民泊物件の収支表、本当に信用して大丈夫?購入前に確認したい「数字の違和感」

最近、民泊や貸別荘の物件購入についてご相談をいただく中で
気になるケースが増えています。
「購入前に聞いていた収支になりません」
「かなり高い売上実績がある物件だと説明されました」
「過去の運営実績を見て、これなら大丈夫だと思って購入しました」
そして中には、
「もう購入してしまったのですが、この収支表を見てもらえませんか」
というご相談もあります。
私たちは、こうしたご相談を受けた際、まず収支表を確認します。
すると、ときどきあります。
数字はとてもきれいなのに、見れば見るほど少し不思議な収支表が。
年間売上も高い。
利益率も良い。
ADRも高い。
清掃費も安い。
自社予約もたくさん入っている。
一見すると、とても優秀な物件です。
ただ、実際の運営を知っている立場から見ると、
「この数字、どうやってつくられたのでしょう?」
と確認したくなることがあります。
民泊物件を購入するときに大切なのは、収支表に書かれている数字をそのまま読むことではありません。
数字同士が、本当に辻褄が合っているかを見ることです。
まず気になるのが「清掃費、安すぎませんか?」
民泊・貸別荘の収支表で、私たちがかなり注意して見る項目の一つが清掃費です。
たとえば、大人数で宿泊できる一棟貸しのヴィラ。
寝室も複数ある。
浴室もある。
キッチンもある。
リネン交換も必要。
それなのに年間の清掃費を見ると、驚くほど少ない。
そんな収支表を見ることがあります。
もちろん、清掃料金は地域や施設規模、契約条件によって異なります。
自社清掃をしているケースもあります。
ただ、それを考慮しても、
「この規模の施設を、この金額で年間これだけ清掃できますか?」
と思う数字があります。
ここで大切なのは、単純に「清掃費が安いから怪しい」と判断することではありません。
何回清掃したのか。
1回あたりいくらなのか。
リネン費は別なのか。
消耗品補充はどこに計上されているのか。
清掃スタッフの人件費を別項目にしているのか。
一つずつ確認します。
そうすると、ときどき、
清掃費が安いのではなく、収支表に十分入っていないだけ
というケースが見えてきます。
清掃費を少なく見せれば、当然利益は大きくなります。
でも物件を購入した後、実際に清掃会社へ見積もりを取れば、現実の金額が出てきます。
Excelの中だけ清掃スタッフが格安で働いてくれる、ということは残念ながらありません(笑)。
「自社予約が多いですね」は、かなり確認します
もう一つ、私たちがよく確認するのが予約経路です。
Airbnb。
Booking.com。
楽天トラベル。
Expedia。
その他のOTA。
そして、自社予約。
収支表の中に、
「自社予約」
がかなり多く計上されているケースがあります。
自社予約自体は、もちろん悪いことではありません。
むしろ自社サイトやリピーターから直接予約を獲得できるのは、運営として非常に強いことです。
OTA手数料を抑えられるメリットもあります。
ただし、自社予約が売上のかなり大きな割合を占めている場合、私たちは必ず確認します。
「この自社予約は、どこから来たのでしょうか?」
ホームページなのか。
リピーターなのか。
既存顧客なのか。
広告から獲得したのか。
SNSなのか。
運営会社独自の顧客網なのか。
そして何より、
物件を購入したあと、新しい所有者も同じ自社予約を引き継げるのでしょうか。
ここが重要です。
前の運営会社が持っていた顧客を使って売上をつくっていたのであれば、物件を買ったからといって、その予約経路まで自動的についてくるとは限りません。
不動産には土地と建物は付いてきます。
ただ、常連のお客様まで所有権移転登記されるわけではありません(笑)。
「自社予約なのに、このADR?」と感じることがあります
さらに、自社予約の数字を見ていると、もう一つ気になることがあります。
それがADRです。
ADRとは、簡単に言えば平均宿泊単価です。
たとえば収支表には、
平均宿泊単価4万円
と書かれている。
自社予約もかなり多い。
ところが、その施設を実際にOTAで確認すると、
平日に1泊2万円前後で販売されている。
そうなると、少し考えます。
もちろん、繁忙期には高く販売されているかもしれません。
週末は4万円、5万円になることもあるでしょう。
大型連休ならさらに上がる可能性もあります。
ですからOTA上で2万円の日があるだけで、ADR4万円がおかしいとは言えません。
