貸別荘・ヴィラの設備競争は限界?サウナ・プールの量産化と価格競争のリスク

貸別荘・ヴィラの設備競争は限界?
サウナ付き、プール付き、ジャグジー付き、焚き火が楽しめるヴィラ。
数年前までは、こうした設備があるだけで「特別な宿泊施設」として注目されることがありました。
ところが今、貸別荘やヴィラの市場を見ていると、少し違った景色が広がっています。
新しく登場する施設の多くが、同じような設備を備えるようになってきました。
サウナがある。プールがある。ジャグジーがある。BBQができる。
もちろん、どれも素晴らしい設備です。
私自身、こうした設備のある施設は魅力的だと思いますし、宿泊されるお客様にとっても大きな楽しみになることは間違いありません。
ただ、民泊・貸別荘・ヴィラの運営に携わる立場として、最近強く感じることがあります。
「その設備がある」というだけでは、これから先、選ばれる理由にならなくなるのではないか。
今回は、貸別荘・ヴィラ市場で進む設備の標準化と、その先に待っている価格競争、そしてこれからの施設づくりに本当に必要なことについてお話ししたいと思います。
1.サウナ・プール・ジャグジーが「特別」ではなくなってきた
以前は「サウナ付きの貸別荘」というだけで、十分に目を引く特徴になっていました。
プライベートプールがあれば高級感を演出でき、屋外ジャグジーや焚き火スペースがあれば、それだけで非日常を感じられる施設として紹介されることもありました。
しかし現在、各地の新築ヴィラや貸別荘を見ていると、同じような設備を備えた施設が非常に増えています。
施設の写真を並べると、どこもおしゃれで、設備も充実している。
それ自体は、宿泊業界全体の質が上がっているという意味で、とても良いことです。
一方で、宿泊者の立場になって考えてみてください。
検索結果にサウナ付きヴィラが10軒並んでいたら、どうでしょうか。
以前は「サウナがあるからここに泊まりたい」と思っていた方も、今度は「どのサウナ付きヴィラに泊まろうか」と比較するようになります。
つまり、かつて差別化のために導入した設備が、いつの間にか比較されるための最低条件になっているのです。
これはサウナだけに限りません。
プールも、ジャグジーも、BBQ設備も、焚き火スペースも同じです。
人気設備が普及することによって、その設備だけで他施設との差をつけることが難しくなっていきます。
私は、この変化を貸別荘・ヴィラ市場の大きな転換点だと感じています。
2.設備が似てくると、最後は価格で比較される
宿泊施設の運営で、私が特に心配しているのはここです。
設備が似ている。
建物の雰囲気も似ている。
写真もおしゃれ。
宿泊人数もほとんど同じ。
立地にも大きな差がない。
では、宿泊者は何を基準に選ぶのでしょうか。
もちろん、口コミや清潔感、アクセスなども重要ですが、違いが分かりにくくなるほど、価格が比較材料になりやすくなります。
例えば、同じエリアにサウナ付きのヴィラが複数あり、どこも似たような宿泊体験を提供しているとします。
ある施設が1泊80,000円、別の施設が65,000円、さらに別の施設が55,000円。
宿泊者から見て違いが分からなければ、安い施設に魅力を感じるのは自然なことです。
そこで予約が伸び悩んだ施設が値下げをする。
すると、ほかの施設も価格を見直さざるを得なくなる。
こうしたことが繰り返されると、エリア全体で価格競争が進む可能性があります。
設備を増やして差別化したはずなのに、設備が当たり前になった結果、価格で競争することになる。
これは、決して望ましい未来ではありません。
3.数年後、今と同じ収益を維持できるとは限らない
ここは、これから貸別荘やヴィラへの投資を考えている方にも、ぜひ知っていただきたいところです。
今、人気設備を備えたヴィラが高い宿泊単価で予約されていたとしても、その収益が5年後、10年後まで続くとは限りません。
新しい施設が次々と供給されれば、宿泊者の選択肢は増えていきます。
しかも、新しく建てられる施設ほど、設備やデザインが進化している場合もあります。
