民泊投資は「ADR」と「稼働率」、どちらが重要?満室なのに儲からない宿をつくらないために

民泊や貸別荘、ヴィラへの投資を検討されている方とお話ししていると、
「このエリアのADRはどれくらいですか?」
「稼働率は何%くらい見込めますか?」
という質問をよくいただきます。
最近では、物件の販売資料や事業計画書にも「ADR」「稼働率」といった数字が普通に書かれるようになりました。
ただ、初めて宿泊事業をされる方にとっては、
「ADRって、そもそも何ですか?」
というところからだと思います。
大丈夫です。
不動産を買うのに、最初からホテル用語まで知っている必要はありません(笑)。
今回は、民泊・貸別荘投資でよく出てくる
「ADR」「稼働率」「RevPAR」
という3つの数字について、できるだけ分かりやすくお話ししたいと思います。
そして最初に結論を申し上げると、
ADRと稼働率は、どちらか一方だけを見てもあまり意味がありません。
なぜなら、
よく売れていても儲からない宿もあれば、高く売れていても儲からない宿もあるからです。
まず「ADR」って何?
ADRとは、
Average Daily Rate(アベレージ・デイリー・レート)
の略です。
……と言われても、余計に分かりませんね(笑)。
簡単に言えば、
「実際に予約が入った日の、平均宿泊単価」
です。
例えば、あるヴィラが10泊売れて、宿泊売上が合計50万円だったとします。
50万円 ÷ 10泊 = 5万円。
この場合、
ADRは50,000円
です。
つまり、
「この宿は、実際に予約された日は平均5万円くらいで売れているんだな」
と考えていただければ大丈夫です。
「1泊10万円のヴィラ」には少し注意
ヴィラの販売資料などで、
「1泊10万円の高級ヴィラ」
と書かれていることがあります。
もちろん、本当に10万円前後で売れている施設もあります。
ただ、私たち運営会社が確認したいのは、
「10万円で掲載されている」のか、
「10万円で実際に予約されている」のか。
ここです。
OTA、つまりAirbnbやBooking.comなどの予約サイトを開いて、10万円という価格を設定すること自体はできます。
20万円でも設定できます。
100万円でも、おそらく設定自体はできます。
設定価格は、売上実績ではありません。
不動産投資として見るなら、
「いくらで出しているか」より、
「実際にいくらで売れたのか」
を見る必要があります。
では「稼働率」とは?
こちらは比較的イメージしやすいと思います。
稼働率とは、
「販売できる日のうち、実際に何%予約が入ったか」
を見る数字です。
例えば年間365日販売できる施設で、約292泊予約が入れば、
稼働率は約80%です。
ざっくり言えば、
365日のうち、どれくらいカレンダーが埋まったか。
そう考えると分かりやすいでしょう。
では、
稼働率80%のヴィラ。
どうでしょう。
かなり良さそうに見えませんか?
ここに、ちょっとした落とし穴があります。
稼働率80%と50%。どちらが儲かる?
2つの宿があるとします。
Aの宿
平均宿泊単価(ADR):20,000円
稼働率:80%
年間では約292泊売れます。
20,000円 × 292泊なので、
年間宿泊売上は約584万円。
Bの宿
平均宿泊単価(ADR):40,000円
稼働率:50%
年間では約183泊。
40,000円 × 183泊なので、
年間宿泊売上は約732万円。
さて、どちらがよく売れているでしょう。
稼働率ならAです。
80%も埋まっています。
でも、
宿泊売上はBの方が約148万円多い。
これが、
「稼働率が高い=売上が高い」ではない
ということです。
カレンダーはAの方がきれいに埋まっています。
でも、残念ながら銀行口座はカレンダーの埋まり具合を褒めてくれません(笑)。
投資ですから、最終的には数字を見る必要があります。
じゃあADRを高くすればいい?
