民泊×マンスリーは儲かる?「マンスリーありき」の収益計画が危険な理由

「マンスリーありき」の収益計画は危険だと思う理由
以前、「民泊×マンスリーのハイブリッド運営は、今後難しくなるかもしれない」というテーマで、住宅宿泊事業法に基づく民泊とマンスリー賃貸の違いについてお話ししました。
住宅宿泊事業法に基づく民泊には、年間180日という営業日数の上限があります。
そのため、180日は民泊として営業し、それ以外の期間はマンスリー賃貸として活用する。
いわゆる「民泊×マンスリー」のハイブリッド運営です。
この運営方法について、私は否定するつもりはありません。
実際に賃貸借として適切に運営でき、追加の収益が得られるのであれば、不動産の有効活用として合理的な方法だと思います。
ただ、私自身は、以前から少し気になっていることがあります。
それは、最初からマンスリー賃貸の収入をあてにして、住宅宿泊事業法の民泊を始めることです。
民泊だけでは赤字になるけれど、残りの期間をマンスリー賃貸にすれば黒字になる。
そうした収支計画を前提に物件を購入したり、賃借したりするのは、私は少し危険だと思っています。
今回は、民泊運営会社として、なぜそのように考えているのかをお話ししたいと思います。
住宅宿泊事業法の物件は、180日で利益が出る想定で考えるべき
私が住宅宿泊事業法に基づく民泊で大切だと思っているのは、まず年間180日の営業可能日数の範囲内で、利益が見込めるかどうかです。
住宅宿泊事業法は、最初から年間180日という営業日数の上限が決まっています。
つまり、365日自由に宿泊営業できるわけではないことは、開業前からわかっているわけです。
それなのに、
「180日では利益が出ないけれど、残りの期間をマンスリー賃貸にすれば大丈夫」
という考え方で事業を始めるのは、どうなのでしょうか。
もちろん、マンスリー賃貸の需要があり、実際に収益が得られるのであれば、事業全体として成立する場合もあると思います。
ただ、住宅宿泊事業を主な目的として物件を選ぶのであれば、まずは宿泊事業そのものの収益性を確認するべきだと私は考えています。
民泊として利益が出ない物件を、マンスリー賃貸の想定収入によって、利益が出る物件として判断してしまうこと。
ここに、私は大きなリスクがあると思っています。
マンスリー賃貸の収入は、本当に計画どおりに入るのでしょうか
例えば、ある物件で年間180日の民泊営業を行った場合、経費を差し引いて年間50万円の赤字になるとします。
しかし、残りの期間にマンスリー賃貸を行えば、年間100万円の利益が見込める。
そうすると、合計では年間50万円の黒字です。
数字だけを見れば、事業として成立しているように見えます。
しかし、もしマンスリー賃貸の入居者が見つからなかったらどうなるのでしょうか。
あるいは、想定していた賃料で貸し出せなかったら。
募集方法やプラットフォームのルールが変わり、これまでと同じように運営できなくなったら。
その時点で、当初の収支計画は大きく崩れてしまいます。
もちろん、民泊の売上も確実なものではありません。
宿泊料金や稼働率は、季節や競合施設、旅行需要などによって変動します。
だからこそ、私は不確実な収入をいくつも積み重ねなければ利益が出ない事業計画には、慎重であるべきだと思っています。
マンスリー賃貸で利益を上乗せすることと、マンスリー賃貸がなければ利益が出ないことは、まったく違います。
私が一番伝えたいのは、この違いです。
民泊の需要と、マンスリー賃貸の需要は別物です
もう一つ、考えておきたいことがあります。
それは、民泊として人気のある物件が、必ずしもマンスリー賃貸でも人気になるとは限らないということです。
例えば、観光地にある一棟貸しのヴィラ。
週末や連休には、家族や友人グループが宿泊する需要があるかもしれません。
しかし、その場所に1か月以上住みたいという人が、どれくらいいるのでしょうか。
旅行で数泊したい人と、一定期間生活するために住宅を借りたい人では、物件を選ぶ基準が異なります。
宿泊施設として魅力的な設備が、マンスリー賃貸でも同じように評価されるとは限りません。
例えば、広いテラスやBBQ設備、プライベートサウナなどは、旅行者にとって魅力的な設備になるでしょう。
一方、マンスリー賃貸では、職場へのアクセスや買い物の利便性、生活環境などが重視される場合もあります。
特に、観光需要を中心とした地方の貸別荘やヴィラでは、この違いが大きくなる可能性があります。
民泊で予約が入る場所だから、マンスリー賃貸でも入居者が見つかる。
私は、必ずしもそうとは限らないと思っています。
宿泊需要と賃貸需要は、それぞれ別に調査する必要があるのではないでしょうか。
