「全額返金されました」で終わらせない。Airbnbの返金判断を再審査し、70,096円の補填に至るまで

民泊を運営していると、ときどきゲストから、
「部屋に問題があるので泊まりたくない」
「全額返金してほしい」
という申し出があります。
もちろん、本当に宿泊できない状態であれば、適切な対応が必要です。
設備が使えない。
清掃に重大な不備がある。
安全に宿泊できない。
そうした場合には、ゲストへの返金が必要になることもあります。
ただし今回、私たちが担当している施設で起きたケースは、少し事情が違いました。
ゲストから施設の状態について申告があり、Airbnbから届いた連絡は、
「ゲストは宿泊を希望しておらず、全額返金を求めています」
というものでした。
そして、私たちが確認した時点では、すでに予約はキャンセルされ、全額返金の手続きが進められていました。
受取予定だった宿泊料金は、
71,656円。
ここで、
「Airbnbの判断なら仕方ないですね」
と終わらせることもできます。
でも私たちは、終わらせませんでした。
なぜなら、現地を確認すると、
最初の判断の前提と、実際の状況にいくつもの違いがあったからです。
ゲストは「宿泊していない」のか
最初に確認したのは、時系列です。
ゲストは20時06分頃、
「チェックインした」
とAirbnbのメッセージ上で連絡していました。
施設について最初に問題を申告したのは、
23時02分。
つまり、チェックインしてから約3時間後です。
さらに退室後、現地スタッフが室内を確認すると、
室内や設備を実際に使用した形跡が残っていました。
その写真も撮影し、Airbnbへ提出しました。
ところが、当初Airbnbから届いていた説明は、
「ゲストは宿泊施設に滞在していないため、予約をキャンセルし、全額返金する」
というものでした。
ここで一つ、大きな疑問が生まれます。
実際には約3時間滞在し、室内設備も使用している。
それでも、
100%返金になるのでしょうか。
私たちは、まずここから確認を始めました。
「シミがあった」だけでは判断しません
今回、ゲストからはソファのシミについても申告がありました。
もちろん、シミがあったこと自体については、施設側として改善すべきです。
そこは否定しません。
ただし運営会社として確認するのは、
「問題があったか、なかったか」だけではありません。
その問題は、
現地対応によって改善できたのか。
宿泊そのものを継続できないほどの状態だったのか。
ゲストからいつ連絡があったのか。
ホスト側に改善する機会があったのか。
そこまで見ます。
今回のソファのシミについては、現地スタッフを手配してシミ取りや追加清掃を行うことが可能な内容でした。
ところが問題の申告は23時02分。
私たちが確認した時点では、すでにキャンセルと全額返金が進んでいました。
つまり、
改善を拒否したのではなく、改善する機会そのものがありませんでした。
これは似ているようで、かなり違います。
「カビがある」という写真。本当に客室内なのか?
さらに、ゲストから提出された写真も一枚ずつ確認しました。
ゲストからは天井部分についての申告もありました。
しかし確認すると、その箇所は設備不良やカビではなく、過去に修繕した跡でした。
また、提出写真の中には、客室内ではなく建物外部を撮影したものも含まれていました。
ここも大切です。
写真が提出されている。
だから問題があった。
だから全額返金。
これだけでは、私たちは判断しません。
その写真はどこを撮ったものなのか。
実際に宿泊する空間なのか。
宿泊の可否にどの程度影響する状態なのか。
そこまで確認します。
写真という証拠があることと、
その写真が何を証明しているのか
は別の話だからです。
「カビ臭がする」という申告も確認しました
ゲストからは、
「カビ臭がする」
という申告もありました。
臭いは写真に写りません。
だからこそ難しい問題です。
そこで、
チェックイン前に清掃を行ったスタッフ。
ゲスト退室後に現地確認したスタッフ。
双方の状況を確認しました。
しかし、どちらからも、
カビ臭や異臭があったという報告はありませんでした。
もちろん、
「スタッフが感じなかったから、ゲストも感じていない」
とは言えません。
臭いの感じ方には個人差があります。
ただし、
一方の申告だけで71,656円がゼロになるのであれば、運営会社として確認すべきことは確認する。
私たちはそう考えました。
Airbnbは一度「全額返金を維持する」と回答しました
