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Columnsコラム

「謝れ。それがサービス業ちゃいますか?」民泊運営で考える、クレームとカスタマーハラスメントの境界

目次

    民泊を10年以上運営していると、本当にいろいろなメッセージが届きます。

    「Wi-Fiがつながりません」

    「鍵が開きません」

    「チェックイン時間を早められませんか」

    このあたりは、日常的なお問い合わせです。

    設備の不具合もありますし、清掃についてご指摘をいただくこともあります。

    こちらに不備があれば、当然謝罪します。

    必要であれば現地スタッフを手配し、改善できることは改善します。

    厳しいご意見をいただくこと自体も、宿泊施設を運営していれば珍しいことではありません。

    そんな私たちでも先日、メッセージを見ながら少し手が止まる出来事がありました。

    ゲストから届いたのは、

    「AIか?」

    「謝れ」

    「とりあえず謝罪しなさい」

    「それがサービス業ちゃいますか」

    という趣旨の言葉でした。

    なかなか強めです(笑)。

    ただ、今回考えさせられたのは、言葉の強さだけではありません。

    サービス業であれば、どのような言い方をされても受け入れなければならないのか。

    そして、

    会社はゲストを大切にするのと同じように、対応するスタッフを守らなくていいのか。

    今回は、民泊運営の現場で起きた実際のやり取りから、クレーム対応とカスタマーハラスメントについて考えてみたいと思います。

    発端は、予約サイトの「リクエスト認証済み」という表示でした

    今回のきっかけは、大きなトラブルではありません。

    ゲストから、

    「リクエスト認証済みとはどういう意味ですか?」

    というお問い合わせがありました。

    確認すると、この表示は私たち施設側が送信したものではありませんでした。

    利用されている予約サイト側のシステムが、ゲストからのリクエストに対して自動で返信・表示しているものです。

    施設側では、

    どのような文章が表示されるのか。

    いつ表示されるのか。

    その内容を変更できるのか。

    こうしたことを事前に把握したり、操作したりすることができません。

    そのため、

    「予約サイト側による自動返信・自動表示であり、施設側から送信したものではありません」

    とご説明しました。

    すると、

    「AIか?」

    「謝れ」

    「とりあえず謝罪しなさい」

    「それがサービス業ちゃいますか」

    という趣旨のお返事がありました。

    予約サイトが自動で表示した文章について、施設側が説明した結果、

    なぜかこちらが「とりあえず謝る」というところまで話が進んでいました。

    ……いや、ちょっと待ってください(笑)。

    もちろん、こちらに非があれば謝ります

    ここは最初にはっきりさせておきたいと思います。

    私たちは、

    「お客様に謝りたくない」

    と言っているわけではありません。

    清掃に不備があった。

    案内を間違えていた。

    設備が正常に使えなかった。

    スタッフの対応が適切ではなかった。

    こちらからの連絡が遅れた。

    それなら、きちんと謝罪します。

    必要であれば返金についても検討しますし、再発防止も考えます。

    サービス業として当然のことです。

    でも今回の表示は、

    施設が作ったものでも、

    施設が送信したものでも、

    施設側で変更できるものでもありませんでした。

    その事情をご説明したうえで、

    「とりあえず謝れ」

    となると、少し話が違います。

    謝罪は、クレームを終了させるために押すボタンではありません。

    とりあえず押しとこか、ではないんです(笑)。

    何が起きたのかを確認して、

    こちらに問題があれば謝る。

    まずはそこだと思っています。

    「謝罪してください」と「謝れ」は、同じではありません

