田舎の民泊は儲かる?ちょっと待って!清掃・人手不足・宿泊需要の厳しい現実

民泊運営会社が伝えたい地方民泊の現実
「民泊 田舎 儲かる」
これから民泊を始めようと考えている方の中には、このようなキーワードで検索したことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
田舎なら物件価格が安い。
都会と比べて競合する宿泊施設も少ない。
自然が豊かで、古民家をリノベーションすれば、おしゃれな一棟貸しの宿泊施設ができる。
確かに、田舎で民泊を始めることには魅力があります。
私自身、地方の貸別荘やヴィラの運営にも携わっているので、地方ならではの可能性は十分に感じています。
ただ、これから田舎で民泊を始めようとしている方に、一つお伝えしたいことがあります。
ちょっと待ってください。田舎だから民泊が儲かる、というわけではありません。
むしろ、都会よりも運営が難しいと感じる場面もあります。
物件が安くても、清掃会社が見つからない。
ゲストからトラブルの連絡が入っても、すぐに駆けつけられる人がいない。
そもそも、宿泊する人がどれくらいいるのかもわからない。
今回は、民泊運営会社の立場から、田舎で民泊を始める前に知っておいてほしい現実について、私なりの考えをお話ししたいと思います。
田舎の民泊で最初に困るのは、意外にも清掃です
田舎で民泊を始めるとき、私が特に重要だと思っているのが清掃体制です。
都会であれば、民泊清掃を専門に行っている会社や、宿泊施設の清掃経験があるスタッフを比較的探しやすい環境があります。
しかし、地方ではそう簡単にはいきません。
そもそも清掃会社が少ない。
清掃会社があっても、民泊の清掃には対応していない。
対応できたとしても、土日祝日は難しい。
そして、清掃会社が1社しか見つからなかった場合、その会社が対応できなくなったらどうするのでしょうか。
民泊は、ゲストがチェックアウトしたあと、次のチェックインまでに清掃を終える必要があります。
特に一棟貸しの貸別荘やヴィラでは、客室だけでなく、キッチン、浴室、庭、テラス、BBQ設備など、清掃範囲が広くなることもあります。
都会のワンルーム民泊と同じ感覚で考えると、想像以上に手間がかかるかもしれません。
さらに、地方では移動距離も問題になります。
清掃スタッフが片道40分、50分かけて施設まで来るのであれば、当然、その移動時間もコストとして考えなければなりません。
物件の購入価格が安くても、清掃費用まで安いとは限らないんです。
そして何より、清掃を安定して任せられる人がいなければ、そもそも宿泊施設として継続的に運営することが難しくなります。
私は、地方で民泊を始めるのであれば、物件を購入する前に清掃会社を探しておくくらいでよいと思っています。
トラブルが起きたとき、誰が駆けつけるのでしょうか
民泊は、予約が入って、ゲストがチェックインして、何事もなくチェックアウトする。
毎回そうであれば、運営はそれほど難しくないかもしれません。
しかし、実際にはそうはいきません。
鍵が開かない。
お湯が出ない。
エアコンが故障した。
停電した。
水漏れが発生した。
ゲストが設備の使い方を理解できない。
宿泊施設を運営していれば、こうしたトラブルは起こり得ます。
都会であれば、近隣のスタッフや設備業者に対応を依頼できる可能性があります。
しかし、田舎ではどうでしょうか。
近くに対応できる人がいない。
設備業者に連絡しても、すぐには来てもらえない。
夜間や休日は対応できない。
場合によっては、担当者が車で1時間以上かけて現地へ向かわなければならないことも考えられます。
特に、宿泊施設のトラブルは、夜間に発生することも珍しくありません。
ゲストがチェックインする夕方から夜にかけて、初めて設備の不具合が判明することもあります。
そのとき、電話やメッセージだけで解決できるとは限りません。
田舎で民泊を始めるなら、予約を取る方法だけでなく、トラブルが起きたときに誰が現地へ行くのかを決めておく必要があります。
住宅宿泊事業法の届出施設では、事業者の状況によって住宅宿泊管理業者への管理委託が必要になる場合もあります。
ただ、管理会社に委託すれば、どんな場所でもすぐに駆けつけてもらえるというわけではありません。
実際に対応できるエリアなのか。
緊急時の対応方法はどうなっているのか。
現地に協力してくれる人がいるのか。
こうした部分を、開業前に確認しておくことが重要だと思います。
人口が少ないということは、働いてくれる人も少ないということです
田舎で民泊を始める際、人口が少ないことの影響は、宿泊需要だけではありません。
清掃スタッフ。
設備の修理業者。
庭の手入れをしてくれる人。
リネンの交換や備品の補充をしてくれる人。
こうした運営に必要な人材も、限られている可能性があります。
特に地方では、地域によって人手不足が深刻な場合もあります。
施設の周辺に住んでいる人が少なければ、そもそもスタッフを募集しても応募が集まらないかもしれません。
