民泊の規制強化には賛成です。だからこそ、行政だけに任せず運営会社もできることを|住民の暮らしを守るために

最近、民泊のトラブルや規制強化についての記事や報道を目にする機会が増えました。
騒音。
ゴミ。
路上喫煙。
無断駐車。
共用部での迷惑行為。
無許可営業。
緊急時に連絡がつかない施設。
民泊を10年以上運営してきた立場から見ると、
私は、
「民泊を増やすこと」より、
「きちんと運営される民泊を増やすこと」
の方が、ずっと大切だと思っています。
ゲストからすれば、
旅行中の数日間です。
でも、
近隣住民の方からすれば、
そこが毎日の生活です。
売上だけを考えて、
「予約が入ればOK」
という運営者が増えれば、
当然、地域との摩擦は大きくなります。
そして一部の悪い運営によって、
真面目に運営している施設まで同じように見られてしまう。
だから私は、
近隣住民の方の生活環境を守るために必要な民泊規制については、その必要性を理解しています。
ただ、
もう一つ、
現場にいる人間として書いておきたいことがあります。
それは、
「では行政がすぐ規制してください」で終わるほど、簡単なお話でもない
ということです。
「問題があります。では明日から新しい法律で」はできません
民泊で大きなトラブルが起きると、
「もっと規制すべきだ」
「行政は何をしているのか」
「保健所はもっと取り締まるべきだ」
という声が上がります。
実際に被害を受けている近隣住民の方からすれば、
そう思われるのも当然だと思います。
夜眠れない。
自宅の前で騒がれる。
ゴミを置かれる。
知らない車を敷地へ停められる。
その状態で、
「制度を検討していますので少々お待ちください」
と言われても、
困ると思います。
ただ、
行政の側から考えると、
法律や条例、規則というものは、
「はい、問題が起きました。では明日から変えます」
というわけにはいきません。
制度として本当に必要なのか。
誰を対象にするのか。
既存施設をどう扱うのか。
どこまで義務を課すのか。
事業者への影響はどうなのか。
他の法令との整合性はどうなのか。
実際に行政が確認できる内容なのか。
市民や事業者からの意見はどうなのか。
さまざまなことを検討し、
必要な手続きを踏み、
制度として形にしていく必要があります。
今回の大阪市の動きを見ても、制度は段階を踏んでつくられています
大阪市では、
民泊施設の増加に伴い周辺住民から多くの苦情が寄せられていることを受け、
2026年3月には特区民泊のガイドラインを改正するとともに、
営業実態調査や苦情分析を踏まえた監視指導計画を策定しています。
大阪市はその目的を、
市民の生活環境を守ること
と明確にしています。
さらに、
旅館業についても、
騒音やゴミなどの近隣トラブルを未然に防ぎ、
より安全で安心な生活環境を確保することを目的として、
条例改正の手続きが進められています。
条例改正案については、
5月19日から6月18日までパブリックコメントを実施。
7月31日にその結果と大阪市の考え方が公表され、
その後、条例案を大阪市会へ上程する流れとなっています。
さらに現在は、
条例改正に伴う規則、
旅館業営業許可に係る審査基準、
旅館業規制指導要綱についても、
9月18日から10月17日まで意見公募が行われています。
こうして見てみると、
制度というものは、
一つ変えるだけでも、
かなりの手続きを踏んでいることが分かります。
保健所や行政も、簡単ではないと思います
私たちは、
民泊や旅館業を運営する中で、
行政や保健所へ相談することがあります。
開業前の相談。
許認可。
設備。
運営上の確認。
必要な届出。
さまざまな場面でお世話になります。
ですから、
民泊問題について、
行政を外から批判するだけというのは、
少し違うと思っています。
大阪市保健所も、
民泊だけを見ているわけではありません。
その中で、
新しい施設の相談を受け、
申請を確認し、
既存施設を監視し、
近隣から寄せられた相談にも対応し、
必要があれば事業者を指導する。
大阪市は、苦情増加を受けて「迷惑民泊根絶チーム」を設置し、既存施設への監視指導を強化するとしています。
行政側も、
何もしていないわけではありません。
だから「行政 VS 民泊」にしたくありません
民泊の話になると、
行政は規制する側。
民泊事業者は規制される側。
という構図になりがちです。
