【民泊運営代行の現実】規制強化・人件費高騰・清掃費上昇の三重苦。運営会社も清掃会社も苦しくなる時代

運営会社も清掃会社も苦しくなる時代
前回、前々回のコラムでは、2026年11月20日から適用されるAirbnbの新ポリシーについてお話ししました。
食器洗いは義務付けられない。
ゴミ出しにも制限がある。
違反料金の事前案内も見直さなければならない。
そして、実際にAirbnbへ問い合わせてみると、具体的な運用方法について、なかなか明確な答えが得られない部分もありました。
もちろん、ゲストにとってわかりやすく、安心して宿泊できる環境を整えることは大切です。
ただ、宿泊施設を運営している立場からすると、少し気になることがあります。
サービスに求められる水準は上がる。ルールへの対応も増える。人件費も上がる。
ところが、宿泊料金や運営代行手数料は、そう簡単に上げられるわけではありません。
最近、民泊業界について考えるとき、私はこんなことを思います。
「民泊って、いつからこんなに複雑な仕事になったのでしょう?」
今回は、Airbnbのポリシー変更だけではない、民泊・貸別荘・ヴィラ運営の経営環境についてお話ししたいと思います。
昔は「部屋を貸す仕事」。今は小さなホテル経営に近い?
民泊という言葉から、どのような仕事を想像されるでしょうか。
空いている部屋を宿泊者に貸す。
予約が入ったら案内を送る。
チェックアウト後に清掃する。
もちろん、これらも民泊運営の仕事です。
ただ、実際に複数の施設を運営していると、それだけでは済みません。
予約サイトごとのルールを確認する。
料金を調整する。
宿泊者情報を確認する。
清掃スタッフを手配する。
設備の不具合に対応する。
近隣からの苦情に対応する。
法令に基づく記録や手続きを管理する。
そして、予約サイトのポリシーが変更されれば、案内文や運営方法を見直す。
一つひとつは小さな作業に見えるかもしれません。
しかし、これらが毎日、複数の施設で同時に発生します。
さらに、宿泊者は国内外から訪れます。
言語も違えば、生活習慣も違う。
宿泊施設に期待するサービスも違います。
もはや「空いている部屋を貸すだけ」という感覚では、安定した運営は難しくなってきていると感じます。
Airbnbのルール変更だけでも、運営の仕事は増える
今回のAirbnb新ポリシーは、そのわかりやすい例です。
ゲストに食器洗いを義務付けられなくなるのであれば、清掃の作業工程を見直す必要があります。
違反料金に関する事前案内を変更するのであれば、ハウスルールやチェックイン案内、室内掲示物を確認する必要があります。
さらに、予約の確定日によって適用されるポリシーが異なるため、運用の切り替えにも注意が必要です。
しかも、Airbnbだけで宿泊施設を運営しているとは限りません。
Booking.com、Expedia、Agoda、Trip.comなど、複数の予約サイトを利用している施設も多いでしょう。
それぞれに異なる規約や運用ルールがあります。
一つの予約サイトで変更されたルールを、ほかの予約サイトにもそのまま適用してよいとは限りません。
現場としては、なかなか頭の痛い話です。
予約サイトが増えるほど販売機会は広がります。
しかし、同時に管理すべきルールも増えます。
便利になる一方で、裏側の仕事は確実に複雑になっていく。
そんな印象を持っています。
法令や自治体の運用も、変化が続いている
さらに、民泊には予約サイトのルールとは別に、法律や自治体の制度があります。
日本の宿泊施設には、営業形態に応じて旅館業法、住宅宿泊事業法、国家戦略特別区域法などが関係します。
加えて、消防法令、建築関係の規定、廃棄物処理、衛生管理なども無視できません。
これらはすべての施設に同じ条件で適用されるわけではなく、営業形態や建物、所在地によって確認すべき事項が異なります。