    例えば、

    「今回の対応で不快な思いをしました。説明と謝罪をお願いします」

    と言われたとします。

    私たちは内容を確認します。

    こちらに問題があれば、当然謝罪します。

    ゲストが不満を伝えること自体は、カスタマーハラスメントではありません。

    厳しい意見だからカスハラ、ということでもありません。

    一方で、

    「謝れ」

    「謝罪しなさい」

    と命令する。

    要求している内容が同じ「謝罪」であっても、

    その要求をどのような言葉や態度で伝えるかによって、話は変わります。

    厚生労働省も、顧客等からの苦情すべてをカスタマーハラスメントとしているわけではありません。

    一方で、要求内容の妥当性だけではなく、その言動や手段が社会通念上相当な範囲を超えていないか、そして従業員の就業環境を害していないかという視点が重要になります。

    つまり、

    「何を要求したか」と同じくらい、「どう要求したか」も大切

    ということです。

    「それがサービス業ちゃいますか」と言われて考えたこと

    今回、一番印象に残った言葉です。

    「それがサービス業ちゃいますか」

    そうですね。

    私たちはサービス業です。

    だからゲストには丁寧に対応します。

    困っていればできる限りお手伝いします。

    こちらに不備があれば謝ります。

    せっかくの旅行ですから、気持ちよく過ごしていただきたいと思っています。

    でも、

    サービス業であることと、どのような言動でも受け入れなければならないことは別です。

    スタッフにも人格があります。

    毎日、多くのゲストからメッセージが届きます。

    日本語だけではありません。

    英語、中国語、韓国語など、さまざまな言語で対応します。

    設備トラブルもあります。

    OTAとの交渉もあります。

    近隣対応もあります。

    そのスタッフに、

    「お客様が怒っているから、とりあえず謝っておいて」

    を繰り返す。

    私は、それが良いサービスだとは思っていません。

    そもそも“とりあえず謝罪担当”として採用していませんので(笑)。

    会社には、ゲストだけでなくスタッフを守る責任があります

    ここは今回、特に書いておきたいところです。

    2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策が事業主に義務付けられます。

    会社として方針を明確にする。

    相談できる体制を整える。

    適切に対応できる仕組みをつくる。

    そして、カスタマーハラスメントから従業員の就業環境を守る。

    「お客様から言われたことだから仕方がない」と、スタッフ一人に抱え込ませるのではなく、会社として対応することが求められる時代になっています。

    宿泊業も例外ではありません。

    スタッフが、

    「この人、ちょっと怖いな」

    と思いながら一人で返信を続ける。

    管理者がそれを見て、

    「お客様やし、まあ我慢して」

    で終わらせる。

    それではいけません。

    管理者へ相談する。

    担当を交代する。

    これまでのメッセージを確認する。

    記録を残す。

    必要であればOTAへ相談する。

    ゲストを守るのと同じように、スタッフも会社が守る。

    これは、これからの宿泊運営では当たり前になっていくと思っています。

    そして、OTA側も動き始めています

    もう一つ、民泊業界で変わってきていると感じることがあります。

    OTA側にも、ホストや施設側の安全を守るための仕組みがあります。

    例えばAirbnbでは、不適切だと感じるメッセージを報告する仕組みがあります。

    また、すでに確定している予約であっても、ゲストがハウスルールに違反する意図を示している場合など、一定の事情ではキャンセルについてサポートへ相談できることが案内されています。個別の状況によっては、通常のホストキャンセルに伴う影響が免除される場合もあります。

