民泊×マンスリーのハイブリッド運営は今後難しくなる?180日制限と賃貸借の境界線

私が気になる「宿泊」と「賃貸借」の境界線
住宅宿泊事業法に基づく民泊には、年間180日という営業日数の上限があります。
そのため、民泊として営業できる期間は宿泊施設として運営し、それ以外の期間はマンスリー賃貸として活用する。
いわゆる「民泊×マンスリー」のハイブリッド運営です。
物件を所有している以上、できるだけ稼働率を高めたいと考えるのは自然なことです。
固定資産税や管理費、設備の維持費などは、営業していない期間にも発生します。
そう考えると、民泊とマンスリー賃貸を組み合わせるという発想自体は、合理的だと思います。
ただ、最近の自治体による民泊規制の強化や、Airbnbのポリシーなどを見ていると、私は少し気になることがあります。
住宅宿泊事業法の届出施設で行うハイブリッド運営は、今後、これまで以上に慎重な判断が求められるのではないでしょうか。
もちろん、ハイブリッド運営そのものが一律に禁止されているわけではありません。
実際、国の制度でも、住宅宿泊事業と住宅賃貸の併用が想定されていると考えられる規定があります。
それでも私が気になっているのは、宿泊と賃貸借の境界線です。
今回は、宅地建物取引士として不動産に関わり、日々民泊施設の運営にも携わっている立場から、私なりの考えをお話ししたいと思います。
そもそも「宿泊」と「賃貸借」は別の事業です
まず、私が一番大切だと思っているのは、宿泊と賃貸借をきちんと区別することです。
住宅宿泊事業法に基づく民泊は、住宅を利用して宿泊サービスを提供する事業です。
一方、一般的なマンスリー賃貸は、住宅を一定期間、賃貸借契約に基づいて貸し出すものです。
同じ部屋を使い、同じベッドで寝て、同じキッチンを利用する。
見た目にはほとんど違いがないかもしれません。
しかし、法律上は異なるものです。
厚生労働省は、旅館業と一般的な貸室業を区別する際の重要な要素として、施設の衛生上の維持管理責任が誰にあるのか、利用者がその部屋に生活の本拠を有しているのか、といった点を示しています。
つまり、単純に利用日数だけで判断するものではありません。
実際の契約内容や利用状況、施設の管理方法などを総合的に確認する必要があります。
30泊以上だから賃貸借。29泊以下だから宿泊。そんな単純な線引きではないということです。
ちなみに、旅館業法には、1か月以上を単位として宿泊料を受け取る「下宿営業」という区分もあります。
長期間利用しているからといって、それだけで旅館業法とは無関係になるわけではありません。
ここは、意外と見落とされやすい部分だと思います。
マンスリー賃貸には、宅建業法の問題もあります
もう一つ、私が気になっているのが宅地建物取引業法との関係です。
自分が所有している物件を、自ら貸主として賃貸する場合、通常は宅建業免許を必要としません。
しかし、他人の所有する物件について、賃貸借契約の代理や媒介を業として行う場合には、原則として宅建業免許が必要になります。
例えば、民泊運営代行会社が、オーナーから依頼を受けて宿泊予約の管理やゲスト対応を行う。
これは、民泊の運営管理に関する業務です。
一方、その会社がオーナーに代わってマンスリー賃貸の入居者を募集し、賃貸借契約の成立に向けた代理・媒介を業として行うのであれば、宅建業法上の問題が生じます。
民泊の運営代行ができるからといって、そのまま賃貸借の仲介までできるわけではありません。
※宅建業免許がある民泊運営代行会社は可能になります。
誰が貸主となり、誰が入居者を募集し、誰が契約の代理・媒介を行うのか。
ここは、ハイブリッド運営を考えるうえで、きちんと整理しておく必要があると思います。
私自身、民泊運営と不動産賃貸の両方に関わっているからこそ、この違いは決して小さな問題ではないと感じています。
国は、民泊とマンスリー賃貸の併用を禁止しているわけではありません
ここは、今回のテーマで誤解のないようにしておきたいところです。
住宅宿泊事業法施行規則第2条には、住宅として認められる家屋の要件について、次のような規定があります。
「事業(人を宿泊させるもの又は人を入居させるものを除く。)の用に供されていないもの」
つまり、住宅としての要件を定めるうえで、宿泊させる事業や入居させる事業は、他の事業利用とは区別されています。
この規定からも、住宅宿泊事業と住宅賃貸を組み合わせること自体が、制度上、一律に禁止されているわけではないと考えられます。
ただし、この条文があるからといって、どのような運営方法でも認められるという意味ではありません。
住宅宿泊事業としての要件を満たすこと。
賃貸借としての実態があること。
それぞれの事業に適用される法律を守ること。
こうした条件は、当然ながら別に考える必要があります。
「併用が禁止されていない」ということと、「どのような方法でも併用できる」ということは、まったく違う話です。
私は、ここを混同しないことが大切だと思っています。
実は国は2018年から、民泊とマンスリー賃貸を区別するよう求めています
今回、私が特に注目したいのが、2018年11月6日に観光庁と厚生労働省が示した通知です。
この通知では、マンスリー賃貸を民泊仲介サイトで取り扱う場合の考え方が示されています。