でも、
私はそこを対立させる必要はないと思っています。
近隣トラブルを減らしたい。
違法な施設を減らしたい。
ゲストの安全を守りたい。
地域住民の方の生活を守りたい。
そして、
きちんと運営している施設が、
地域の中で長く営業できるようにしたい。
この部分は、
行政も、
真面目に運営している事業者も、
同じ方向を向けるはずです。
規制が必要になった背景を、運営側も考えるべきです
制度が厳しくなると、
事業者側からは、
「そこまでしなくても」
「またコストが増える」
「民泊がやりにくくなる」
という意見も出ると思います。
もちろん、
事業者に与える影響は、
冷静に検討されるべきです。
ただ、
私は運営会社として、
その前に一つ考えたいと思っています。
なぜ、その規制が必要になったのでしょうか。
大阪市は、
民泊施設の増加に伴い、
周辺住民からの苦情が増えていることを、
今回の対応の背景として明確に示しています。
つまり
何も起きていないところへ、
突然規制が降ってきたわけではありません。
地域で、
実際に困っている方がいる。
そこは、
運営側もきちんと受け止めなければいけないと思います。
ゲストは帰ります。でも、近隣住民の方はそこに住み続けます
私は、
民泊運営について考えるとき、
ここを一番大切にしています。
ゲストは帰ります。
一泊なら翌日。
三泊なら三日後。
一週間でも、
そのうち帰ります。
でも、
近隣住民の方は、そこに住み続けます。
今日も。
明日も。
来年も。
だから、
ゲストの利便性と、
オーナー様の売上だけを見て、
民泊を運営することはできません。
近隣住民の方にとっては、
そこは観光地ではありません。
自宅です。
そこを忘れた宿泊事業は、
長く続けられないと思っています。
でも、規制をつくれば翌日から静かになるわけでもありません
ここが、
とても難しいところです。
条例を改正する。
規則を変える。
基準を厳しくする。
監視を強化する。
必要なことだと思います。
でも、
条例が施行された翌日から、
すべての騒音がなくなるわけではありません。
ゴミ問題が、
突然ゼロになるわけでもありません。
無断駐車が、
自動的になくなるわけでもありません。
制度は、
土台です。
そして、
その制度を現場で機能させるのは、結局「運営」です。
私はここに、
運営会社の責任があると思っています。
規制を待っている間にも、私たちにはできることがあります
夜間の騒音が多いなら、
問題が起きる前にゲストへ案内する。
駐車トラブルが多いなら、
駐車場所を写真で分かりやすく説明する。
ゴミの問題があるなら、
チェックイン時からルールを明確にする。
喫煙場所を間違えるなら、
表示を見直す。
近隣から電話が入ったら、
できるだけ早く状況を確認する。
同じ問題が繰り返されるなら、
案内そのものを変える。
行政が新しい制度をつくるまで、
運営会社が何もできないわけではありません。
むしろ、
法令で義務付けられる前から、できることはたくさんあります。
本当は「規制される前にやっておく」方がいい
これは、
運営会社としてかなり大切だと思っています。
法律に書いてあるから、
騒音対策をする。
条例で義務化されたから、
近隣対応をする。
行政から指導されたから、
連絡体制を整える。
もちろん、
それでも対応しないよりはいいと思います。
でも、
本来は、
その一歩前です。
地域の中で宿泊事業をするなら、必要だからやる。
近隣の方が眠れない状態をつくらない。
他人の敷地へ車を停めさせない。
ゴミを放置しない。
問題が起きたら連絡がつく。
これらは、
規制があるから必要なのではなく、
宿泊事業をするなら必要なことだと思っています。
「ちゃんと運営する民泊」を増やす方が大切
私は、
民泊の数が多いことそのものを、
成功だとは思っていません。
100施設増える。
200施設増える。
それだけでは、
地域にとって良いことなのか判断できません。
大切なのは、
どんな施設が増えるか。
だと思います。
管理者につながる。
騒音ルールがある。
ゴミを適切に処理する。
駐車場所を明確にする。
宿泊者情報を適切に管理する。
近隣から相談があれば対応する。
問題が起きたら、
再発防止まで考える。
そういう施設を増やす。
私は、
「民泊を増やすこと」より、
「ちゃんと運営する民泊を増やすこと」
の方が、
これからは大切だと思っています。
