Airbnbレビューに「隣の住民」が書かれた。私たちがレビュー削除より先に考えたこと

民泊を運営していると、レビューについてAirbnbへ問い合わせることがあります。
事実と異なる内容。
施設とは関係のない内容。
誤解を招く内容。
もちろん、低評価レビューをいただくこともあります。
ただ、今回私たちがAirbnbへ何度も確認したレビューは、少し事情が違いました。
問題にしたのは、施設の評価ではありません。
レビューの中に、
「the neighbor next door(隣の住民)」
と書かれていたことでした。
そして、その隣人について否定的な評価が公開されていました。
これを見たとき、私たちが最初に思ったのは、
「これ、近隣住民が特定される状態になっていないだろうか」
ということでした。
名前を書いていなければ、第三者を特定できないのでしょうか
今回の施設は一軒家です。
レビューには単に、
「近所の人」
と書かれていたわけではありません。
「the neighbor next door」
つまり、すぐ隣の住民です。
施設の所在地を知っている人が現地を確認すれば、誰を指しているのか分かる可能性があります。
名前は書かれていません。
住所も書かれていません。
でも、
「この施設のすぐ隣に住んでいる人」
という位置情報があります。
しかも、その人について否定的な評価が、宿泊施設の公開レビューとして掲載されている。
私たちはここに違和感を持ちました。
その近隣住民は、
Airbnbのホストではありません。
ゲストでもありません。
施設スタッフでもありません。
当然、自分について書かれたレビューに公開返信する機能もありません。
そこでAirbnbへ確認しました。
これは宿泊施設のレビューなのでしょうか。
それとも、
Airbnbとは関係のない第三者を、本人が特定され得る状態で一方的に評価していることにならないのでしょうか。
最初の回答は「専門部署が判断します」でした
Airbnbコミュニティサポートへ事情を伝えたところ、レビューの削除や評価については専門部署が審査するため、通常のサポート担当者では判断できないとの回答でした。
もちろん、それ自体は理解できます。
レビューには審査基準があります。
ホストが気に入らないからといって、簡単に削除される制度ではありません。
私たちも、
「低評価だから消してください」
と言っているわけではありませんでした。
そこで改めて質問しました。
今回聞きたいのはレビューの評価ではなく、第三者のプライバシーと安全性についてです。
施設との位置関係から特定され得る第三者について否定的な内容を公開することは、Airbnbでは認められているのか。
Airbnbユーザーではないため反論できない第三者についても、掲載を継続するのか。
本人からの申告がなければ対応しないのか。
ホストからの申告でもプライバシー上の問題として確認できるのか。
そして、必要であればプライバシーや安全性を扱う部署へエスカレーションしてほしい。
電話ではなく、記録が残るメッセージで回答を求めました。
Airbnbから一つ、重要な回答がありました
その後の回答で、
第三者を明確に特定できる情報だと専門部署が判断した場合には、削除対象となり得る
という趣旨の説明がありました。
そこで私たちはさらに、
「名前が書かれているかどうか」だけではなく、
位置関係から特定できる可能性
を見てほしいと伝えました。
一軒家であること。
「the neighbor next door」と具体的な位置関係が書かれていること。
現地では対象となる人物を判別できる可能性があること。
その人物はAirbnbユーザーではなく、自分で反論も訂正もできないこと。
そして施設側が管理できない第三者に対する評価であること。
論点を整理して、再度審査をお願いしました。
それでも、レビューは削除されませんでした
削除リクエストを提出しました。
結果は、
削除対象外。
そこで、もう一度問い合わせました。
今度は、
「レビュー全体を削除できないのであれば、少なくとも近隣住民について書かれた一文だけを削除・非表示にできないか」
という確認です。
それも簡単には進みませんでした。