また、車がなければ通勤できない場所では、働ける人もさらに限られます。
仮に清掃スタッフが見つかったとしても、その方が休みの日や体調を崩したときに代わりの人がいなければ、運営は不安定になります。
田舎で民泊を始めるということは、宿泊施設を作るだけでなく、その地域で運営できる体制を作るということでもあるんです。
この部分は、物件の写真や収支シミュレーションだけでは見えてこない難しさだと思います。
田舎ならどこでも宿泊需要があるわけではありません
もう一つ、非常に大切なことがあります。
それは、田舎ならどこでも民泊が儲かるわけではないということです。
田舎といっても、地域によって宿泊需要はまったく異なります。
有名な観光地に近い場所。
海や山など、明確な観光資源がある場所。
温泉地。
人気のレジャー施設がある地域。
こうした場所には、宿泊需要が期待できるかもしれません。
一方で、自然が豊かというだけでは、宿泊需要が十分にあるとは限りません。
田園風景が広がっている。
周囲に建物が少ない。
静かで景色がきれい。
それ自体は魅力です。
しかし、その場所に宿泊するために、わざわざ遠方から旅行者が来るのか。
ここは冷静に考える必要があります。
例えば、観光客が多い地域でも、日帰りで訪れる人が中心であれば、宿泊需要はそれほど大きくないかもしれません。
また、人気観光地から車で30分離れているだけで、宿泊施設としての競争力が大きく変わることも考えられます。
「田舎だから自然が豊か」ということと、「旅行者がお金を払って泊まりたい場所である」ということは、別の話です。
私は、田舎の民泊ほど、物件そのものの魅力だけでなく、その場所に宿泊する理由があるかどうかが重要だと思っています。
観光客が多くても、年間を通して予約が入るとは限りません
地方の民泊で気をつけたいのが、季節による宿泊需要の差です。
例えば、海の近くであれば夏休み。
紅葉が有名な地域であれば秋。
スキー場に近い場所であれば冬。
特定の季節に宿泊需要が集中する地域は少なくありません。
繁忙期には高い宿泊料金を設定できたとしても、閑散期に予約がほとんど入らなければ、年間の売上は伸びません。
民泊の収支を考えるとき、つい繁忙期の宿泊料金に目が行きがちです。
しかし、私が重要だと思うのは年間を通した収益です。
例えば、1泊5万円で売れる日があっても、それが年間20日しかなければ、売上は100万円です。
一方、1泊2万円でも年間150日稼働すれば、売上は300万円になります。
もちろん、これは単純な計算例であり、実際には清掃費や運営費、各種手数料などが発生します。
それでも、宿泊単価だけで収益性を判断できないことはわかると思います。
観光庁の宿泊旅行統計調査でも、宿泊施設の稼働状況には地域差があります。
ただし、ホテル・旅館を含む統計であり、個々の民泊施設の稼働率をそのまま示すものではありません。
大切なのは、その地域にどれくらい宿泊需要があり、年間を通して何日稼働できる見込みがあるのかを確認することです。
特に住宅宿泊事業法に基づく民泊では、年間180日という営業日数の上限もあります。
自治体によっては、さらに営業可能な期間が制限される場合もあります。
そのため、地域の需要と営業可能日数の両方を踏まえて収支を考える必要があります。
物件が安くても、維持管理費が安いとは限りません
田舎の民泊で魅力的に感じるのが、物件価格の安さです。
都会ではなかなか購入できない広い戸建てが、比較的安い価格で見つかることもあります。
しかし、購入価格だけを見て判断するのは危険だと思います。
特に古民家や築年数の経過した戸建てでは、購入後に想定外の費用が発生する可能性があります。
屋根や外壁の修繕。
給排水設備の交換。
浄化槽の維持管理。
害虫や野生動物への対策。
庭木の剪定や草刈り。
積雪地域であれば除雪。
海沿いであれば塩害による設備の劣化。
こうした費用は、地域や物件の状況によって大きく異なります。
さらに、田舎では設備が故障した際に、対応できる業者が限られる場合もあります。
部品の取り寄せや業者の手配に時間がかかれば、その間、予約を受けられなくなる可能性もあります。
物件を安く購入できたとしても、運営開始後にお金がかからないとは限りません。
むしろ、維持管理の難しさまで考えると、都会の物件よりも手間がかかるケースもあると思います。
田舎の民泊は、価格を下げれば予約が入るとも限りません
予約が入らなければ、宿泊料金を下げればよい。
そう考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、田舎では価格を下げるだけで予約が増えるとは限りません。
そもそも、その地域を訪れる旅行者が少なければ、宿泊料金を下げても需要そのものが増えるとは限らないからです。
例えば、宿泊したい人が一定数いる都市部であれば、価格調整によって予約が増える可能性があります。