そして近年は、自治体による民泊の適正化や監視指導の動きも進んでいます。
大阪市では、2026年5月29日をもって特区民泊の新規受付が終了しました。
既存の認定施設については営業を継続できますが、市は苦情や近隣トラブルへの対応として監視指導の強化を進めています。
民泊を取り巻く制度が、以前と同じままではないことを示す一例でしょう。
ただし、ここで誤解していただきたくないのは、すべての民泊について全国一律に法律が厳しくなったという意味ではないことです。
地域や営業形態によって状況は異なります。
だからこそ、施設ごとに正確な確認が必要になります。
全国共通の法律、自治体の制度、予約サイトのポリシー。
この三つを区別して理解するだけでも、なかなか専門的な仕事です。
ルールは増える。でも、現場で働く人は簡単には増やせない
ここからが、今回お伝えしたい本題です。
運営業務が複雑になったからといって、スタッフを簡単に増やせるわけではありません。
人を採用するには費用がかかります。
採用できても、すぐに一人前になるわけではありません。
宿泊施設の運営には、ある程度の経験が必要です。
ゲスト対応。
予約管理。
設備トラブル。
清掃スタッフとの連携。
予約サイトごとのルール。
こうした業務を理解するには、時間がかかります。
そして、教育が終わった頃に退職してしまうこともあります。
新しいスタッフを採用し、また一から教育する。
これを繰り返せば、当然ながら経営への負担は増えていきます。
一方で、人件費は上昇しています。
賃金を上げなければ、人材を確保できない。
しかし、賃金を上げれば、会社の固定費が増える。
どちらも簡単ではありません。
人手不足による倒産は、実際に増えている
これは、単なる現場の感覚だけではありません。
帝国データバンクが2026年10月7日に発表した調査では、2026年度上半期の人手不足倒産は225件。
年度上半期として4年連続で過去最多を更新しました。
また、東京商工リサーチの別調査では、同じ2026年度上半期の人手不足関連倒産は240件。
そのうち、人件費高騰を要因とする倒産は130件と報告されています。
※両社は集計基準が異なるため、件数を単純比較するものではありません。
これらは民泊運営会社や清掃会社だけの数字ではありません。
しかし、人手に依存するサービス業にとって、人材確保と人件費の上昇が大きな経営課題になっていることは読み取れます。
特に小規模な会社では、数名の退職が事業継続に大きく影響する場合があります。
宿泊施設の運営会社も、清掃会社も、人がいなければ仕事ができません。
予約管理のシステムがどれだけ便利になっても、現場でしかできない仕事は残ります。
清掃会社も、決して楽な経営ではありません
民泊運営の中でも、特に人手に依存しているのが清掃です。
例えば、午前10時にチェックアウト。
午後4時には次のゲストがチェックイン。
その間に、室内を清掃し、リネンを交換し、備品を補充し、設備を確認します。
大型ヴィラであれば、複数の寝室や浴室、キッチン、テラスなど、清掃範囲も広くなります。
そして、清掃スタッフは、その日の予約状況に合わせて動かなければなりません。
毎日同じ施設を、同じ時間に清掃できるわけではないのです。
繁忙期には依頼が集中します。
閑散期には仕事が減ります。
当日予約や急なキャンセルによって、予定が変わることもあります。
さらに、移動時間も必要です。
1日に複数の施設を清掃する場合、清掃作業そのものだけでなく、施設間の移動にも時間と費用がかかります。
その中で、人件費、交通費、洗剤などの資材費、リネン関連費用が上がっていく。
清掃会社が価格を見直したくなるのも、自然なことだと思います。
「清掃料金はそのままでお願いします」は、いつまで通用する?
