もすべて自分」

    区分の民泊と違い、1棟まるごと運用できる民泊では、

    • 間取り変更や改装の自由度が高い

    • 入退去やチェックインのフローが統一しやすい

    • 清掃・備品補充も一括管理できる

    • 他の住民に気を遣う必要がない

    というメリットがあります。

    しかしこの“自由”は、裏を返せば**「何か起きたときは全責任が運営者にかかってくる」**ということでもあります。

    【実話に基づく】管理会社がいない建物で、地獄を見たケース

    ある中規模不動産会社が、大阪市内の老朽化した1棟マンションを借り上げ、

    セルフ運営で民泊を始めました。

    最初の3か月は順調に予約も入り、「これはいける」と思っていた矢先に問題が発生します。

    ▶ 排水管の詰まりが起きた

    建物全体の排水管が古く、3階のゲストルームでトイレの逆流が発生。

    他の部屋にも異臭が広がり、宿泊者から一斉にクレーム。

    ところが、管理会社が不在だったため、

    **「どこに電話すればいいかわからない」「修理業者が建物の構造図を持っていない」**という状態に。

    ▶ 夜間の電気トラブルに対応できない

    深夜、共用部のブレーカーが落ちて真っ暗に。

    ゲストは恐怖で外に出て騒ぎになり、近隣住民が通報。

    対応できるスタッフは1人だけ。しかも建物構造を把握していないため、復旧に6時間かかり、宿泊キャンセルが相次ぐ。

    ▶ 廊下や階段の清掃が不十分に

    清掃スタッフは各部屋の中のみを担当。

    廊下や階段は誰の責任か曖昧なまま放置され、ゴミやホコリが溜まり、レビューに「不衛生」「怖い建物」と書かれて評価が低下

    このように、建物そのものを“管理できていない”状態で民泊を始めてしまうと、宿泊以前の問題で破綻するのです。

    民泊=“宿泊業”ではない。“不動産管理業”のスキルも必須

    民泊は、ホテルや旅館とは違い、既存の住宅を活用するスタイルです。

    とくに1棟運営では、**「宿泊施設+不動産設備管理」**の両方を同時にこなさなければいけません。

    オーナー自身が以下のようなスキルや知識を持っていない場合、現場はたちまち回らなくなります:

    • 電気・給排水・消防設備の緊急対応

    • 共用部の清掃管理・巡回

    • 鍵のトラブル時の対応(紛失・誤作動など)

    • 周辺住民との連携・対応窓口の設置

    これらを「なんとなく」やっていると、トラブル発生時にすべて自分に降りかかります。

    代行会社すら使わず、全部自分でやるのは“無謀”に近い

    「コスト削減のために自社運営でやりたい」「代行手数料がもったいない」と考える人は多いですが、

    実際には、**代行会社に払うコスト以上の“トラブルコスト”**を支払う羽目になります。

    民泊運営代行会社の中には、下記のようなサポートを行うところもあります:

    • チェックイン対応(多言語)

    • 緊急対応のスタッフ常駐

    • 建物管理会社との調整代行

    • 清掃会社・修繕業者との連携

    • レビュー管理・価格最適化・予約促進施策

    こうした**“現場力”がなければ、1棟運営は長期的に維持できません。**

    「建物の管理体制」は絶対に整えてから始めるべき

    1棟民泊を始める前に、最低限チェックすべき管理体制は以下の通りです:

    項目 確認ポイント
    建物管理者 建物オーナーまたは管理会社の連絡先は明確か?
    設備台帳 給排水・電気・ガスなどの設計図は揃っているか?
    緊急対応 夜間・祝日のトラブル時に誰が対応するのか?
    清掃範囲 共用部まで含めて清掃管理が行き届いているか?
    産廃の依頼 民泊のゴミは産業廃棄物なため手配はできるか?

    これらを整えずに始めてしまうと、表面上は“稼げそう”でも、中身は常に火だるまの状態になります。

    まとめ:1棟民泊は「運営者の覚悟」と「現場の仕組み」が全て

    「1棟借りて民泊すれば儲かる」は、確かに一時的には成功することもあります。

    しかし、建物管理と運営体制を軽視すれば、それは“持続しないビジネス”にしかなりません

    これから1棟民泊を始める人は、必ずこう問いかけてください:

    🔹 自分が“物件の管理者”として全責任を背負う覚悟があるか?

    🔹 建物トラブルの際に、即対応できる体制は整っているか?

    🔹 その物件を「安全・快適」に保つための仕組みがあるか?

    もしこの問いに自信を持って「Yes」と言えないなら、

    管理会社との連携と、実績ある代行会社への委託を真剣に検討すべきです

    1棟運営は、民泊の中でもっとも自由で、そしてもっとも難しい領域。

    始めるのは簡単でも、“続けるには覚悟と仕組み”が絶対に必要なのです。