ここまでなら、
「Airbnbの判断なので仕方ありません」
で終えることもできたと思います。
でも、その後に状況が変わりました。
レビューに書かれた近隣住民本人から、苦情が入りました
これで話がまったく変わりました。
レビュー公開後、
「the neighbor next door」と書かれた当の近隣住民本人から、施設の苦情窓口へ実際に連絡が入ったのです。
しかも問題にされていたのは、
宿泊客の騒音でも、
施設の運営方法でもありません。
Airbnbに公開されているレビューそのものです。
つまり、
「近隣住民が特定されるのではないか」
という私たちの懸念が、単なる想像ではなくなりました。
実際に対象となった本人がレビューを認識し、施設へ対応を求めてきたのです。
ここからは、
施設のレビュー評価を守る話ではありません。
近隣住民との関係を守る話です。
「削除できません」で終わったら、この人は誰に言えばいいのでしょう
ここで私たちはAirbnbへ、かなり具体的に確認しました。
近隣住民本人がAirbnbへ直接申し立てることはできるのか。
できるなら、その窓口はどこなのか。
できないなら、なぜなのか。
削除しないのであれば、本人にはどのような救済手段があるのか。
そして、
実際に本人から苦情が発生したという新しい事実を、再審査の材料として扱うのか。
Airbnbのレビュー制度そのものを否定したかったわけではありません。
宿泊施設やホストに対する率直な評価は、当然尊重されるべきです。
でも、
Airbnbとは直接関係のない人が書かれた場合はどうするのか。
その人にはレビューへの返信ボタンすらありません。
これは運営会社として、曖昧なまま近隣住民へ説明できませんでした。
「近隣コミュニティサポート」という窓口までたどり着きました
その後Airbnbから案内されたのが、
近隣コミュニティサポート窓口でした。
Airbnbアカウントを持っていない近隣住民でも問い合わせができる窓口です。
ただ、ここでも確認しました。
窓口のリンクを近隣住民へ渡して、
「ここから問い合わせてください」
だけでは足りないからです。
今回の問題は、よくある騒音やパーティーの苦情ではありません。
公開レビューに書かれた第三者のプライバシーに関する相談です。
本当にこの窓口で扱えるのか。
レビューを審査する専門部署へ引き継げるのか。
そこまでAirbnbへ確認しました。
そして最終的に、
近隣コミュニティサポートへ問い合わせがあり、内容を確認したうえで必要と判断された場合には、専門部署へ引き継ぐ
という回答を得ました。
ここまで来て、ようやく、
「近隣住民本人がAirbnbへ直接申し立てるルート」
を案内できる状態になりました。
なぜ、ここまでやるのか
「レビュー一件に、そこまでやるんですか?」
そう思われるかもしれません。
でも、私たちは民泊を運営しています。
そして民泊は、
地域の中で営業する宿泊事業です。
ホテルだけが建っている島で営業しているわけではありません。
隣には普通に暮らしている方がいます。
朝仕事へ行く人がいて、
子どもを育てている家庭があって、
昔からその地域に住んでいる方がいます。
その人たちは、
Airbnbに物件を掲載したわけでも、
世界中の宿泊客に自分を評価してほしいと頼んだわけでもありません。
だからこそ、
私たちは今回の件を
「低評価レビューをどうするか」
ではなく、
「民泊と関係のない近隣住民をどう守るか」
という問題として扱いました。
民泊運営で本当に怖いのは、レビュー★1だけではありません
運営会社としてレビュー評価はもちろん大切です。
でも、
★4.9を★4.8にしないことだけが管理会社の仕事ではありません。
近隣住民との関係。
行政との関係。
清掃会社との関係。
管理組合との関係。
そしてオーナー様との関係。
宿泊施設は、いろいろな人との関係の上で営業しています。
一つのレビューを残すために近隣との関係が壊れてしまったら、
運営としては、その方がずっと大きな問題です。
「レビュー削除できませんでした」で仕事を終わらせない
今回、レビュー削除についてはAirbnb側の判断がありました。
私たちが自由に変えられるものではありません。