オーナー様からすれば、清掃料金はできるだけ抑えたい経費です。
そのお気持ちは理解できます。
ただ、清掃会社の立場から考えてみてください。
スタッフの時給が上がる。
移動費が上がる。
洗剤や消耗品の価格が上がる。
そして、求められる清掃の品質や作業内容も増える。
それなのに、清掃料金だけは何年も同じ。
これでは、経営が難しくなってしまいます。
仮に、1回の清掃に2名で3時間かかる施設があるとします。
合計6人時の作業です。
スタッフ1人あたりの時間単価が300円上がれば、それだけで1回あたり1,800円の人件費増加になります。
年間150回の清掃なら、27万円です。
これは単純な仮定の試算で、実際の清掃料金の上昇額を示すものではありません。
それでも、時給の上昇が年間の経費にどのように影響するかはイメージできると思います。
しかも、ここには移動費や資材費、教育費などは含まれていません。
清掃費が上がるのには、それなりの理由があるのです。
運営会社も清掃会社も、倒産や撤退と無縁ではない
最近の企業倒産に関する報道を見ると、人件費の高騰や人手不足によって事業継続が難しくなる会社が増えています。
もちろん、民泊運営会社や民泊清掃会社に限定して、倒産が何件発生したのかを示す十分な統計があるわけではありません。
そのため、民泊関連会社の倒産が全国で急増していると断定することはできません。
ただ、宿泊施設の運営や清掃も、同じように人件費の上昇や人材不足の影響を受ける仕事です。
倒産だけでなく、新規受託の停止、対応エリアの縮小、事業からの撤退なども、オーナー様にとっては重要なリスクになります。
例えば、突然、清掃会社から契約終了を告げられたらどうなるでしょうか。
翌日も予約が入っている。
清掃しなければ次のゲストを迎えられない。
しかし、代わりの清掃会社がすぐに見つかるとは限りません。
運営代行会社が事業を継続できなくなった場合も同じです。
予約管理、ゲスト対応、清掃手配、設備管理。
それまで外部に任せていた業務を、短期間で別の会社へ引き継ぐ必要があります。
宿泊事業は、予約が入っている限り、簡単に止めることができません。
だからこそ、委託先の経営の安定性は、オーナー様にとっても無関係ではないのです。
安い運営代行手数料には、理由があるかもしれない
ここで、運営代行会社の話に戻ります。
民泊運営代行を検討されるオーナー様が、まず気にされることの一つが手数料です。
「何%で運営してもらえますか?」
もちろん、大切な質問です。
しかし、私は手数料率だけで運営会社を選ぶことには、少し注意が必要だと思っています。
例えば、運営代行手数料が安くても、対応業務が限定されている場合があります。
夜間対応は別料金。
現地対応は別料金。
設備トラブルの対応は別料金。
清掃管理の範囲も異なる。
これらが明確に説明されていれば、問題ありません。
ただ、必要な業務を十分に確認しないまま、手数料の安さだけで契約してしまうと、後から想定外の負担が発生する可能性があります。
反対に、運営会社が必要な人件費や管理費を確保できないほど低い料金で受託していれば、長期的にサービス品質を維持できるのかという問題もあります。
もちろん、低価格でも効率的に運営できる会社はあるでしょう。
大切なのは、その手数料で、どのような体制を継続できるのかという点です。
運営代行は、契約した月だけ対応できればよい仕事ではありません。
1年、3年、5年と続けられることが重要です。
民泊運営会社は、値上げしたくても簡単にはできない
ここは、運営会社側の難しいところです。
スタッフの給与を上げたい。
清掃会社からの値上げにも対応したい。
システムや設備管理の費用も必要。
それでも、オーナー様からいただく運営代行手数料を簡単に引き上げられるわけではありません。
なぜなら、オーナー様にも収益計画があるからです。
運営代行手数料が上がれば、その分、オーナー様の利益は減る可能性があります。
宿泊料金を上げればよいという意見もあるでしょう。
ただ、宿泊料金は競合施設との比較で決まる部分も大きく、コストが上がったからといって、必ず値上げできるわけではありません。
例えば、周辺に同じような施設が多ければ、価格を上げることで予約が減る可能性もあります。
つまり、運営会社も清掃会社も、コストが上がった分をそのまま価格に転嫁できるとは限らないのです。
これが、宿泊事業を支える会社の経営を難しくしている一因だと思います。
売上が増えているのに、利益が減ることもある
民泊経営で、もう一つ注意していただきたいことがあります。
それは、売上と利益は違うということです。
例えば、ある施設の年間売上が1,000万円だったとします。
翌年、宿泊料金の調整がうまくいき、売上が1,100万円になった。
100万円の売上増加です。
一見すると、順調に見えます。
しかし、その間に清掃費、人件費、光熱費、設備維持費などが合計で150万円増えていたらどうでしょうか。
売上は増えているのに、利益は50万円減っていることになります。
