「民泊=迷惑施設」だけが真実ですか?私たちが現場で経験した“民泊側が受ける近隣トラブル”

近年、民泊に関するニュースを目にする機会が増えました。
騒音。
ごみ問題。
路上喫煙。
違法営業。
管理者と連絡がつかない。
近隣住民とのトラブル。
確かに、適切に管理されていない民泊が地域に迷惑をかけているケースはあります。
民泊を10年以上運営してきた私たちも、そこを否定するつもりはありません。
ゲストが夜間に騒いでいれば注意する。
ごみ出しのルールを守っていただく。
近隣から苦情をいただけば、状況を確認して対応する。
必要であれば現地スタッフとも連携する。
地域の中で宿泊事業をする以上、これは運営会社として当然の責任だと思っています。
ただ、長く民泊の現場にいると、ニュースではあまり語られない、もう一つの現実があります。
それは、
民泊が近隣に迷惑をかけるケースだけではなく、民泊施設や宿泊しているゲストが、近隣から迷惑行為を受けるケースもある
ということです。
今回は少し書きにくいテーマです。
でも、これも現在の民泊運営の現場で実際に起きていることとして、書いておきたいと思います。
敷地内にごみを入れられる
私たちが管理する民泊施設では、ごみの管理についてゲストへ細かく案内しています。
施設によってルールは異なりますが、屋外へ勝手にごみを出さず、決められた方法で処分していただきます。
なぜここまで細かくするのか。
近隣への迷惑を防ぐためです。
ところが実際の運営では、
民泊施設の敷地内に、外からごみを置かれる
ということがあります。
さらに、
隣からたばこの吸い殻を民泊施設の敷地へ捨てられる。
掃除をしているように見せながら、ほうきでごみを民泊施設側へ掃き入れられる。
そんなことまで経験してきました。
もちろん、近隣の方すべてがそのようなことをするわけではありません。
むしろ、多くの地域では近隣の皆様や管理会社様にご理解・ご協力いただきながら運営しています。
ご迷惑をおかけした際には教えてくださる方もいますし、日頃から気にかけてくださる方もいます。
だからこそ、
一部の事例だけを見て「近隣住民が悪い」という話にするつもりはありません。
ただ、
「民泊だから何をされても仕方がない」ということでもない
と思っています。
そのごみ、本当に民泊ゲストが捨てたのでしょうか
例えば、民泊施設の敷地にたばこの吸い殻が落ちている。
その写真だけを見れば、
「また民泊のゲストが捨てた」
と思われるかもしれません。
私たち自身も、まずその可能性を考えます。
ゲストがルールを破ったのであれば、運営会社として対応しなければならないからです。
でも、そこで決めつけません。
清掃スタッフに確認する。
宿泊状況を確認する。
現地の状況を確認する。
必要であれば記録を残す。
すると、
外から施設敷地内へ捨てられていた
と分かることもあります。
それでも、ごみが落ちている状態だけを写真に撮れば、
「管理されていない民泊」
に見えてしまいます。
現場では、
一枚の写真だけでは分からないことがたくさんあります。
だから私たちは、近隣から苦情をいただいた場合でも、ゲストから相談を受けた場合でも、
まず事実を確認します。
女性ゲストが、怖くなってその日のうちに退室したこともあります
さらに、私たちが経験した中には、施設へのごみや吸い殻とは少し性質の違うケースもあります。
ある施設に宿泊していた女性ゲストから連絡がありました。
近隣の男性から、こちらをじろじろ見られ、
「今、帰ってきたの?」
と声を掛けられたというのです。
ゲストにとって、その男性は知らない人です。
なぜ自分の出入りを見られているのか。
なぜ帰宅したタイミングを把握されているような声を掛けられるのか。
女性ゲストは恐怖を感じ、
その日のうちに施設を退室しました。
ここで、私たちが近隣の方の意図を断定することはできません。
本人にとっては単なる声掛けだった可能性もあります。
悪意があったのかどうかも、私たちには分かりません。
だから、
「危害を加えようとしていた」
などと決めつけることもしません。
ただ、結果として起きたことは明確です。
宿泊していた女性ゲストが怖いと感じ、その施設で宿泊を続けられなくなった。
これは宿泊施設を運営する側として、決して小さな問題ではありません。
「声を掛けただけ」でも、ゲストから見える景色は違います
普段暮らしている自宅で、
近所の方から、
「おかえり」
と言われる。
それなら、普通のご近所付き合いかもしれません。