    もちろん、

    「言い方が気に入らないからキャンセルします」

    ではありません。

    そんな制度なら、今度はホスト側がやりたい放題です(笑)。

    そこは当然、違います。

    実際のメッセージ。

    これまでの経緯。

    安全上の懸念。

    ハウスルール違反の可能性。

    それぞれのOTAの規約。

    こうしたものをもとに、個別に判断されます。

    でも大切なのは、

    予約が確定したからといって、施設スタッフが何をされても、何を言われても、必ず受け入れ続けなければならないわけではない

    ということです。

    あまりに威圧的・高圧的な言動が続く。

    スタッフが安全上の不安を感じる。

    宿泊前から重大なトラブルが予想される。

    そうした場合には、

    記録を残したうえでOTAへ相談する。

    そして場合によっては、予約の継続そのものについて判断を仰ぐ。

    それも運営会社の仕事です。

    今回、私たちは言い返しませんでした

    では今回、

    「謝れ」

    と言われて、こちらはどうしたのか。

    「その言い方は何ですか」

    とは返していません。

    そこは大人です(笑)。

    まず、事実を整理しました。

    「リクエスト認証済み」という表示は、予約サイト側の自動表示であること。

    施設側から送信したものではないこと。

    施設側では、その内容を事前に把握したり操作したりできないこと。

    そのうえで、

    ご不快に感じられたことについてはお詫びしました。

    そして、もう一つ。

    今回のメッセージを含む一連のやり取りは、予約サイト上に記録されている

    こともお伝えしました。

    「記録されています」は、脅すためではありません

    民泊運営では、記録がとても大切です。

    何時に連絡したのか。

    何を説明したのか。

    ゲストから何と言われたのか。

    こちらは何と回答したのか。

    設備トラブルなら、いつ報告があったのか。

    返金の話なら、何を根拠に求められたのか。

    後から第三者が確認できる状態にしておく必要があります。

    今回も、

    双方の送受信内容と一連の経緯が予約サイト上に記録され、必要に応じて予約サイト側でも確認できる状態

    であることをお伝えしました。

    これは、

    「あなたの発言、残ってますよ」

    と脅すためではありません。

    こちらの文章も全部残っています。

    そこは、きっちり両方です(笑)。

    だからこそ、

    声の大きさではなく、

    実際に何があったのかをOTA側にも確認してもらえます。

    今回は、予約サイト側にも改善を求めます

    今回の件は、

    ゲストへ説明して終わりではありません。

    そもそもの発端は、

    「リクエスト認証済み」

    という自動表示でした。

    施設側では操作できないとしても、

    ゲストから見れば、

    施設が送信した回答のように受け取った可能性があります。

    それなら、

    予約サイト側にも改善していただきたいところがあります。

    今回の一連の経緯を共有し、

    自動応答システムについて改善を申し入れる。

    そこまで行います。

    「ゲストが悪い」

    「OTAが悪い」

    「施設は悪くない」

    と決めて終わるだけでは、次のトラブルは防げません。

    どこで認識のズレが生まれたのか。

    施設側で改善できることはあるのか。

    OTA側に改善を求めるべきことは何なのか。

    それぞれ分けて考えます。

    正当なクレームまで「カスハラ」にしてはいけません

    一方で、ここは絶対に間違えてはいけないところです。

    カスタマーハラスメントという言葉が広がったからといって、

    厳しいクレームが来た。

    返金を求められた。

    低評価レビューを書かれた。

    だから、

    「はい、カスハラです」

    ではありません。

    そんな便利な札ではありません(笑)。

    例えば、

    部屋が清掃されていない。

    設備が壊れている。

    案内が間違っている。

    約束したサービスが提供されていない。

    こうしたことについて、

    説明してほしい。

    改善してほしい。

    場合によっては返金してほしい。

    そう求めるのは当然あり得ます。

    こちらにとって耳の痛い内容でも、

    正当なご指摘なら、きちんと向き合います。

    一方で、

    人格を否定する。

    威圧する。

    執拗に謝罪を強要する。

    スタッフ個人を攻撃する。

    安全上の不安を感じさせる。

    こうした言動まで、

    「お客様だから」で受け入れ続ける必要はありません。

    正当なクレームと、行き過ぎた言動。

    そこを冷静に分けて判断することが大切です。

    スタッフを守ることは、オーナー様の施設を守ることでもあります

    「スタッフを守る」というと、

    会社と従業員だけの話に聞こえるかもしれません。

    でも、実はオーナー様にも関係があります。

    スタッフが疲弊する。

    担当者が辞める。

    施設を理解している人がいなくなる。

    引き継ぎが増える。

    ゲストへの返信品質が落ちる。

    最終的に影響を受けるのは、

    施設の運営そのものです。

    だからスタッフを守ることは、

    単なる福利厚生の話ではありません。

    安定した宿泊運営を続けるためのリスク管理

    でもあります。

    良い運営会社は「何でも謝る会社」ではないと思っています

    こちらに不備があれば謝る。

    必要なら返金する。

    設備を直す。

    ゲストへ説明する。

    運営方法を改善する。

    それは当然です。

    でも、

    事実と違うことは説明する。

    できないことは、できないと伝える。

    行き過ぎた言動があれば記録する。

    スタッフ一人に抱え込ませない。

    必要ならOTAへ相談する。

    安全上の懸念が大きいのであれば、予約をこのまま継続するのかについても相談する。

    ゲストを大切にすることと、何でも受け入れることは同じではありません。

    私は、ここを混同しないことが大切だと思っています。