数年前に新築された施設が、今では珍しくない設備を備えた施設になっている。
そんな状況は、今後さらに増えていくのではないでしょうか。
私は、同じような設備を持つ施設が増え続ければ、数年後には宿泊単価や収益性が下がる施設も出てくると考えています。
もちろん、すべてのヴィラの収益が下がると断言できるわけではありません。
観光需要が伸びる地域もあれば、独自の魅力によって高い稼働率や宿泊単価を維持する施設もあるでしょう。
ただし、「今は人気だから」「この設備があれば高く貸せるから」という理由だけで投資を判断することには、以前より慎重になる必要があると感じています。
特に、建築費や設備投資が大きい施設ほど、将来の収益変動は無視できません。
プールやサウナには、導入費用だけでなく、維持管理費、清掃費、修繕費などもかかります。
宿泊単価が下がっても、こうした費用が同じように下がるとは限りません。
だからこそ、今の売上だけを見るのではなく、数年先の競争環境まで想像した施設づくりが大切なのです。
4.それでも、サウナやプールをつくることには賛成です
ここまで読むと、私がサウナやプールのあるヴィラに否定的だと思われるかもしれません。
でも、そうではありません。
むしろ、こうした設備があることで、お客様の滞在が豊かになることは素晴らしいと思っています。
家族でプールに入って笑い合う時間。
友人同士でサウナを楽しみながら語り合う時間。
夫婦で夜空を眺めながら、ゆっくり過ごす時間。
焚き火を囲み、普段は話さないようなことを話す時間。
宿泊施設には、日常ではなかなか得られない時間を提供できる魅力があります。
だから、サウナやプールを設置すること自体が問題なのではありません。
私が気になっているのは、「人気があるから、とりあえず付ける」という考え方だけで施設がつくられてしまうことです。
設備は、施設の価値を高めるための手段です。
設備そのものが目的になってしまうと、どこかで他の施設と同じになってしまいます。
5.「何を置くか」より「誰が、どう過ごすか」を想像してほしい
これからのヴィラづくりで、私が何より大切にしてほしいのは、宿泊するお客様の姿を具体的に想像することです。
例えば、ファミリー向けの貸別荘をつくるのであれば。
小さなお子様を連れたご家族が到着したとき、何に困るでしょうか。
荷物が多いかもしれません。
子どもが疲れて寝てしまっているかもしれません。
プールで遊ぶのは楽しくても、そのあと着替えたり、体を拭いたりする場所が使いにくければ、親御さんにとっては負担になります。
そんなとき、動線が工夫されていたり、子ども用の備品がそろっていたり、安全面に配慮されていたりすると、宿泊体験は大きく変わります。
カップル向けのヴィラであれば、どうでしょうか。
プライベート感のある空間。
落ち着いた照明。
周囲の視線を気にせず過ごせるテラス。
朝、ゆっくりコーヒーを飲みたくなる景色。
こうした要素が、滞在の満足度を高めることもあります。
友人グループ向けなら、みんなで食事を楽しめる大きなテーブルや、会話しやすいリビングの配置が大切かもしれません。
サウナがあることより、サウナを楽しんだあとに快適に過ごせる空間があることの方が、印象に残る場合もあります。
大切なのは、設備を数えることではなく、その設備を使ってお客様がどんな時間を過ごすのかを考えること。
私は、そこに施設ごとの個性が生まれると思っています。
6.本当の付加価値は、設備の数では決まらない
「付加価値をつける」と聞くと、新しい設備を追加することを考える方も多いかもしれません。
もちろん、それも一つの方法です。
ただ、付加価値は必ずしも高額な設備投資から生まれるものではありません。
例えば、室内から見える景色を最大限に活かした家具の配置。
雨の日でも楽しく過ごせる空間づくり。
調理しやすいキッチンや、使い勝手の良い食器。
人数分の荷物を置けるスペース。
プライバシーに配慮された窓や屋外空間。
分かりやすい設備案内。
清潔で気持ちの良い寝具。
こうしたことは、施設の写真だけでは伝わりにくいかもしれません。