でも旅行先で、
知らない男性に自分の出入りを見られ、
「今、帰ってきたの?」
と言われたら。
受け取り方はまったく違います。
特に一棟貸しの民泊には、ホテルのようなフロントスタッフが常駐していない施設も多くあります。
ゲストからすると、
「この人は誰?」
「なぜ私がここに泊まっていることを知っているの?」
「ずっと出入りを見られているの?」
「また話しかけられるの?」
という不安につながることがあります。
まして女性だけで宿泊している場合、
恐怖を感じることもあるでしょう。
ゲストが安心して出入りできることも、宿泊施設の商品価値の一つです。
部屋がきれい。
ベッドが快適。
設備が整っている。
それだけでは足りません。
玄関を出た瞬間から不安になる施設では、安心して旅行を楽しんでいただけません。
ゲストへの直接の声掛けは、できれば運営会社を通してください
もちろん、ゲスト側に問題がある場合もあります。
夜遅くまで屋外で話している。
大きな音を出している。
路上駐車している。
敷地外で迷惑行為をしている。
近隣の方からすれば、
「直接言いたい」
と思われることもあるでしょう。
そのお気持ちは理解できます。
ただ私たちとしては、可能であれば、
ゲストへ直接接触する前に、まず運営会社や施設の緊急連絡先へご連絡いただきたい
と考えています。
理由は単純です。
私たちが間に入れるからです。
近隣の方から状況を確認する。
ゲストへ連絡する。
必要であれば注意する。
改善されたか確認する。
現地対応が必要であれば手配する。
外国人ゲストであれば、理解できる言語で案内する。
それが運営会社の仕事です。
近隣とゲストが直接やり取りをしてしまうと、お互いに感情的になり、本来小さかった問題が大きくなってしまうこともあります。
民泊側に問題があれば、当然、私たちが対応します
ここは誤解のないように、はっきり書いておきたいと思います。
私たちは、
「民泊は被害者です」
と言いたいわけではありません。
ゲストが騒いでいるのであれば、注意します。
屋外利用時間を守っていなければ、室内へ移動していただきます。
ごみ出しに問題があれば改善します。
施設側の管理に問題があれば、私たちが改善します。
実際、私たちが運営する施設では、屋外スペースの利用終了時間を設定し、終了時間が近づけば必要に応じてゲストへ声掛けをするなど、
問題が起きてからではなく、問題が起きる前の対応
も行っています。
近隣の方が我慢することを前提にした運営は、長く続きません。
これは10年以上民泊を運営してきて、本当にそう思います。
でも同時に、
適切に運営している民泊だからといって、何をされても我慢しなければならないわけではありません。
ここは分けて考える必要があります。
「民泊が嫌い」は、敷地に入っていい理由にはなりません
自宅の隣が民泊になる。
知らない旅行者が出入りする。
不安に感じる方がいることは理解できます。
だからこそ運営会社には、
騒音を防ぐ。
ごみを管理する。
緊急時に連絡を受ける。
ゲストへルールを守っていただく。
という責任があります。
一方で、
民泊が嫌だからといって、
施設の敷地内へごみを入れる。
たばこの吸い殻を投げ入れる。
敷地へ入る。
ゲストの出入りを監視していると受け取られかねない行動をする。
宿泊者へ繰り返し接触する。
こうしたことまで当然に許されるわけではないと、私たちは考えています。
民泊事業者には守るべきルールがあります。
そして、
地域で暮らす人にも、他人の敷地や宿泊者に対して守っていただきたい境界があります。
どちらか一方だけが我慢する話ではありません。
一番怖いのは「民泊だから」という決めつけです
民泊の近くにごみがある。
「民泊のゲストでしょう」
夜に話し声が聞こえる。
「民泊でしょう」
外国人旅行者を見かける。
「あの民泊でしょう」
本当にそうなのか。
ここは一度確認してほしいと思います。
もちろん、本当にゲストが原因なら私たちが対応します。
でも、
民泊がそこにあるというだけで、周辺で起きたことをすべて民泊に結びつけるのも違います。
そして、これは民泊側にも言えることです。
近隣から苦情が来た。
「また民泊に反対している人だ」
と決めつける。
これも違います。
本当にゲストがうるさかったのかもしれません。
だから、
誰が言ったかではなく、何が起きたかを見る。
これを私たちは大切にしています。
だから運営会社は「記録」を残します
こうしたトラブルが起きたときに重要なのが、記録です。