でも、
そこで仕事を終わらせるかどうかは別です。
なぜ削除対象ではないのか。
第三者のプライバシーとして審査できないのか。
一文だけ非表示にできないのか。
本人から申し立てることはできないのか。
できるなら、どの窓口なのか。
その窓口から専門部署へ引き継げるのか。
一つずつ確認しました。
途中、担当者も何度か変わりました。
正直、
レビュー一文について、こんなにAirbnbと話すことになるとは思っていませんでした(笑)。
それでも確認を続けたのは、
こちらには近隣住民へ説明する責任があると考えたからです。
良い民泊運営会社は、ゲストだけを見ていません
民泊運営会社というと、
予約管理。
価格調整。
ゲストメッセージ。
清掃手配。
チェックイン案内。
そんな仕事をイメージされることが多いと思います。
もちろん、それも仕事です。
でも実際の現場では、
施設の外側で起きる問題
にも対応します。
近隣から連絡が入れば内容を確認する。
必要ならゲストへ注意する。
OTAへ記録を残す。
レビューに第三者が書かれれば規約を確認する。
必要な部署へのエスカレーションを求める。
そして、近隣住民へ説明できるところまで情報を取りにいく。
予約を取るだけなら、管理画面の中で仕事はできます。
でも、
宿泊施設を長く運営するには、管理画面の外にいる人たちも見なければいけません。
オーナー様の物件を守ることは、近隣との関係を守ることでもあります
民泊や貸別荘は、
オープンしたら終わりではありません。
むしろ、そこから何年も営業していきます。
その間ずっと、
同じ地域で営業します。
だから私たちは、
ゲスト満足度だけではなく、
「この施設が地域の中で長く営業していけるか」
を考えます。
今回、Airbnbとのやり取りにはかなり時間がかかりました。
レビューも、こちらの希望どおり簡単に削除されたわけではありません。
だからこれは、
「Airbnbと交渉してレビューを消しました」
という成功談ではありません。
むしろ、
一件のレビューで近隣住民との関係を壊さないために、運営会社としてどこまで確認するのか。
その記録です。
民泊は、建物だけを管理する仕事ではありません
私たちが管理しているのは、
鍵や家具や予約カレンダーだけではありません。
その施設が地域の中で、
明日も、
来月も、
来年も、
宿泊施設として営業を続けられる環境まで含めて考えています。
ゲストを大切にする。
オーナー様を大切にする。
そして、
近隣で普通に生活している方も大切にする。
どれか一つだけでは、長く続く民泊にはなりません。
華やかなヴィラの写真には、
隣に暮らしている人は写りません。
でも実際の運営では、
写真に写っていない人たちとの関係ほど、大切だったりします。
これも、民泊運営の仕事です。
このコラムについて
本コラムは、民泊運営歴10年以上・宅地建物取引士資格を持つ管理部長・柳瀬が、実際の運営現場で経験した事例をもとに執筆しています。
Airbnb・Booking.com等のOTA運用、価格調整や稼働率改善だけではなく、住民・ゲスト・管理組合との調整、行政対応、是正指導、設備トラブル、OTAとの仲裁、そして思うようにいかなかった運営や撤退判断まで、宿泊施設を継続して運営するための実務に携わってきました。
また、宅地建物取引士として、民泊不動産・中古ヴィラ・貸別荘の購入前確認、収支、物件選び、許認可、開業準備、運営、収益改善、将来の売却まで、不動産と宿泊事業を切り離さず考えることを大切にしています。
民泊・貸別荘の運営では、売上や稼働率だけでは見えない仕事がたくさんあります。
「現在の運営会社は、近隣トラブルまで対応してくれるのだろうか」
「OTAとのトラブルが起きたとき、誰が交渉してくれるのか」
「購入を検討している物件で、近隣との関係まで考えておきたい」
「今の運営会社から切り替えたい」
「開業後も長く任せられる会社に相談したい」
そんなご相談もお受けしています。
「買ってから困る」のではなく、
「あのとき、きちんと確認しておいてよかった」と思える判断を。
PROGRESS WORKSは、民泊・貸別荘・ヴィラの不動産と運営、その両方の視点からお手伝いしています。