悪い運営が、真面目な施設まで苦しくします
ここも、
運営側には理解してほしいところです。
一部の施設が、
騒音を放置する。
ゴミを放置する。
近隣対応をしない。
必要な手続きをしない。
そういう運営が増えれば、
住民の方から、
「もう民泊そのものを厳しくしてください」
という声が上がるのは、
ある意味当然です。
そして、
規制が強化されれば、
きちんと運営している施設も、
そのルールの対象になります。
つまり、
一部の無責任な運営のコストを、真面目な事業者まで負担することになります。
これは、
業界としても考える必要があります。
行政に全部背負わせるのも違うと思っています
近隣トラブルが起きる。
行政へ連絡する。
行政が確認する。
行政が事業者へ連絡する。
事業者が対応する。
毎回、
この流れしかなければ、
行政の負担も大きくなります。
本来、
運営会社が一次対応できることまで、
すべて行政へ持っていく必要はありません。
騒音。
駐車。
ゴミ。
ゲストへのルール説明。
現場で解決できる問題は、
まず運営側がきちんと対応する。
そして、
法令違反や行政判断が必要な部分については、
行政にお願いする。
この役割分担が、
私は大切だと思っています。
保健所の仕事を増やすより、減らせる運営会社でありたい
前にも書きましたが、
私は、
行政や保健所に、
「もっと取り締まってください」
と言うだけの運営会社にはなりたくありません。
もちろん、
違法営業など、
行政でなければ対応できない問題があります。
そこは、
きちんと対応していただく必要があります。
でも、
運営会社が改善できることまで、
行政にお願いする必要はありません。
近隣対応をする。
ゲストへルールを伝える。
苦情の内容を記録する。
同じ問題を分析する。
再発防止する。
行政へ持っていかなくても済む問題を、現場できちんと解決する。
これも、
地域に対する運営会社の役割だと思っています。
そして、制度をつくるときには現場の知識も使ってほしい
一方で、
行政が新しいルールを検討するときには、
運営会社の知識も役立てていただけたらと思っています。
行政には、
法令と制度の知識があります。
住民の方には、
そこで暮らしているからこそ分かることがあります。
そして運営会社には、
毎日民泊を動かしているから分かることがあります。
どんなトラブルが多いのか。
どのタイミングで起きるのか。
どんな案内なら減るのか。
どこまで自動化できるのか。
どこから人が必要なのか。
どのような管理体制なら実際に機能するのか。
制度と現場が離れてしまわないためにも、
こうした知識を使っていただけたらと思っています。
「住民・行政・運営会社」は、本来同じ方向を向けると思います
民泊について議論すると、
住民側。
行政側。
事業者側。
と、
それぞれが別の立場として扱われます。
でも、
本当に目指すところは、
それほど違わないと思っています。
住民の方が安心して暮らせる。
ゲストが安心して泊まれる。
行政が適切に制度を運用できる。
そして、
真面目に運営する事業者が、
地域の中で長く営業できる。
私は、
この四つを両立させたいと思っています。
規制強化を「民泊いじめ」にしてはいけないし、「行政批判」にもしたくない
今回のような規制強化を、
「行政が民泊を潰そうとしている」
とだけ見るのも違うと思います。
逆に、
「これまで行政が何もしてこなかった」
と一方的に責めるのも、
私は違うと思っています。
大阪市は、
特区民泊について営業実態調査や苦情分析を行い、
ガイドラインを改正し、
重点監視施設等を抽出する監視指導計画を策定しています。
また、
旅館業の条例改正についても、
市民から意見を募集し、
その結果を公表し、
現在は関連する規則や審査基準等についても意見公募を行っています。
制度をつくるというのは、
こういう積み重ねなのだと思います。
だから、
私は今回の動きを、
「厳しくなって困った」
だけでは見たくありません。
地域の中で民泊を続けるために、今までの運営のあり方を見直す機会
として考えたいと思っています。
規制には賛成。でも、規制だけには頼らない
これが、
今の私の考えに一番近い言葉です。
住民の方の安全・安心な生活環境を守るために必要な規制には、その必要性があります。
ただし、
規制をつくれば、
すべて解決するわけではありません。