いつ起きたのか。
ゲストから何と連絡があったのか。
近隣から何と連絡があったのか。
現地はどうなっていたのか。
清掃スタッフは何を確認したのか。
写真はあるのか。
こちらは何時に対応したのか。
必要に応じて、確認可能な防犯設備等の情報も整理します。
これは、
「こちらは悪くありません」
と言い張るためではありません。
何が起きたのかを、第三者にも説明できる状態にするためです。
民泊のトラブルには、
ゲスト。
近隣。
オーナー様。
運営会社。
管理会社。
OTA。
場合によっては行政など、
多くの関係者が出てきます。
感情だけで話をすると、解決が難しくなります。
だからこそ、
事実と推測を分ける。
これは民泊運営でかなり重要です。
近隣トラブルは、オーナー様の収益にも直結します
「近所付き合いの問題でしょう」
と思われるかもしれません。
でも、民泊ではそうではありません。
今回のように、
ゲストが怖くなって即日退室する。
宿泊を継続できない。
返金対応になる。
レビューに書かれる可能性がある。
同じことが繰り返されれば、施設そのものの評価に影響する。
つまり、
近隣トラブルは、そのままオーナー様の収益に影響します。
建物に何百万円かけてリフォームしても、
素敵な家具を入れても、
サウナを設置しても、
OTAで予約を取っても、
施設の外で安心して過ごせないのであれば、宿泊商品として大きな弱点になります。
だから私たちは、
民泊物件を見るときに、
建物だけを見ません。
民泊物件を購入するとき、「隣」まで見ていますか?
これは、これから民泊物件を購入される方にもぜひ知っていただきたいことです。
物件を見ると、
建物価格。
間取り。
築年数。
駅からの距離。
観光地へのアクセス。
駐車場。
許認可。
想定ADR。
想定稼働率。
どうしても、こうしたものに目が行きます。
もちろん全部大切です。
でも私たちは、
周辺環境も見ます。
住宅がどれくらい近いのか。
屋外スペースを使った場合、音がどちらへ抜けるのか。
玄関の位置は。
ゲストの動線は。
駐車場への出入りは。
周囲は定住者が多いのか。
別荘地なのか。
宿泊施設がすでに多い地域なのか。
近隣とトラブルになりやすそうな要素はないか。
こうしたことも確認します。
なぜなら、
物件を買ってから、隣人を変えることはできないからです。
キッチンは交換できます。
お風呂も改修できます。
壁紙も張り替えられます。
家具も買い替えられます。
でも、
隣人はリフォームできません。
少し強い言い方ですが、民泊不動産では本当に重要なことです。
「民泊可能」と「民泊を長く続けられる」は違います
不動産会社から、
「この物件は民泊できますよ」
と言われることがあります。
でも私たちが確認したいのは、その先です。
民泊ができることと、そこで民泊を長く続けられることは別です。
許認可が取れる。
消防要件も満たせる。
だから営業できる。
それだけではありません。
ゲストが安心して宿泊できるか。
近隣へ迷惑をかけずに運営できるか。
トラブルが起きたときに対応できるか。
地域と関係を築いていけるか。
そこまで含めて、
「この物件は民泊に向いているのか」
を見る必要があります。
これは、実際に民泊を運営していないと見えにくい部分だと思います。
報道される民泊と、私たちが毎日見ている民泊
ニュースでは、問題のある民泊が取り上げられます。
それには意味があります。
悪質な事業者。
違法営業。
騒音を放置する運営。
近隣からの苦情に対応しない管理会社。
こうした事業者は改善されるべきです。
ただ、その一方で、
ルールを守って運営している民泊。
夜間の騒音を防ぐために事前にゲストへ連絡しているスタッフ。
ごみを毎回確認している清掃会社。
近隣から連絡があればすぐに対応している管理会社。
そして、
施設やゲストが近隣から迷惑行為を受けても、感情的にならず事実を確認し、記録を取り、対応している運営会社
もあります。
こちらは、あまり表には出ません。
まあ、
「本日も特に何も起きず、無事にチェックアウトしました」
ではニュースになりませんからね(笑)。
でも、
これも現在の民泊の現場です。
「民泊 VS 住民」にしてしまうと、本当の問題が見えなくなります
私は、
民泊事業者と地域住民を敵同士にすることが、一番よくないと思っています。
問題のある民泊はあります。
きちんと運営している民泊もあります。
正当な理由で困っている近隣住民もいます。