しかし、宿泊需要が限られる地域では、安くしたところで予約が入らないことも考えられます。
さらに、一棟貸しの貸別荘やヴィラは、1組の宿泊客を迎えるためにも一定の清掃費用が発生します。
宿泊料金を下げすぎると、予約が入っても利益がほとんど残らないという状況になりかねません。
需要が少ない場所では、安売りが解決策になるとは限らないんです。
むしろ、その施設にしかない魅力を作り、宿泊料金に見合う価値を提供することが重要だと思います。
では、田舎の民泊は儲からないのでしょうか
ここまで田舎の民泊の難しさについてお話ししてきましたが、私は田舎の民泊が儲からないと言いたいわけではありません。
実際、地方だからこそ魅力的な宿泊施設を作れる場合もあります。
広い敷地を活かした一棟貸しのヴィラ。
プライベートサウナや露天風呂を備えた施設。
海や山の景色を楽しめる貸別荘。
大人数で宿泊できるグループ向けの施設。
こうした宿泊施設は、都市部では実現が難しかったり、多額の投資が必要になったりすることもあります。
地方の土地や建物の特徴を活かせば、他の宿泊施設との差別化につながる可能性があります。
ただし、ここで重要なのは、設備を豪華にすれば必ず儲かるわけではないということです。
サウナや露天風呂を設置すれば、当然、初期投資や維持管理費も増えます。
その投資に見合う宿泊需要があるのか。
宿泊料金をどこまで設定できるのか。
設備が故障したときに対応できるのか。
そこまで考えなければなりません。
田舎で民泊を成功させるには、安い物件を探すことよりも、その地域で選ばれる宿泊施設を作れるかどうかが大切だと思います。
私なら、田舎で民泊を始める前に何を確認するか
私が田舎で新しく民泊を始めるとしたら、物件の購入価格だけでは判断しません。
まず、その地域にどれくらい宿泊需要があるのかを調べます。
周辺にどのような宿泊施設があり、どれくらいの料金で販売されているのか。
繁忙期と閑散期では、どれくらい需要に差があるのか。
旅行者は何を目的にその地域を訪れるのか。
そのうえで、清掃会社を確保できるかどうかを確認します。
さらに、緊急時に駆けつけられるスタッフや、設備トラブルに対応できる業者がいるかも調べます。
当然、自治体の民泊規制や、建築・消防関係の要件についても確認が必要です。
そして、これらを踏まえて年間の収支を計算します。
ここまで確認して、初めて事業として成り立つ可能性があるかどうかを判断できると思います。
私が特に重要だと感じているのは、清掃と緊急対応の体制が整わない物件については、いくら物件が魅力的でも慎重に考えるべきだということです。
宿泊施設は、作って終わりではありません。
むしろ、開業してからが本番です。
最後に。「田舎だから儲かる」ではなく「その場所で儲かる理由があるか」
「田舎で民泊を始めれば儲かる」
そう考えている方には、一度立ち止まって考えていただきたいと思います。
田舎には、田舎ならではの魅力があります。
物件価格が比較的安く、広い土地を活用できる場合もあります。
都会にはない景色や自然環境を活かして、魅力的な宿泊施設を作ることもできます。
しかし、その一方で、清掃会社が少ない。
人材が確保しにくい。
緊急時に駆けつけられる人がいない。
設備業者の手配が難しい。
宿泊需要が季節によって大きく変わる。
そもそも、宿泊需要が十分にない地域もある。
こうした問題を考えずに始めてしまうと、開業後に苦労することになるかもしれません。
私は、地方の民泊運営には大きな可能性があると思っています。
ただし、田舎ならどこでも儲かるわけではありません。
むしろ、田舎の民泊ほど、立地の見極めと運営体制の構築が重要になると感じています。
物件が安いから購入する。
競合が少ないから始める。
自然が豊かだから旅行者が来るはず。
それだけでは、宿泊事業として十分な理由にはならないと思うんです。
「その物件が安い理由」ではなく、「旅行者がその場所にお金を払って泊まる理由」があるかどうか。
そして、予約が入ったあと、問題なく宿泊サービスを提供し続けられる体制があるかどうか。
そこまで考えて初めて、田舎の民泊は事業として成立するのではないでしょうか。
田舎で民泊を始めること自体は、決して悪い選択ではありません。
ただ、安い物件を見つけた勢いだけで始めるのは、少し待った方がよいかもしれません。
民泊は不動産投資であると同時に、日々の管理とサービスが必要な宿泊事業でもあるのですから。
このコラムについて
このコラムは、株式会社PROGRESS WORKSの管理部長・宅地建物取引士である柳瀬が、民泊・貸別荘・ヴィラ運営の現場で感じたことや、不動産に関する知識をもとに執筆しています。
株式会社PROGRESS WORKSでは、大阪を拠点に、民泊・貸別荘・ヴィラなどの運営代行を行っています。
これから宿泊事業を始めたい方や、すでに運営されている施設の管理方法についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。