ここで、
「なるほど。じゃあ宿泊料金を高くすればいいんですね」
となるのですが、
そう簡単でもありません。
例えば、
ADR 80,000円。
かなり高単価です。
でも年間50泊しか予約されなければ、
年間宿泊売上は400万円です。
一方、
ADR 45,000円で年間180泊売れれば、
年間宿泊売上は810万円。
倍以上違います。
つまり宿泊事業では、
「高く売る力」と「きちんと予約を取る力」の両方が必要
ということです。
高すぎれば売れない。
安すぎれば売れても利益が残らない。
このちょうどいいところを探し続けるのが、私たち運営会社の価格調整の仕事でもあります。
そこで登場する「RevPAR」
また横文字が出てきました。
もう少しだけお付き合いください(笑)。
**RevPAR(レブパー)**とは、
Revenue Per Available Roomの略で、
簡単に言うと、
「販売できる1日あたり、平均いくらの宿泊売上をつくれているか」
を見る数字です。
計算はそれほど難しくありません。
ADR × 稼働率
です。
例えば、
ADR 50,000円 × 稼働率40%
なら、RevPARは20,000円。
一方、
ADR 35,000円 × 稼働率70%
なら、RevPARは24,500円。
最初の施設は、宿泊単価だけなら50,000円で上です。
二つ目は35,000円。
でも、実際にどれだけ販売できているかまで含めると、
二つ目の施設の方が、販売可能な1日あたりの売上が高い。
これを比較しやすくしてくれるのがRevPARです。
ですから投資家の方には、
「ADRと稼働率、どちらを見るべきですか?」
ではなく、
「その2つを掛け合わせた結果はどうなっていますか?」
まで見ていただきたいと思います。
ただし、RevPARが高ければ儲かるわけでもありません
ここで終われば簡単なのですが、宿泊事業はもう一段あります。
RevPARが教えてくれるのは、基本的に売上側の効率です。
オーナー様が最終的に知りたいのは、
「で、いくら残るんですか?」
ではないでしょうか。
私ならそこが一番気になります(笑)。
例えば同じ30泊でも、
2泊×15組で30泊。
5泊×6組で30泊。
15泊×2組で30泊。
宿泊日数は全部同じです。
でも、運営コストは同じではありません。
なぜなら、ゲストが入れ替わるたびに清掃が必要だからです。
2泊×15組なら、チェックアウトは15回。
15泊×2組なら、2回。
清掃費。
リネン費。
消耗品。
ゲスト対応。
設備の使用頻度。
同じADR、同じ稼働率でも、
予約の入り方によって利益は変わります。
「満室です!」を目標にしてはいけない
民泊を始めたばかりの頃は、
予約カレンダーに空白があると不安になります。
「ここ空いていますよね?」
「値段を下げた方がいいんじゃないですか?」
お気持ちはよく分かります。
空室は売上ゼロですから。
でも、
1泊50,000円で売れる可能性がある日を、
空室が怖いから20,000円で販売する。
それを繰り返して、
稼働率95%達成!
となったとしても、
本当に良い運営でしょうか。
民泊運営は、
カレンダーを全部色付きにするゲームではありません。
目的は満室ではなく、
オーナー様の利益をきちんと残すこと
です。
稼働率100%を見たら、私は別のことも考えます
「年間ほぼ100%稼働しています」
素晴らしい数字です。
ただ、運営側としてはもう一つ考えます。
「もしかして、安く売りすぎていない?」
需要に対して価格が安ければ、当然予約は入りやすくなります。
例えば、周辺では50,000円でも予約される日に、
30,000円で販売していたらどうでしょう。
満室にはなるかもしれません。
でも、
20,000円×予約日数分の売上機会を逃している可能性があります。
だから、
高稼働率=価格設定が上手
とも限りません。
ここが宿泊施設の価格設定のおもしろくて難しいところです。
物件購入時の「想定稼働率70%」をそのまま信じない
ここからは、民泊・ヴィラを購入しようとしている方に特に読んでいただきたいところです。
物件の収支シミュレーションに、
「想定稼働率70%」
と書かれていたとします。
70%。
なんとなく良さそうですよね。
でも私は、
「その70%、何円で売ったときの70%ですか?」
と聞きます。
ここが非常に重要です。
例えば、
1泊30,000円なら稼働率70%になるかもしれない。
1泊50,000円なら55%かもしれない。
1泊70,000円なら35%かもしれない。
宿泊料金が変われば、予約の入り方も変わります。
つまり、
ADRと稼働率は別々に作れる数字ではありません。
「良いADR」と「良い稼働率」を別々の施設から持ってきていませんか?