民泊に理解を示してくださる近隣住民もいます。
そして残念ながら、
民泊やその宿泊者に対して、行き過ぎた行為をする方がいるケースもあります。
つまり、
「民泊だから悪い」
「住民だから正しい」
あるいは、その逆。
そんなに単純ではありません。
見るべきなのは、
立場ではなく、行為です。
誰がしたのかより、
何をしたのか。
それが他人にどんな影響を与えたのか。
そこを公平に見なければ、本当の意味で地域と共存する民泊にはならないと思います。
良い運営会社は「どちらかの味方」ではありません
ゲストがルールを破れば、注意します。
近隣から正当な苦情をいただけば、対応します。
施設側に問題があれば、改善します。
オーナー様にも必要な報告をします。
一方で、
敷地へごみを入れられる。
吸い殻を投げ入れられる。
ゲストが不安を感じるような接触が続く。
そうしたことが起きれば、
今度はゲストと施設、そしてオーナー様の資産を守るために動きます。
近隣の味方。
ゲストの味方。
どちらか一方ではありません。
事実の味方でいる。
少し格好よく聞こえるかもしれませんが(笑)、民泊を長く運営するには、私はこれが一番大切だと思っています。
民泊を地域に受け入れてもらう努力と、民泊を守ること。その両方が必要です
私たちはこれからも、
ゲストへのルール案内を徹底します。
屋外利用時間を守っていただきます。
騒音が起きる前に声を掛けます。
ごみを管理します。
近隣から連絡があれば対応します。
施設側に問題があれば改善します。
地域の中で事業をする以上、
民泊側が地域へ配慮することは当然です。
でも同時に、
適切に運営されている施設。
そこへ旅行に来たゲスト。
そして施設を所有するオーナー様の資産。
これらも守られる必要があります。
民泊だから我慢する。
近隣だから我慢する。
ではありません。
お互いが越えてはいけない線を守る。
そして問題が起きたら、
感情ではなく、事実を確認する。
民泊への厳しい視線が向けられている今だからこそ、
この「もう一つの現場」についても知っていただきたいと思っています。
民泊運営とは、
予約を取って、
鍵を渡して、
清掃して終わる仕事ではありません。
ゲストを守る。
オーナー様の資産を守る。
近隣の生活を守る。
そして必要なときには、施設そのものを守る。
そこまで含めて、
私たちは「民泊を管理する仕事」だと考えています。
このコラムについて
本コラムは、民泊運営歴10年以上・宅地建物取引士資格を持つ管理部長・柳瀬が、これまでの実務経験をもとに執筆しています。
Airbnb・Booking.com等のOTA運用、価格調整や稼働率改善、ゲスト対応、騒音・ごみ・近隣トラブル、管理会社との調整、行政対応、是正指導、設備トラブル、そして思うようにいかなかった運営や撤退判断まで、現場責任者として実際の宿泊事業に携わってきました。
また、宅地建物取引士として、民泊不動産・中古ヴィラ・貸別荘の購入前確認、周辺環境、収支、物件選び、許認可、開業準備、運営、収益改善、将来の売却まで、不動産と宿泊事業の両方から考えることを大切にしています。
私たちが大切にしているのは、不動産と運営は切り離さず考えることです。
民泊物件を見るときも、
「民泊ができるか」
だけではなく、
「ここで民泊を長く続けられるか」
まで考えます。
近隣環境はどうか。
住宅との距離はどうか。
ゲストが安心して出入りできるか。
屋外設備を使った場合の騒音リスクは。
近隣から連絡が入ったとき、どのような体制で対応するのか。
そして問題が起きたとき、オーナー様自身が毎回対応しなくても運営を続けられる体制をつくれるのか。
建物の中だけではなく、その周りまで見る。
実際に民泊を運営している私たちだからこそ、不動産を見るときにも大切にしている視点です。
「近隣トラブルで現在の運営会社に不安がある」
「ゲストと近隣、双方への対応まで任せられる会社を探している」
「購入予定の民泊物件を周辺環境まで含めて見てほしい」
「民泊可能な土地・中古物件を探している」
「物件探しから開業、運営までまとめて相談したい」
そんなご相談もお受けしています。
「買ってから困る」のではなく、
「あのとき、きちんと確認しておいてよかった」と思える判断を。
そして運営が始まってからも、
「何かあったとき、この会社に任せておけば大丈夫」と思っていただける運営を。
PROGRESS WORKSは、民泊・貸別荘・ヴィラの不動産と運営、その両方の視点からお手伝いしています。