ただし、年間を通した販売価格を見ても2万円台の日が多い。
それなのにADRだけがかなり高い。
しかも自社予約比率も高い。
そうなると、
「このADRは、どの予約データから計算されたのでしょうか?」
と確認したくなります。
さらに気になるのが、自社予約の価格です。
一般的に、自社予約ではOTA手数料がかからない分、OTAより少しお得な料金、いわゆるベストレートを設定している施設も多くあります。
それなのに、
OTAでは2万円前後。
自社予約が大量に入っている。
それでも全体ADRはかなり高い。
となると、
「自社予約のお客様だけ、OTAよりずいぶん高い料金で泊まっていただいていたのでしょうか?」
という、少し不思議な状態になります。
数字は一つずつ見ると成立していても、横に並べた瞬間に違和感が出ることがあるのです。
売上実績があるなら、予約データまで確認したい
中古の民泊・貸別荘では、
「年間売上1,500万円」
「高稼働実績あり」
「営業中物件」
といった情報が出てくることがあります。
実績があること自体は、とても良い材料です。
むしろ新築の想定収支より、実際の運営データがある方が分析できることは増えます。
ただし私たちなら、売上金額だけではなく、
どの月に売れたのか。
何泊売れたのか。
各予約はいくらだったのか。
OTA別の売上はいくらなのか。
自社予約はいくらなのか。
キャンセルをどう扱っているのか。
清掃費をゲストからいくら受け取っているのか。
実際にOTAからいくら入金されているのか。
こうしたところまで、できる範囲で確認します。
年間売上だけなら、一つの数字です。
でも予約明細まで見ると、その数字がどうつくられたのかが見えてきます。
私たちが確認したいのは、
「1,500万円売れたと書いてありますね」ではなく、「この1,500万円を、来年も再現できそうですか?」
ということです。
「売上」と「入金額」と「利益」も分けて考えます
収支表によっては、売上の定義そのものも確認が必要です。
ゲストが支払った総額なのか。
清掃費込みなのか。
宿泊料金だけなのか。
OTA手数料を引く前なのか。
引いた後なのか。
消費税をどう扱っているのか。
収支表によって計上方法は異なります。
そのため、年間売上1,500万円という数字が二つの物件に書かれていても、同じ意味とは限りません。
さらにそこから、
OTA手数料。
清掃費。
リネン費。
光熱費。
消耗品。
運営代行費。
通信費。
修繕費。
保険。
税金。
設備維持費。
などを差し引いて、ようやく実際の収益が見えてきます。
売上が大きいことと、投資として優秀であることは別です。
私たちは収支表を見るとき、数字の大きさよりも、何を含んでいて、何を含んでいないのかをかなり気にします。
収支表は「間違い探し」ではありません
ここまで書くと、
「では、売主から出てくる収支表は疑って見た方がいいのでしょうか」
と思われるかもしれません。
私たちは、最初から疑う必要はないと思っています。
収支表の作り方にも違いがありますし、運営会社によって経費の計上方法も違います。
特殊な法人契約がある施設もあれば、強いリピーターを抱えている施設もあります。
本当に通常より安い清掃契約を持っているケースだってあります。
大切なのは、
違和感があったときに、その根拠を確認できることです。
清掃費が安い。
では、なぜ安いのか。
自社予約が多い。
では、どこから予約が来ているのか。
ADRが高い。
では、実際の予約単価はどうなっているのか。
利回りが高い。
では、何の費用が含まれているのか。
数字そのものを疑うというより、数字のつながりを見る。
これが購入前の収支確認では非常に重要だと思っています。
私たちの不動産担当が見るのも、まさにこの「違和感」です
PROGRESS WORKSでは、民泊・貸別荘の運営だけでなく、不動産の物件選定や購入についてもご相談をいただいています。
その際、不動産担当が収支表を見るときも、単純に利回りを計算して終わりではありません。
むしろ、
「この清掃費、実際にこの金額でできますか?」
「自社予約がかなり多いですが、購入後も引き継げますか?」
「OTAの販売価格と、このADRはどうつながっていますか?」
「この稼働率は、どの期間の実績ですか?」
「この利益に修繕費は入っていますか?」
そんなところを一つずつ見ていきます。
数字を見ているようで、実際にはその物件がどんな運営をされてきたのかを見ています。