これは収支表を見るときに、かなり注意しているポイントです。
例えば周辺に、
高級ヴィラA
ADR 80,000円・稼働率40%
リーズナブルな貸別荘B
ADR 35,000円・稼働率75%
があったとします。
ここから、
「周辺ではADR80,000円の実績があります」
「周辺では稼働率75%の実績があります」
として、
ADR80,000円 × 稼働率75%
で収支を作ったらどうでしょう。
どちらも周辺の実績ではあります。
でも、
その組み合わせで営業している施設はありません。
高いADRはAから。
高い稼働率はBから。
良い数字だけ仲良く合流しています(笑)。
こうすると、
現実には存在しない、とても優秀なヴィラがExcelの中に完成します。
物件購入前の収支を見るときは、
数字一つ一つが正しいかだけではなく、
その数字同士に整合性があるか
を見る必要があります。
投資家なら「ADR・稼働率・RevPAR」のその先を見る
私たちが民泊・貸別荘の収支を見るときは、
ADR。
稼働率。
RevPAR。
だけでは終わりません。
平均宿泊日数。
清掃回数。
OTA手数料。
清掃費。
リネン費。
消耗品費。
運営管理費。
季節による需要変動。
平日と週末の価格差。
繁忙期と閑散期。
競合施設。
最大宿泊人数。
そして、設備の維持費。
例えばヴィラなら、
サウナ。
プール。
露天風呂。
BBQ設備。
庭。
魅力的な設備ほど、維持費や修繕費も考えておかなければなりません。
だから、
年間売上1,000万円のヴィラ
という数字だけを見ても、
私たちはまだ「良い投資ですね」とは言いません。
売上1,000万円。
経費600万円。
残り400万円。
売上1,000万円。
経費300万円。
残り700万円。
同じ「年間売上1,000万円」でも、
投資としてはまったく違います。
結局、ADRと稼働率はどちらが重要?
ここまで読んでいただくと、答えはもうお分かりだと思います。
どちらも重要です。
ただし、
どちらも単独では判断しない。
これが私たちの考え方です。
ADRを見る。
稼働率を見る。
RevPARを見る。
運営コストを見る。
そして最後に、
オーナー様の手元にいくら残るのかを見る。
投資ですから、最終的にはここです。
ですから、購入を検討している民泊物件や中古ヴィラの資料に、
「想定稼働率70%」
と書かれていたら、ぜひ聞いてみてください。
「そのときのADRはいくらですか?」
そして、もう一つ。
「全部の経費を引いたら、年間いくら残りますか?」
ここまで説明してもらえると、物件の見え方はかなり変わると思います。
民泊・ヴィラ投資では、
よく埋まる宿を買うことが目的ではありません。
高く売れる宿を買うことだけが目的でもありません。
目指したいのは、
適正な価格で、適正に予約が入り、きちんと利益が残る宿。
私は、それが一番健全な宿泊事業だと思っています。
このコラムについて
本コラムは、民泊運営歴10年以上・宅地建物取引士資格を持つ管理部長・柳瀬が、これまでの実務経験をもとに執筆しています。
Airbnb・Booking.com等のOTA運用、価格調整や稼働率改善、住民・ゲスト・管理組合との調整、行政対応、是正指導、そして思うようにいかなかった運営や撤退判断まで。現場責任者として、順調な施設だけではなく、収益改善が必要な施設にも向き合ってきました。
また、宅地建物取引士として、民泊不動産・中古ヴィラ・貸別荘の購入前確認、収支、物件選び、許認可、開業準備、運営、収益改善、将来の売却まで、不動産と宿泊事業の両方から考えることを大切にしています。
私たちが大切にしているのは、不動産と運営は切り離さず考えることです。
物件価格だけを見るのではなく、
いくらで売れるのか。
どれくらい予約が入るのか。
運営にいくらかかるのか。
そして、最終的にいくら残るのか。
物件を購入する前だからこそ確認できることがあります。
「購入を検討しているヴィラの収支が妥当か見てほしい」
「提示されたADRや稼働率に無理がないか確認したい」
「民泊可能な物件を探している」
「中古ヴィラを購入して貸別荘として運営したい」
「購入前から運営まで分かる会社に相談したい」
そんなご相談もお受けしています。
「買ってから困る」のではなく、
「あのとき、きちんと確認しておいてよかった」と思える判断を。
PROGRESS WORKSは、民泊・貸別荘・ヴィラの不動産と運営、その両方の視点からお手伝いしています。