    オーナー様が知らないところで、こんな仕事もしています

    民泊運営会社というと、

    予約管理。

    価格調整。

    清掃手配。

    チェックイン案内。

    そんな仕事を想像されると思います。

    もちろん、それも大切な仕事です。

    でも実際には、

    今回のようなメッセージが来たら、

    過去のやり取りを確認する。

    誰が送信した文章なのか調べる。

    OTAによる自動返信なのか確認する。

    スタッフから管理者へ相談する。

    どのように回答するか判断する。

    記録を残す。

    必要ならOTAへ報告する。

    予約を継続して問題ないのか判断する。

    システム側に問題があれば改善を求める。

    こういう仕事もしています。

    オーナー様へ毎回、

    「本日、スタッフが『謝れ』と言われました」

    と速報を流すわけではありません(笑)。

    むしろ、

    オーナー様が知らないところで問題が整理され、

    次の日も普通に予約が動いている。

    それが一番いい運営だと思っています。

    運営会社の実力は、“何かあった日”に見えます

    予約が入りました。

    ゲストがチェックインしました。

    楽しく宿泊されました。

    時間どおりチェックアウトされました。

    何も問題ありませんでした。

    それが一番です。

    でも、

    運営会社の違いが見えるのは、むしろそうではない日です。

    設備が壊れた。

    返金要求が来た。

    ゲストがチェックアウトしない。

    近隣から苦情が来た。

    OTAと判断が食い違った。

    レビューで問題が起きた。

    そして、

    スタッフへ威圧的なメッセージが届いた。

    そんなときに、

    感情的に言い返すのでもなく、

    何でも謝って終わらせるのでもなく、

    事実を確認する。

    記録を残す。

    必要なところには謝る。

    必要なところには説明する。

    スタッフを一人にしない。

    そして、越えてはいけない線にはきちんと線を引く。

    そこにも、運営会社の実力は出ると思っています。

    「それがサービス業ちゃいますか?」――はい、だからこそです

    今回、

    「それがサービス業ちゃいますか」

    という言葉をいただきました。

    はい。

    私たちはサービス業です。

    だから、

    ゲストを大切にします。

    不備があれば謝ります。

    困っていれば、できる限りお手伝いします。

    正当なご意見には耳を傾けます。

    そして同時に、

    スタッフが行き過ぎた言動を受けたときには、会社として守ります。

    OTA側にも、ホストや施設側の安全を守るための仕組みがあります。

    会社側にも、スタッフを守るための対応が求められる時代になっています。

    「お客様だから」。

    その一言で、すべてをスタッフに我慢させる時代ではないと思います。

    ゲストを大切にする。

    スタッフも大切にする。

    オーナー様の施設も守る。

    そして何か起きたら、

    感情ではなく、まず事実を見る。

    それも含めて、サービス業ではないでしょうか。

    民泊運営歴が長くなっても、接客という仕事はなかなか奥深いものです。

    そして、ときには、

    予約サイトの自動返信についてまで「謝れ」と言われる日もあります(笑)。

    そんな日でも、

    こちらは冷静に。

    記録を残して。

    スタッフを一人にしない。

    必要ならOTAにも相談する。

    そして翌日には、また普通にゲストをお迎えする。

    それが私たちの仕事です。

    このコラムについて

    本コラムは、民泊運営歴10年以上・宅地建物取引士資格を持つ管理部長・柳瀬が、これまでの実務経験をもとに執筆しています。

    Airbnb・Booking.com等のOTA運用、価格調整や稼働率改善、ゲスト対応、返金・キャンセル・レビュー対応、騒音や近隣トラブル、設備トラブル、行政対応、そして今回のような難しいゲスト対応まで、現場責任者として実際の宿泊事業に携わってきました。

    私たちが大切にしているのは、問題が起きたときに、感情ではなく事実を見ることです。

    ゲストからの正当なご意見には、きちんと向き合う。

    こちらに不備があれば、謝罪して改善する。

    一方で、スタッフへの行き過ぎた言動については、一人で抱え込ませず会社として対応する。

    必要であればOTAへ経緯を共有し、安全面も含めて予約の継続について相談する。

    オーナー様がご自身で一件一件こうした対応をしなくても、

    表に出ないところまで含めて宿泊施設を動かしていく。

    それも運営代行会社の役割だと考えています。

    また、宅地建物取引士として、民泊不動産・中古ヴィラ・貸別荘の購入前確認、収支、物件選び、許認可、開業準備、運営、収益改善、将来の売却までご相談いただいています。

    私たちが一貫して大切にしているのは、

    不動産と運営は切り離さず考えること。

    そして運営が始まってからは、

    「何かあったとき、この会社に任せておけば大丈夫」

    と思っていただける体制をつくることです。

    「現在の運営会社のゲスト対応に不安がある」

    「クレームやOTAとの交渉まで任せたい」

    「オーナー自身が難しいゲスト対応をしなくていい体制にしたい」

    「民泊の運営会社を変更したい」

    「これから民泊・貸別荘を購入し、不動産から運営まで相談したい」

    そんなご相談もお受けしています。

    「買ってから困る」のではなく、

    「あのとき、きちんと確認しておいてよかった」と思える判断を。

    そして運営が始まってからも、

    ゲストを大切にしながら、オーナー様とスタッフもきちんと守れる運営を。

    PROGRESS WORKSは、民泊・貸別荘・ヴィラの不動産と運営、その両方の視点からお手伝いしています。

    Our Experts

    この知識を、
    実際のヴィラ・民泊事業として
    扱う専門家がいます。

    PROGRESS WORKSは、
    不動産・事業スキーム設計・
    ヴィラ開発・データ戦略・OTA・
    運営まで、
    専門領域ごとに
    専門家が分担する体制です。

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