行政だけでも解決できません。
運営会社だけでも無理です。
住民の方だけに、
監視役をお願いするのも違います。
だから、
それぞれができることをする。
行政は、
制度を整える。
必要な監視や指導をする。
運営会社は、
現場を管理する。
問題を未然に防ぐ。
発生したら対応する。
オーナー様も、
安さや売上だけではなく、
きちんと管理できる体制を選ぶ。
そして、
住民の方から寄せられた声は、
「民泊に反対する人の意見」として片づけず、
生活者の声として受け止める。
私は、
この形が必要だと思っています。
民泊を長く続けたいからこそ、規制の理由を考える
民泊には、
大きな可能性があります。
家族旅行。
グループ旅行。
長期滞在。
空き家活用。
地域への観光消費。
ホテルとは違う役割があります。
だから、
私は民泊をなくしたいとは思いません。
むしろ、
長く続いてほしいと思っています。
でも、
そのためには、
地域から嫌われる事業にしてはいけません。
ゲストは帰る。
住民の方は、そこに住み続ける。
だから、
民泊を守ることと、
住民の方の生活を守ることは、
反対ではありません。
私は、
同じ方向にあると思っています。
「規制されるから変える」のではなく、「地域で続けたいから変える」
これから、
民泊を取り巻くルールは、
さらに変わっていくかもしれません。
そのたびに、
規制が厳しい。
行政が悪い。
民泊事業者が悪い。
住民が厳しすぎる。
と、
誰かを責めるだけでは、
何も良くならないと思います。
なぜ、
そのルールが必要になったのか。
現場では、
何を改善できるのか。
行政の負担を、
どうすれば減らせるのか。
住民の方が、
安心して生活できるためには何が必要なのか。
そこを、
一緒に考える。
「規制されるから仕方なく変える」のではなく、
「この地域で長く事業を続けたいから、自分たちから変える」。
私は、
これからの民泊運営会社には、
そんな姿勢が必要だと思っています。
このコラムについて
本コラムは、民泊運営歴10年以上・宅地建物取引士資格を持つ管理部長・柳瀬が、これまでの実務経験をもとに執筆しています。
Airbnb・Booking.com等のOTA運用、価格調整、宿泊者情報管理、ゲスト対応、騒音・ゴミ・駐車・喫煙などの近隣トラブル、行政対応、許認可、開業準備、収益改善など、
実際の宿泊運営に携わってきました。
また宅地建物取引士として、
民泊不動産・中古ヴィラ・貸別荘の購入前確認、収支、物件選び、許認可、開業準備、運営、収益改善、将来の売却
までご相談いただいています。
私たちが一貫して大切にしているのは、
不動産と運営は切り離さず考えること。
そして、
宿泊事業は、
建物の中だけで完結するものではありません。
玄関を出れば、
そこには地域の暮らしがあります。
だから、
予約が入れば成功、
ではありません。
売上をつくる。
ゲスト満足度を上げる。
法令を守る。
近隣との関係を守る。
問題が起きれば対応する。
同じ問題を繰り返さない。
そこまで含めて、
私たちは民泊運営だと考えています。
大阪市が現在進めている旅館業に関する制度の見直しも、
その背景には、
騒音やゴミなどの近隣トラブルを未然に防ぎ、
市民の安全で安心な生活環境を確保するという目的があります。
その目的について、
現場で民泊を運営している私たちも、
真剣に考えなければいけません。
同時に、
制度を整える行政や保健所にも、
時間と手続きが必要です。
「問題があります。では明日から新しいルールです」
とはいきません。
だからこそ、
新しい規制を待つだけではなく、
今、
運営会社にできることをする。
そして、
制度をつくるときには、
行政・住民・現場の運営会社、
それぞれが持つ知識を持ち寄る。
住民の方が安心して暮らせない民泊は、長く続けられる民泊ではありません。
そして、
行政にすべてを背負っていただかなければ成立しない民泊運営も、健全な形ではない
と私は思っています。
地域の生活を守りながら、
きちんとした宿泊事業を残していく。
そのための規制であり、
そのための運営であってほしいと思います。
「買ってから困る」のではなく、
「あのとき、きちんと確認しておいてよかった」と思える判断を。
PROGRESS WORKSは、民泊・貸別荘・ヴィラの不動産と運営、その両方の視点から、地域と共存できる宿泊事業を考えています。