前回のコラムでも触れましたが、宿泊と賃貸借は別の事業です
以前のコラムでもお話ししましたが、民泊とマンスリー賃貸は、法律上、異なる事業です。
住宅宿泊事業法の届出施設であっても、実態として適切な賃貸借が成立しているのであれば、住宅賃貸として利用する余地はあります。
国の制度も、住宅宿泊事業と住宅賃貸の併用を一律に禁止しているわけではありません。
しかし、だからといって、民泊として営業できない期間に、予約日数や契約書の名称を変更するだけで、簡単にマンスリー賃貸へ切り替えられるとは限りません。
2018年11月6日の観光庁・厚生労働省の通知でも、マンスリー賃貸を民泊仲介サイトで取り扱う場合には、原則1か月以上の利用や、賃貸物件であることの明示など、宿泊と賃貸借を区別するための考え方が示されています。
また、Airbnbの28泊以上の長期滞在という区分も、日本の法律上の賃貸借と同じ意味ではありません。
さらに、民泊運営代行会社がオーナーに代わって賃貸借契約の代理・媒介を業として行う場合には、原則として宅建業免許が必要になります。
つまり、ハイブリッド運営には、宿泊事業とは別の検討事項があるということです。
マンスリー賃貸を併用できる可能性があることと、その収入を確実なものとして事業計画に組み込めることは、別の話だと思います。
ハイブリッド運営を前提にすると、物件選びを間違えるかもしれません
私が特に懸念しているのは、マンスリー賃貸の想定収入によって、本来は収益性が低い物件まで魅力的に見えてしまうことです。
例えば、住宅宿泊事業法の180日の営業だけでは、十分な利益が見込めない物件があったとします。
本来であれば、宿泊単価や稼働率、家賃、物件の取得費用、清掃費用、管理費用などを見直し、その物件で民泊を始めるべきか慎重に判断する必要があります。
しかし、そこに、
「残りの期間はマンスリー賃貸で収益を確保できます」
という説明が加わると、どうでしょうか。
民泊単体では収益性が低い物件でも、ハイブリッド運営を前提にすれば、魅力的な収支シミュレーションができてしまうかもしれません。
もちろん、実際にマンスリー賃貸の需要があり、適切な運営体制も整っているのであれば、合理的な事業計画になる場合もあるでしょう。
ただ、私は、住宅宿泊事業を主な目的として物件を選ぶのであれば、まずは民泊単体での収益性を重視するべきだと考えています。
マンスリー賃貸の収入がなければ利益が出ない物件を、民泊向けの優良物件として判断するのは危険ではないでしょうか。
ここは、物件を購入する前に、しっかり考えておきたいところです。
弊社では、180日の営業で利益が見込めない物件は紹介しません
株式会社PROGRESS WORKSでは、民泊や貸別荘、ヴィラなどの運営代行を行っています。
その中で、これから民泊を始めたいという方から、物件に関するご相談をいただくこともあります。
弊社では、住宅宿泊事業法に基づく民泊を主な目的とする場合、年間180日の営業可能日数の範囲内で利益が見込めない物件を、民泊向けの投資物件としてお客様に紹介することはしていません。
これは、マンスリー賃貸との併用を否定しているからではありません。
むしろ、ハイブリッド運営によって追加の収益が得られるのであれば、それは魅力的なことだと思います。
ただ、私たちがまず確認するのは、住宅宿泊事業としての収益性です。
宿泊単価は現実的なのか。
稼働率の想定に無理はないか。
清掃費用やOTA手数料、運営代行費用などを差し引いて利益が残るのか。
家賃や固定資産税、修繕費なども含めて、事業として成立するのか。
こうした部分を確認したうえで、物件の収益性を判断しています。
もちろん、180日すべてが予約で埋まる前提で計算するわけではありません。
実際の宿泊需要や営業可能な曜日・期間を踏まえて、現実的な収支を考えることが重要です。
また、自治体の条例によって営業可能期間が180日より少ない場合には、その制限を前提に判断する必要があります。
180日で利益が出るというのは、180日満室を前提にするという意味ではありません。
認められた営業可能日数の範囲内で、現実的な収支計画を立てても利益が見込めるかどうか、という意味です。
私たちは、そこを大切にしています。
残りの期間は「おまけ」くらいに考える方がよいと思います
私が理想的だと思うのは、まず住宅宿泊事業として利益が見込める物件を選ぶことです。
そのうえで、残りの期間に適法なマンスリー賃貸を行い、追加の収益を得る。
このような考え方であれば、ハイブリッド運営は魅力的な選択肢になると思います。
ただし、マンスリー賃貸の収入がなくても、基本的な事業計画が成立していることが前提です。