具体的には、原則として1か月以上の利用を条件とすること。
1か月未満の利用を防止する仕組みを設けること。
賃貸借契約を締結し、宿泊施設ではなく賃貸物件であることを明示すること。
さらに、宿泊施設とマンスリー賃貸については、別のサイトで管理することが望ましいという考え方も示されています。
ここで重要なのは、国がマンスリー賃貸を民泊仲介サイトに掲載することを、全面的に禁止しているわけではないという点です。
その一方で、宿泊と賃貸借を明確に区別することを求めています。
つまり、民泊とマンスリー賃貸を組み合わせるのであれば、両者の違いが明確にわかる運営であることが重要だということです。
私は、この通知が非常に重要だと思っています。
というのも、宿泊と賃貸借の区別は、最近になって突然問題になったわけではないからです。
国は2018年の時点ですでに、民泊仲介サイト上で両者を区別する必要性を示していました。
そう考えると、今後この区別について、より厳密な運用が求められるようになったとしても、不思議ではないように感じます。
Airbnbの「28泊以上」と、国の「原則1か月以上」は同じではありません
Airbnbでは、28泊以上の予約を長期滞在として扱っています。
長期滞在向けの料金設定やキャンセルポリシーがあり、通常の短期予約とは異なる仕組みが設けられています。
また、Airbnbの公式ポリシー「ホストが定める契約やその他の要件の制限」では、2026年11月20日以降に確定した予約について、ホストが別途契約書への署名を求める行為が原則として制限される一方、28泊以上の長期滞在に関連する契約については、一定の条件のもとで例外が認められています。
つまり、Airbnbは長期滞在に関する契約書の作成を、一律に禁止しているわけではありません。
ただし、ここで気になることがあります。
Airbnbの長期滞在は28泊以上ですが、国の2018年の通知では、マンスリー賃貸について原則1か月以上の利用を条件とする考え方が示されています。
この二つは、必ずしも同じではありません。
Airbnbで28泊以上に設定できるからといって、それだけで国の示した条件を満たすとは限らないということです。
さらに、Airbnbが長期滞在に関連する契約書を認めていることと、日本の法律上、賃貸借として成立することも別問題です。
予約サイト上の「長期滞在」と、法律上の「住宅賃貸」は、同じ意味ではないんです。
この違いは、ハイブリッド運営を考えるうえで、非常に重要だと思います。
賃貸借契約書を作れば、それで十分なのでしょうか
ハイブリッド運営では、民泊として営業できない期間に、賃貸借契約書を作成してマンスリー賃貸を行う方法が考えられます。
もちろん、賃貸借契約書を作成すること自体は大切です。
ただ、私が少し疑問に感じるのは、契約書の名称だけで本当に事業の性質が変わるのか、ということです。
例えば、住宅宿泊事業法の届出施設で、年間180日の営業日数を使い切ったとします。
その後、予約期間を1か月以上に変更し、賃貸借契約書を作成する。
しかし、運営方法はそれまでの民泊とほとんど変わらない。
利用者は旅行や一時的な滞在を目的としており、運営者は宿泊施設として清掃や寝具の管理、各種サービスの提供を続けている。
こうした場合、契約書に「賃貸借」と記載するだけで、一般的な住宅賃貸と判断できるのでしょうか。
もちろん、家具付きの賃貸住宅もありますし、短期間の賃貸借が直ちに否定されるわけではありません。
観光目的の利用や清掃サービスの有無だけで、宿泊営業だと断定できるものでもありません。
ただ、契約書と実際の運営内容が一致しているかどうかは、非常に重要だと思います。
契約書を賃貸借に変更しても、運営の実態まで自動的に賃貸借になるわけではありません。
ここが、私の一番気になっているところです。
Airbnb上でのマンスリー賃貸の扱いも、今後の注目点です
国の2018年の通知では、マンスリー賃貸を民泊仲介サイトで取り扱う場合、宿泊施設と賃貸物件を明確に区別することが求められています。
一方、Airbnbには28泊以上の長期滞在機能があり、一定の条件のもとで長期滞在に関連する契約書への署名も認められています。
この二つを踏まえると、今後気になるのは、Airbnbが日本国内のマンスリー賃貸をどのような基準で取り扱っていくのかという点です。
特に、住宅宿泊事業法の届出番号を登録している施設で、民泊として営業できない期間をマンスリー賃貸として募集する場合です。
実態として適法な賃貸借であれば、住宅宿泊事業とは別の事業として整理できる余地があります。
しかし、Airbnb上でどのような掲載区分を使用し、どのように宿泊と賃貸借を区別するのかについては、確認が必要だと思います。
法律上、賃貸借として成立することと、Airbnb上でその方法による募集が認められることは、別の問題です。
現時点で、Airbnbが全国一律にマンスリー賃貸の掲載を禁止する方針を示しているとまでは確認できません。
ただ、国が以前から両者の明確な区別を求めている以上、プラットフォーム側の運用についても、今後注目していく必要があると感じています。
「下宿営業」という選択肢もありますが、簡単な話ではありません