しかし、実際に宿泊したお客様の満足度には大きく関わります。
そして、その満足度が口コミにつながり、次のお客様が安心して予約する理由にもなります。
私は、これからの貸別荘・ヴィラ市場では、写真で目を引く設備の豪華さだけでなく、実際に泊まったときの快適さがますます重要になると考えています。
設備が似ていても、宿泊体験まで同じになるわけではありません。
そこに、まだまだ差別化の余地があります。
7.オーナー様の「想い」は、施設の個性になる
私たちは日々、さまざまなオーナー様とお話しする機会があります。
施設づくりに対する考え方も、本当にさまざまです。
ご家族との思い出を大切にしている方。
地域の自然を多くの人に楽しんでもらいたい方。
自分自身が旅行先で感じた不便を解消したい方。
大切な人と過ごす特別な時間を提供したい方。
そうした想いを聞くと、私はとても良いなと思います。
なぜなら、その想いこそが、ほかの施設にはない魅力につながる可能性があるからです。
例えば、「自分の子どもが小さかったとき、旅行先でこんなものがあれば助かった」という経験。
「この景色を眺めながら、ゆっくり朝食を食べてもらいたい」という願い。
「大切な人の誕生日を、ここで過ごしてほしい」という気持ち。
こうした想いから生まれる工夫は、流行している設備をそのまま取り入れるだけでは生まれません。
もちろん、オーナー様の想いだけで収益が生まれるわけではありません。
宿泊需要や立地、価格設定、運営コストなど、事業としての検討は必要です。
それでも、数字だけではつくれない魅力が、オーナー様の想いから生まれることは確かにあると感じています。
私は、そういう施設がもっと増えてほしいと思っています。
8.運営会社の役割も、予約を取るだけではなくなっている
施設の設備が似てくる時代だからこそ、私たちのような民泊・貸別荘の運営会社にも、これまで以上の役割が求められると感じています。
予約サイトに掲載する。
料金を調整する。
宿泊者様からの問い合わせに対応する。
清掃を手配する。
これらはもちろん、運営に欠かせない仕事です。
しかし、施設が増え、競争が激しくなる中では、それだけで十分とは言えなくなってきています。
実際に宿泊されたお客様が何を喜び、何に困り、どのような感想を持たれたのか。
その声を施設づくりや運営改善に反映していくことも、非常に重要です。
例えば、何度も同じ設備について質問が届くのであれば、案内方法に改善の余地があるかもしれません。
清掃の際に使いにくさが見つかるのであれば、家具や備品の配置を見直す必要があるかもしれません。
口コミで特定の空間が高く評価されているのであれば、その魅力をもっと伝えられるかもしれません。
宿泊者様の声と、実際の運営現場で得られる気づきを、次の改善につなげていく。
これも、これからの運営会社に求められる大切な仕事だと思います。
PROGRESS WORKSでも、施設の魅力をどう伝えるかだけでなく、実際に宿泊されるお客様にとって、どうすればより良い滞在になるのかを考え続けたいと思っています。
9.これからの貸別荘投資は「設備があるから儲かる」では危険
これから貸別荘やヴィラを新築・購入しようと考えている方には、ぜひ一度立ち止まって考えていただきたいことがあります。
「サウナ付きなら高く貸せる」
「プールがあれば予約が入る」
「ジャグジーを設置すれば競合と差別化できる」
こうした考え方が、必ずしも間違っているわけではありません。
ただ、それだけを根拠に大きな投資を決めてしまうのは危険だと思います。
その設備が周辺施設にも増えたとき、どうするのか。
数年後、同じ価格で販売できなくなったとき、収益は成り立つのか。
設備の修繕や交換が必要になったとき、十分な資金を確保できるのか。
そして何より、その施設には、同じ設備を持つほかのヴィラではなく、そこを選んでもらう理由があるのか。
これからは、こうした視点がますます大切になると思います。
目先の流行に合わせることと、長く選ばれる施設をつくることは、必ずしも同じではありません。