長く民泊不動産と宿泊運営の両方に携わっていると、収支表の中に少し不自然な数字があるだけで、確認したいことが次々に出てきます。
これは、不動産だけを見ていても、宿泊運営だけを見ていても分かりにくい部分です。
良い物件を探す以上に、数字の違和感を見逃さない
民泊不動産を購入するとき、どうしても良い材料に目が向きます。
高い売上。
高稼働。
高利回り。
民泊実績あり。
どれも魅力的な言葉です。
でも、数千万円単位の投資だからこそ、
「すごい数字ですね」で終わらせないこと。
その数字はどうつくられたのか。
実際の予約データと合っているのか。
経費は現実的なのか。
新しい所有者になっても再現できるのか。
ここまで確認してから判断しても、決して遅くありません。
むしろ購入前だからこそ確認できます。
購入後に収支表を見直して、
「この自社予約、一体どなたのお客様だったのでしょう」
となってからでは、選択肢がかなり少なくなります。
「この収支表、どう思いますか?」の段階で構いません
PROGRESS WORKSでは、民泊・貸別荘の物件探しや購入前の段階から、実際の運営を想定して物件を見ています。
すでに気になる物件がある。
売主や仲介会社から収支表を受け取っている。
高い利回りを提示されている。
過去の民泊実績を説明されている。
そのような段階でも構いません。
「この収支表、どう思いますか?」
そこからで十分です。
良い数字であれば、それは購入判断の心強い材料になります。
一方で、清掃費、ADR、自社予約、稼働率などを照らし合わせて違和感があるなら、購入前に確認しておく価値があります。
民泊不動産は、数字が並んでいれば安心というものではありません。
大切なのは、
その数字が、実際の宿泊事業として成立しているか。
そして、
購入したあと、自分たちでも再現できる数字なのか。
私たちは、物件の良いところだけでなく、収支表の小さな違和感まで含めて確認したうえで、納得できる購入判断につなげていただきたいと考えています。
このコラムについて
本コラムは、民泊運営歴10年以上・宅地建物取引士資格を持つ管理部長・柳瀬が、これまでの実務経験をもとに執筆しています。
Airbnb・Booking.com等のOTA運用、価格調整や稼働率改善、住民・ゲスト・管理組合との調整、行政対応、是正指導、そして思うようにいかなかった運営や撤退判断まで。
現場責任者として、順調なときだけではなく、難しい場面にも数多く向き合ってきました。
また、宅地建物取引士として、民泊不動産・中古ヴィラ・貸別荘の購入前確認、収支の見方、物件選び、将来の運営を見据えた不動産判断についても、実務の視点からお伝えしています。
このコラムで大切にしているのは、きれいな成功談や理想論だけを並べることではありません。
実際の現場では何が起きるのか。
どこで判断を誤りやすいのか。
購入前に何を確認しておくべきなのか。
その数字は、本当に現実の運営につながっているのか。
そうした、少し見えにくい部分まで丁寧にお伝えしたいと考えています。
民泊や貸別荘は、物件を購入して終わる事業ではありません。
物件を選び、許認可を確認し、宿泊施設として整え、販売し、日々運営していく。
その先には、収益改善や再投資、そして売却という選択肢もあります。
だからこそ、不動産と運営は、切り離して考えない方がいい。
これは、長く現場に携わってきた中で強く感じていることの一つです。
コラムを読んで、
「今の運営、このままで大丈夫だろうか」
「一度、第三者の意見を聞いてみたい」
「これから民泊や貸別荘を始めたいが、何から考えればいいのか分からない」
「購入を検討している民泊物件や中古ヴィラを、一度見てほしい」
「提示された収支表や想定利回りが現実的なのか確認したい」
「購入する前に、運営まで含めて相談しておきたい」
そんなふうに感じられた方は、どうぞお気軽にご相談ください。
まだ物件を購入していない段階でも、もちろん構いません。
むしろ、購入前だからこそ確認できることがあります。
購入前だからこそ、選べることがあります。
物件選び、収支、許認可、開業準備、運営、収益改善、そして将来の売却まで。
一つひとつを急がず整理しながら、これまでの実務経験と不動産の専門知識をもとに、その方にとって無理のない方向を一緒に考えていきます。
「買ってから困る」のではなく、
「あのとき、きちんと確認しておいてよかった」と思える判断を。
PROGRESS WORKSは、民泊・貸別荘・ヴィラの不動産と運営、その両方の視点からお手伝いしています。