長期滞在を事業として提供する方法には、一般的な住宅の賃貸借だけでなく、旅館業法に基づく「下宿営業」という区分もあります。
旅館業法第2条第4項では、下宿営業を、1か月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業と定義しています。
必要な許可を取得して下宿営業を行う場合、住宅宿泊事業法の年間180日という営業日数の上限は適用されません。
そのため、長期宿泊の需要があるのであれば、下宿営業という方法を検討する余地もあると思います。
ただし、下宿営業は、単にマンスリー賃貸を別の名前に変更すればよいというものではありません。
旅館業法に基づく許可が必要ですし、自治体の条例、建築基準法、消防法などの要件も確認する必要があります。
すべての民泊施設が、簡単に下宿営業へ移行できるわけではありません。
マンスリー賃貸にも、下宿営業にも、それぞれの制度と条件があります。
結局のところ、どの方法を選ぶにしても、実際の事業内容に合った制度で運営することが大切なのだと思います。
今後難しくなるのは、境界線を曖昧にした運営ではないでしょうか
私は、民泊とマンスリー賃貸を組み合わせたハイブリッド運営そのものが、今後なくなるとは思っていません。
実態として適切な賃貸借が成立していて、関係法令やプラットフォームのルールも守られているのであれば、今後も十分に考えられる運営方法だと思います。
ただし、宿泊と賃貸借の区別が曖昧な運営については、これまで以上に慎重になる必要があるのではないでしょうか。
例えば、予約日数だけを変更する。
賃貸借契約書だけを用意する。
しかし、実際の運営内容は民泊と変わらない。
このような方法が、今後も当然に認められると考えるのは、少し楽観的な気がします。
特に、住宅宿泊事業法の180日制限を補うことだけを目的としてマンスリー賃貸を導入するのであれば、なおさらです。
国は2018年の時点ですでに、宿泊とマンスリー賃貸を明確に区別する考え方を示しています。
そう考えると、これから難しくなるかもしれないのは、ハイブリッド運営そのものではなく、宿泊と賃貸借の境界を曖昧にしたまま、同じ仕組みで運営を続けることなのではないでしょうか。
最後に。宿泊は宿泊、賃貸借は賃貸借
民泊もマンスリー賃貸も、不動産を有効活用するための方法の一つです。
同じ部屋を利用するため、見た目にはほとんど違いがないかもしれません。
しかし、法律上は異なるものです。
私は、民泊とマンスリー賃貸を組み合わせること自体が悪いとは思っていません。
国の制度も、両者の併用を一律に禁止しているわけではありません。
ただ、宿泊には宿泊のルールがあり、賃貸借には賃貸借のルールがあります。
さらに、賃貸借契約の代理・媒介を業として行うのであれば、宅建業法上の免許の問題もあります。
Airbnbを利用するのであれば、プラットフォームの規約や掲載方法も確認する必要があります。
私自身、宅地建物取引士として不動産に関わり、日々宿泊施設の運営にも携わっているからこそ、この二つの事業はきちんと区別する必要があると思っています。
宿泊は宿泊。賃貸借は賃貸借。
当たり前のようですが、ハイブリッド運営を考えるうえでは、この当たり前のことが一番大切なのではないでしょうか。
そして、今後の自治体の規制やAirbnbの運用次第では、ハイブリッド運営の方法を見直さなければならない場面も出てくるかもしれません。
もちろん、これは現時点での私個人の見解です。
ただ、一つだけ言えるとすれば、
契約書のタイトルを「宿泊」から「賃貸借」に変えたところで、実際の事業内容まで自動的に変わるわけではありません。
制度上、併用が認められる余地があることと、どのような方法でも併用できることは、まったく違う話です。
民泊の180日制限を超えたから、マンスリーにする。
その前に一度、
「これは本当に住宅の賃貸借として成立しているのだろうか?」
「宿泊と賃貸借を、きちんと区別して運営できているのだろうか?」
と考えてみることが大切なのではないでしょうか。
法律上の扱いまで、予約サイトの泊数設定ひとつで切り替えられるほど、簡単な話ではないと思うんです。
本記事について
本記事は、2026年11月時点の公開情報を参考に、民泊・貸別荘・ヴィラの運営実務に携わる筆者の個人的な見解をまとめたものです。
民泊とマンスリー賃貸を組み合わせた運営が、一律に違法または禁止されているという趣旨ではありません。
宿泊営業と賃貸借の区別は、契約内容、利用実態、施設の管理方法、提供サービスなどによって判断が異なります。
実際の運営にあたっては、管轄行政機関、弁護士などの専門家、利用するプラットフォームへの確認をおすすめします。
このコラムについて
このコラムは、株式会社PROGRESS WORKSの管理部長・宅地建物取引士である柳瀬が、民泊・貸別荘・ヴィラ運営の現場で感じたことや、不動産に関する知識をもとに執筆しています。
株式会社PROGRESS WORKSでは、大阪を拠点に、民泊・貸別荘・ヴィラなどの運営代行を行っています。
これから宿泊事業を始めたい方や、すでに運営されている施設の管理方法についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。