だからこそ、土地や建物を選ぶ段階から、設備投資だけでなく、宿泊体験や将来の運営まで見据えて考えていただきたいのです。
10.「設備がすごい宿」から「また泊まりたい宿」へ
サウナも、プールも、ジャグジーも、焚き火も。
私は、これらの設備がこれからも宿泊者様に喜ばれるものだと思っています。
ただ、それらがあること自体は、今後ますます珍しくなくなっていくでしょう。
そうなったとき、宿泊施設の本当の価値が問われるのだと思います。
設備は立派だったけれど、使いにくかった宿。
写真は豪華だったけれど、落ち着かなかった宿。
何でもそろっていたけれど、なぜか印象に残らなかった宿。
一方で、特別に豪華な設備がなくても、心地よく過ごせて、帰るころには「また来たい」と思える宿もあります。
その違いは、どこから生まれるのでしょうか。
私は、施設をつくる人、運営する人が、どれだけ宿泊するお客様のことを想像できているかという部分も大きいと思っています。
お客様が到着したとき。
部屋に入ったとき。
家族や友人と食事をするとき。
夜、ゆっくりくつろぐとき。
そして、チェックアウトして帰るとき。
その一つひとつの場面を想像しながら、施設をつくり、改善していく。
そこに、設備の数だけでは測れない付加価値が生まれます。
量産される時代だからこそ、一棟一棟に想いを
これからの貸別荘・ヴィラ市場では、人気設備を備えた施設がさらに増え、競争が厳しくなる可能性があります。
私は、設備だけで差別化している施設ほど、将来的な価格競争の影響を受けやすくなるのではないかと考えています。
だからといって、新しいヴィラをつくることや、魅力的な設備を導入することを否定したいわけではありません。
むしろ、素敵な施設が増えることは、宿泊業界にとって喜ばしいことです。
ただ、せっかく大切な資金を投じて施設をつくるのであれば、流行の設備をそろえるだけで終わってほしくない。
そこに泊まるお客様の姿を、もう一歩深く想像してほしいのです。
どんな人に泊まってほしいのか。
どんな時間を過ごしてほしいのか。
どんな気持ちで帰ってほしいのか。
その答えは、きっとオーナー様ごとに違うはずです。
サウナがあるから選ばれる宿ではなく、その宿で過ごす時間に価値があるから選ばれる宿へ。
設備が量産される時代だからこそ、一棟一棟に込められた想いと工夫が、これからの貸別荘・ヴィラの価値を決めていくのではないでしょうか。
私たちPROGRESS WORKSも、そうした施設づくりと運営を、オーナー様と一緒に考えていきたいと思っています。
このコラムについて
このコラムは、民泊・貸別荘・ヴィラの運営に携わる株式会社PROGRESS WORKSの管理部長・柳瀬が、日々の宿泊運営で感じている市場の変化や、これからの施設づくりについての考えをまとめたものです。
近年、サウナ・プール・ジャグジー・焚き火スペースなどを備えた貸別荘やヴィラが増え、以前は特別だった設備が、少しずつ当たり前のものになりつつあると感じています。
こうした設備が充実することは、宿泊者様にとって喜ばしいことです。一方で、似たような施設が増えることで差別化が難しくなり、将来的には価格競争や収益性の低下につながる可能性もあります。
本記事では、設備の導入そのものを否定するのではなく、「どのような設備を設置するか」だけでなく、「宿泊者様にどのような時間を過ごしていただきたいか」を考えることの大切さをお伝えしています。
なお、将来の価格競争や収益性に関する見解は、宿泊運営の現場で得た経験をもとにした考察であり、すべての地域や施設に同じ変化が起こると断定するものではありません。
これから貸別荘・ヴィラの新築や購入を検討されている方、すでに施設を所有・運営されているオーナー様にとって、長く選ばれる宿泊施設のあり方を考えるきっかけになれば幸いです。
株式会社PROGRESS WORKSでは、民泊・貸別荘・ヴィラの物件選びから施設の立ち上げ、運営代行までご相談を承っています。
人気設備の導入だけでなく、立地や宿泊需要、運営コスト、将来の競争環境も踏まえながら、長く選ばれる施設づくりを一緒に考えます。