つまり、残りの期間の収入は、最初から絶対に必要なものとして考えるのではなく、得られればプラスになる「おまけ」くらいに考えておく。
私は、そのくらいの距離感がちょうどよいと思っています。
もちろん、実際には投資目的や借入条件、保有期間などによって、事業計画の考え方は異なるでしょう。
最初から住宅賃貸を主な目的として物件を取得する場合には、別の判断基準もあると思います。
ただ、あくまでも民泊を主な目的として物件を選ぶのであれば、マンスリー賃貸ができることを前提に、民泊単体の収益性の低さを見過ごすべきではないと思います。
民泊で利益を出し、マンスリー賃貸でさらに利益を上乗せする。
私は、この順番で考える方が堅実だと思っています。
今後、マンスリー賃貸の運用方法が変わる可能性もあります
前回のコラムでも触れましたが、国は2018年の時点で、民泊仲介サイト上でマンスリー賃貸を取り扱う場合には、宿泊と賃貸借を明確に区別する考え方を示しています。
また、Airbnbの長期滞在機能と、日本の法律上の賃貸借は、必ずしも同じものではありません。
今後、プラットフォームの掲載基準や行政の運用がどのように変わっていくのかについては、引き続き確認が必要だと思います。
もちろん、ハイブリッド運営そのものが禁止されると決まったわけではありません。
ただ、今後のルール変更や運用の見直しによって、従来と同じ方法でマンスリー賃貸を募集できなくなる可能性まで、完全に否定することはできません。
そのとき、マンスリー賃貸の収入がなければ利益が出ない物件は、どうなるのでしょうか。
私は、そこまで考えておく必要があると思っています。
住宅宿泊事業法の180日という基本的なルールの中で利益が見込める物件であれば、追加の収益方法が変わったとしても、事業計画の土台は残ります。
この違いは、決して小さくないと思います。
最後に。マンスリーありきで民泊を始めるのは危険だと思います
私は、民泊とマンスリー賃貸のハイブリッド運営を否定しているわけではありません。
適切な契約と運営体制のもとで、物件の収益性を高めることができるのであれば、十分に検討する価値のある方法だと思います。
ただ、住宅宿泊事業法に基づく民泊を始めるのであれば、まずは年間180日の営業可能日数の範囲内で、利益が見込める物件を選ぶべきだと考えています。
残りの期間にマンスリー賃貸を行うことは、あくまでも追加の選択肢です。
その収入がなければ赤字になるような物件を、最初から民泊向けの投資物件としておすすめすることは、弊社ではしていません。
もちろん、物件を購入する目的や、投資家の考え方はそれぞれ異なります。
不動産の資産価値や将来的な利用方法まで含めて判断する場合もあるでしょう。
ただ、民泊事業として収益を得ることを目的とするのであれば、話は別です。
マンスリー賃貸ができるから利益が出る物件ではなく、民泊だけでも利益が見込める物件を選ぶ。
そのうえで、マンスリー賃貸による追加収益が得られれば、さらによい。
私は、この考え方の方が、長く安定した運営につながるのではないかと思っています。
住宅宿泊事業法の180日制限は、開業してから突然わかることではありません。
最初から決まっているルールです。
そのルールの中で利益が見込める物件を選ぶ。
そして、残りの期間に追加収益が得られるのであれば、それはうれしいプラスアルファとして考える。
マンスリー賃貸で利益を上乗せすることと、マンスリー賃貸がなければ利益が出ないことは、まったく違います。
私が今回、一番伝えたいのはこのことです。
民泊は、マンスリー賃貸の収入がなくても事業として成立する。
そのくらいの収支計画で始める方が、私は安心できると思うんです。
本記事について
本記事は、2026年11月時点の制度と、民泊・貸別荘・ヴィラの運営実務に携わる筆者の個人的な見解をまとめたものです。
住宅宿泊事業法に基づく宿泊営業の上限は年間180日ですが、自治体の条例などにより、さらに制限される場合があります。また、マンスリー賃貸の適法性は契約内容や実際の運営状況などによって異なります。
このコラムについて
このコラムは、株式会社PROGRESS WORKSの管理部長・宅地建物取引士である柳瀬が、民泊・貸別荘・ヴィラ運営の現場で感じたことや、不動産に関する知識をもとに執筆しています。
株式会社PROGRESS WORKSでは、大阪を拠点に、民泊・貸別荘・ヴィラなどの運営代行を行っています。
これから宿泊事業を始めたい方や、すでに運営されている施設の管理方法についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。