ここまで資料を提出すれば、すぐに判断が変わったのか。
というと、
そう簡単ではありませんでした。
Airbnbからは一度、
双方の証拠を確認した結果、全額返金の決定を維持する
という回答がありました。
理由として、
ソファのシミ。
ゲストが申告した臭い。
Airbnb上でゲストから連絡があったこと。
そして、Airbnb側が設定した回答期限。
などが挙げられました。
ここで終わることもできます。
「再審査してもらいましたが、ダメでした」
とオーナー様へ報告する。
運営会社としては、それでも一応仕事をしたように見えるかもしれません。
でも、
まだ説明されていないことがありました。
私たちが確認したかったのは「なぜ100%なのか」
今回、私たちは単に、
「返金を取り消してください」
と繰り返したわけではありません。
確認したかったのは、
判断の根拠です。
約3時間利用していた事実は、返金割合にどう反映されたのか。
「宿泊していない」という当初説明と、実際の利用状況との違いはどう評価されたのか。
23時02分という深夜の申告に対して、ホスト側に本当に改善対応できる時間が与えられていたのか。
客室外で撮影された写真は、どのように評価されたのか。
現地では確認されなかった臭いを、どの基準で100%返金の根拠としたのか。
そして、
一部返金ではなく100%返金とした具体的な判断基準は何なのか。
ここを一つずつ確認しました。
民泊のトラブル対応って、華やかさゼロです(笑)。
でもオーナー様の売上を守るのは、だいたいこういう地味な確認です。
「返金するならAirbnb側で補填してください」
さらに私たちは、もう一つ提案しました。
Airbnbがゲストへの全額返金を維持するのであれば、
ゲストから返金額を取り戻してほしいわけではない。
その判断によって失われたホスト側の受取金について、
Airbnb側で補填できないか。
というものです。
ここも大事だと思っています。
ゲストとホストのどちらが勝つか。
そういう話にしたいわけではありません。
ゲストへの対応はAirbnbが判断する。
でも、その判断過程に問題があり、ホスト側に本来発生しなかった損失が出ているのであれば、
ホスト側の損失については別に考えてほしい。
そう整理しました。
日本人担当者への引き継ぎも、何度もお願いしました
今回の案件では、複数の海外サポート担当者とのやり取りも続きました。
もちろん海外スタッフだから問題ということではありません。
ただ今回は、
利用したのか、していないのか。
何時に申告したのか。
改善機会はあったのか。
写真はどこのものなのか。
100%返金の根拠は何なのか。
という細かなニュアンスを確認する必要がありました。
さらに、金銭にも直接関係します。
そのため私たちは何度も、
「日本語で返信してほしい」のではなく、「日本語で内容を正確に確認・判断できる担当者へ引き継いでほしい」
と依頼しました。
翻訳された日本語で回答を受け取ることと、
日本語で複雑な時系列を理解した担当者と協議すること。
これは、やはり少し違います。
そして、Airbnbの判断が変わりました
その後、日本人担当者によって改めて内容が確認されました。
そこでAirbnbから、
当初の対応について、返金金額を含め一部適切ではない対応があった
との説明がありました。
また、ゲストがチェックイン当日に約3時間利用していたことから、
当日分については全額ではなく、一部返金とすべきだった
との判断が示されました。
さらに、夜間の申告に対して期限を設定したことについても、事前説明が不足していたとの説明がありました。
最終的に再計算されたゲストへの返金額は、
1,560円。
そして、
当初のホスト受取予定額
71,656円
との差額、
70,096円
がAirbnbから補填されることになりました。
71,656円がゼロ。
そこから、
70,096円の補填。
ここまで判断が変わりました。
もし最初の回答で終わっていたら
この案件で私が一番考えたのは、ここです。
もし最初の、
「全額返金になりました」
という連絡だけを見て、
「Airbnbの判断なので仕方ありません」
とオーナー様へ報告していたら。
70,096円の補填はありませんでした。
もちろん、OTAの判断が覆らない案件もあります。
どれだけ資料を出しても、返金になることもあります。
だから、
異議を申し立てれば必ずお金が戻る
という話ではありません。
でも、
確認すべき事実がある。
証拠がある。
判断の前提に食い違いがある。
それなら、
そこを整理して伝えるところまでが運営会社の仕事