もちろん、これは説明のための仮定です。
ただ、実際の宿泊事業でも、売上が好調だからといって、必ずしも利益が増えるわけではありません。
特に清掃費やリネン費など、予約件数や宿泊人数に応じて増える費用には注意が必要です。
稼働率を上げることだけを考えていると、気づかないうちに利益率が下がっている可能性があります。
今後は、売上だけでなく、1予約あたりの利益や運営原価まで確認することが、ますます重要になると思います。
これからは「運営を任せられる会社があること」自体が価値になるかもしれない
少し前までは、オーナー様が運営会社を比較する際、手数料や売上実績が大きな判断材料だったと思います。
もちろん、今も重要です。
ただ、これからは別の視点も必要になるのではないでしょうか。
その会社は、安定してスタッフを確保できているか。
清掃会社との協力体制が整っているか。
緊急時に対応できる仕組みがあるか。
法令や予約サイトの変更に対応できるか。
そして、無理のない料金体系で事業を継続できるか。
こうした点です。
どれだけ魅力的な運営プランを提案されても、実際に継続できなければ意味がありません。
宿泊施設は、建物だけでは運営できません。
予約を管理する人がいて、清掃する人がいて、設備を維持する人がいて、トラブルに対応する人がいる。
そのすべてがつながって、初めてゲストを迎えられます。
運営会社や清掃会社は、単なる外注先ではなく、宿泊事業を継続するための大切なパートナーなのです。
オーナー様にも、運営コストの変化を知っていただきたい
私は、運営会社がコスト上昇を理由に、何でも値上げすればよいとは思っていません。
運営会社自身も、業務を効率化する努力が必要です。
システムの活用。
スタッフ教育の改善。
清掃動線の見直し。
設備トラブルを減らす工夫。
こうした取り組みは、これからも欠かせません。
ただ、効率化だけでは吸収できない費用もあります。
人が必要な仕事には、人件費がかかります。
現地でしかできない仕事には、移動費がかかります。
安全や衛生を守るためには、必要な点検や管理があります。
その現実を、オーナー様にも知っていただきたいと思います。
運営代行手数料を下げることだけが、必ずしも良い経営判断とは限りません。
清掃料金を安く抑えることだけが、長期的な利益につながるとも限りません。
大切なのは、必要な品質を維持しながら、無理なく事業を続けられる費用のバランスを考えることです。
最後に。民泊は「始めること」より「続けること」が難しい時代へ
民泊や貸別荘、ヴィラの運営は、これからさらに変化していくと思います。
予約サイトのポリシーが変わる。
自治体の制度や監視指導の運用が変わる。
人件費が上がる。
清掃費が上がる。
設備維持の費用も上がる。
その一方で、ゲストが求めるサービス水準は下がるわけではありません。
むしろ、高い宿泊料金を支払うゲストほど、より快適で安心できる滞在を期待するでしょう。
運営する側には、なかなか厳しい時代です。
ただ、だからこそ、運営の仕組みが重要になります。
無理な価格設定をしないこと。
必要な費用を正しく把握すること。
スタッフや清掃会社が継続して働ける環境を整えること。
そして、ルールの変化に対応できる体制を持つこと。
宿泊施設の経営では、どうしても建物の魅力や宿泊料金に目が向きがちです。
しかし、何年も安定して運営できるかどうかは、その裏側の仕組みにかかっています。
「民泊は儲かるらしい」
そんな言葉だけで始められるほど、今の宿泊事業は単純ではありません。
きれいな写真を掲載して予約を獲得することと、その施設を10年間運営し続けることは、まったく別の仕事です。
これからの民泊経営で本当に問われるのは、どれだけ売れるかだけでなく、どれだけ無理なく続けられるか。
私はそう考えています。
そして、オーナー様、運営会社、清掃会社。
この三者のどこか一つだけに負担が偏る仕組みは、長くは続きません。
宿泊施設を支える人たちが、それぞれ適正な対価を受け取り、安心して仕事を続けられること。
それが結果として、ゲストにとっても安心できる宿泊体験につながるのではないでしょうか。
華やかなヴィラの写真の裏側には、今日も清掃スタッフがいて、ゲスト対応をするスタッフがいます。
そして、明日のチェックインに間に合うように、誰かが走り回っている。
……そんな現実も、もう少し知っていただけたらうれしいですね(笑)。
このコラムについて
このコラムは、株式会社PROGRESS WORKSの管理部長・宅地建物取引士である柳瀬が、宿泊施設の運営に携わってきた経験や、民泊・貸別荘・ヴィラ運営の現場で感じたことをもとに執筆しています。
株式会社PROGRESS WORKSでは、大阪を拠点に、民泊・貸別荘・ヴィラなどの運営代行を行っています。
民泊の新規開業、自主管理から運営委託への切り替え、清掃体制や運営コストの見直しなどをご検討のオーナー様は、お気軽にご相談ください。
宿泊施設の魅力を活かしながら、長く安定して運営できる仕組みを一緒に考えてまいります。