だと私たちは考えています。
民泊運営会社の仕事は「予約を取ること」だけではありません
民泊運営会社というと、
OTAへ掲載する。
価格を調整する。
ゲストへメッセージを送る。
清掃を手配する。
そういう仕事を想像される方が多いと思います。
もちろん、それも大切です。
でも実際の運営では、
トラブルが起きたとき、
オーナー様の代わりに誰が事実関係を整理するのか
も非常に重要です。
今回であれば、
メッセージの時刻を確認する。
現地スタッフへ連絡する。
使用状況を確認する。
写真を残す。
ゲストの申告と現地状況を照合する。
Airbnbの回答内容を確認する。
矛盾している部分を整理する。
再審査を求める。
必要なら担当者の変更を依頼する。
返金そのものとホスト補填を分けて交渉する。
一つ一つは、とても地味です。
でも、
その積み重ねが70,096円になりました。
OTAから「決定です」と言われたあとに、何をするか
運営会社の差は、
何も起きていない日に見えにくいものです。
予約が入り、
ゲストが泊まり、
問題なくチェックアウトする。
その日は、どの会社が運営していても同じように見えるかもしれません。
でも、
返金。
破損。
騒音。
人数違反。
レイトチェックアウト。
設備故障。
レビュー。
近隣トラブル。
こういうことが起きた日に、
差が出ます。
私は、
OTAから一度「決定です」と言われたことを、そのままオーナー様へ転送するだけでは、運営とは少し違う
と思っています。
その判断は何を根拠にしているのか。
こちらが持っている証拠は反映されているのか。
事実認識に間違いはないか。
別の解決方法はないか。
そこまで確認する。
もちろん毎回70,096円戻ってくるわけではありません(笑)。
それでも、
確認できるところまで確認する。
その姿勢は、変えたくありません。
「全額返金」で終わらなかった理由
今回、Airbnbの最初の判断は全額返金でした。
私たちは、それに感情的に反論したわけではありません。
ゲストの申告。
施設側の確認。
写真。
時刻。
利用状況。
改善可能性。
Airbnb側の手続き。
それぞれを分けて整理しました。
そして最終的にAirbnb側でも再確認が行われ、
返金額は1,560円に再計算され、
70,096円がホスト側へ補填されることになりました。
Airbnbからも、実際の利用状況や夜間の対応期限、臭いに関する追加情報などを改めて精査したうえで判断が見直されました。
この仕事をしていると、
「そこまで確認するんですか?」
と言われることがあります。
はい。
オーナー様の71,656円がかかっているなら、確認します。
むしろ、そこを確認するために運営会社がいるのではないでしょうか。
このコラムについて
本コラムは、民泊運営歴10年以上・宅地建物取引士資格を持つ管理部長・柳瀬が、これまでの実務経験をもとに執筆しています。
Airbnb・Booking.com等のOTA運用、価格調整や稼働率改善、返金・キャンセル・レビュー等のOTA対応、設備トラブル、清掃会社との調整、住民・ゲスト・管理組合との対応、行政対応、そして思うようにいかなかった運営や撤退判断まで、現場責任者として実際の宿泊事業に携わってきました。
また、宅地建物取引士として、民泊不動産・中古ヴィラ・貸別荘の購入前確認、収支、物件選び、許認可、開業準備、運営、収益改善、将来の売却まで、不動産と宿泊事業の両方から考えることを大切にしています。
私たちが大切にしているのは、不動産と運営は切り離さず考えることです。
民泊の収益は、予約を取るだけでは守れません。
価格設定をする。
稼働率を上げる。
清掃品質を管理する。
そして問題が起きたときには、
一件の返金、一件の請求、一件のトラブルまで確認する。
こうした日々の運営まで含めて、初めてオーナー様の収益につながると考えています。
「現在の運営会社のOTA対応に不安がある」
「返金やゲストトラブルの対応まで任せられる会社を探している」
「民泊・貸別荘の運営会社を変更したい」
「これから民泊物件を購入し、運営まで任せたい」
「民泊可能な土地・中古物件から相談したい」
そんなご相談もお受けしています。
「買ってから困る」のではなく、
「あのとき、きちんと確認しておいてよかった」と思える判断を。
そして運営が始まってからも、
「任せておいてよかった」と思っていただける運営を。
PROGRESS WORKSは、民泊・貸別荘・ヴィラの不動産と運営、その両方の視点からお手伝いしています。


